86話 卒業試験迫る! 断罪フラグは…またも空振り? 私、普通に合格狙いですわ!
「これが私にとって、学園最後の試験になるのね……」
卒業試験が始まる朝、私は学園の正門を見上げてしみじみする。
三年前、ここに入学するときは“悪役令嬢”としての破滅フラグを回避しなきゃと必死だったのに、いまや破滅どころか国民的ヒロイン扱いで、王太子殿下との将来がほぼ確定しつつある。
成長を感じるというより、運命の残酷なまでの変容にただ唖然とするばかりだ。
最終試験は一週間にわたって筆記、実技、口頭発表など多岐にわたる。
私も万全を期して勉強したし、闇の王対策で魔法も実戦的に鍛えられたので、あまり不安はない。
アニーやガイ、アレクシス、リヒト殿下も同様に手を抜かない態勢で挑んでいるようだ。三年間を締めくくる総決算なので、誰もが真剣な表情をしている。
ただ、取り巻き令嬢ズやレオナルトが「最後の試験で悪役令嬢ムーブは出ないんですか?」と茶々を入れるせいで、私は毎回「ないわよ!」と返答しなければならず、落ち着かない。
彼女たちは三年最後に“大波乱が起きるかも?”と期待しているらしいが、現実的にそんなフラグなど存在しない。一番あり得るのは私がいっそう優等生的に卒業して、王太子と婚約継続する未来だ。
試験初日、筆記では出題が難しめだったが、私は何とか対処できた。
学園行事やクーデター騒動のせいで勉強時間が削られた分、周囲が協力してくれたおかげも大きい。二日目、実技科目の試験では「光魔法の基本操作と応用」という課題が課され、私は闇の王との戦いで鍛えた力を適度にコントロールして披露した。
先生たちは瞳を輝かせ、「セレスティア殿はやはり稀少な光属性だ……王太子妃としても申し分ない」と口を揃える。私が望む望まざるに関係なく、評価はうなぎ上りだ。
三日目、口頭発表試験で闇の歴史や魔物対策に関する知識を問われ、これまたクーデターでの経験を絡めた回答をすると、満点に近い評価を得てしまう。
取り巻きは「さすがセレスティア様、もうトップ確定ですね!」とはしゃいでいるし、私は「そんなことは……」と謙遜しつつ、やはり褒められると少し嬉しい気持ちがある。
こうして日を追うごとに試験科目を順調にこなし、最終日が近づいた頃には、私の“卒業試験合格”はほぼ確定と周囲が噂するほどの評価になっていた。
殿下も「お前、本当に悪役の要素がないんだな……」と苦笑しながら、「俺もまあなんとか合格ラインはいけそうだ」と肩を竦める。
ガイやアニー、アレクシスに至っては「周りからすれば殿下とセレスティアが学園のスターだし、当然トップのほうに来るでしょう」と納得顔だ。
しかし、リヒト殿下はまだ一片の期待を捨てきれないのか、「最後の試験発表で“婚約破棄”を仕掛ける余地は……ないよな」とウジウジ言っているのを耳にし、私は思わず苦笑するばかり。
そもそも私に破滅要素なんて残っていないし、闇の王クーデターを終えて国民的支持まで得た私を、今さら断罪などできるはずがない。
そりゃあ殿下が無理強いすれば可能かもしれないが、学園全体や王家から「なぜそんな酷いことを?」と非難されて終わりだろう。
「もう、殿下。いい加減に“破棄”は諦めなさいよ」
そう私が呆れたように言うと、殿下は「わかってるよ……でも、前世であれほど夢に見た婚約破棄シーンを現実でやれないなんて、ちょっと悔しいというか……」と複雑な笑みを漏らす。
私も大変ね、と同情するが、同時に安堵する。こうして殿下の未練が完全に消え去ってくれれば、私は何の憂いもなく卒業できるわけだから。
かくして私が三年生最後の卒業試験に挑み、順調にこなしていく姿を描く。試験の中で“悪役令嬢大暴れ”が期待されたり、殿下が断罪を狙ったりするものの、私がみんなから好かれているため不発に終わる。
結果的に“このまま卒業”へ突き進む状況となり、破滅フラグなどどこにも見当たらない。私自身、普通に学年最終評価で上位合格しそうな手応えを感じながら、卒業式の準備へと心を向けるのだった。
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