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85話  卒業試験前、『婚約破棄?』が完全に消滅する…私、逆にちょっと照れますわ!

闇の王クーデターを阻止して以来、学園でも王都でも「セレスティアは国を救った大英雄だ」と話題になり、私の悪役令嬢イメージはかき消されてしまった。


もはや「婚約破棄」なんて言葉を口にする者は皆無で、実際、私自身も殿下との一件が“ほぼ確定ルート”なんだろうなと感じ始めている。


 ただ、卒業を間近に控えた今、王宮の方で「セレスティア殿を王太子妃として公式に認めるタイミングは、やはり卒業後が望ましい」との方針が示されているらしく、正式な婚約発表は先延ばしになっている状況だ。


殿下や国王が「学園生活を最後まできちんと送らせてあげたい」という配慮を示しているようで、私としてはありがたいけれど、ちょっと落ち着かない気分でもある。


 そんなある日の放課後、私は教室でノートを整理していた。


すると、取り巻き令嬢ズが「セレスティア様、いつ正式に婚約式をするんですの? 気になりすぎますわ!」と雑談を仕掛けてきた。私は苦笑して答える。  


「うーん……国王陛下の意向もあって、卒業後に本格的な式の日程を決めるらしいわ。今はまだ公的には『婚約者』扱いだけど、正式発表はしてないの」  


取り巻きたちが「早く結婚式で華やかなドレス姿を拝見したいですわ!」などとキラキラした瞳で語るのを見て、私は照れながらも「卒業試験が終わってからかな……」とやんわりかわすしかない。


 私は当初、「婚約破棄」をいかに避けるかで頭がいっぱいだったのに、今や“破棄”どころか“王家公認の婚約”を控える身。人


生の変化が激しすぎて、つい過去を振り返って「なんでこんな展開に……」とぼんやりすることが増えた。  殿下も最近は「俺たち、ずっとこのままなのか?」と微妙に照れた様子を見せつつ、「ま、でも国としては喜ばしいことだよな……」とつぶやく程度。


そう、恋愛模様というより、学園のみんなから「お似合いですね」「早く式を挙げてください!」と冷やかされる日々なのだ。


断罪イベントなんて影も形もなく、私が大恥をかいて破滅する展開なんて“茶番”にしか思えないレベルで、現実とはかけ離れてしまった。


 そして迎えた卒業試験の直前。学校から「卒業試験に合格した上で、王太子妃の花嫁教育に入ってほしい」と連絡が来た。


先生を通じて伝言された内容は、「卒業してから本格的な宮廷儀礼を学んでも遅くないが、最低限の学業を全うしてこその王太子妃にふさわしい姿」なのだとか。  


「なるほど……まあ、学業だけはきちんと終わらせないと、私も後ろめたいしね」  


私が受け取ったその情報を殿下にも報告すると、殿下は顔を赤らめつつ「ふふ、要するにもう“婚約破棄”の選択肢が完全に消えたってことだな」と呟く。


私は軽く呆れ交じりに笑い、「今さら何を言ってるの? とっくに消えてるわよ」と返した。


 すると殿下は改めて照れた面持ちで、「ああ、そうだよな……俺、昔は“破局イベントで断罪!”なんて言ってたけど、今こうしてお前と普通に話してると、あれが黒歴史すぎて……すまなかった」と頭をかく。


私も「別に謝らなくていいわ。あの頃は私も悪役フラグを回避しようと必死だったし、むしろ懐かしいわよ」と首を振る。  


結局のところ、私が“婚約破棄”される筋書きなどとっくに吹き飛んでおり、国中が「セレスティア様こそ殿下とお似合い」と断言している今、殿下の方ももう何の未練もないらしい。私の破滅フラグは完全に跡形もない。


 ただ一つ心配なのは、私が「悪役令嬢」ポジションだったのに、ここまで“ヒロイン”どころか“英雄”扱いされていいの? という微妙な違和感くらい。


アニーからも「セレスティアさん、いつの間にかヒロインどころか“正真正銘の主人公”みたいですもんね」と冗談半分に言われ、「本当よね、私、悪役転生のはずが……どこで道を踏み外したのかしら」などと答えることも。


ま、その道を踏み外したおかげで助かった人が多いのだし、誰も損はしていないか。


 そんな雑談をこなしつつ、いよいよ始まる卒業試験。私は当日、取り巻きの励ましを受けながら教室に入り、筆記や実技、口頭試問などを淡々とこなす。


闇の王を打ち破った実績がある以上、今さら学園で失敗するとは思えないが、油断は禁物。ラストスパートとして、しっかり合格を狙う。  


数日間の試験を終え、結果発表が貼り出されたとき、見事にアニーと私がまたワンツーフィニッシュ。殿下、ガイ、アレクシスもその後に続く形で“転生組”が上位を独占している状況だ。


先生やクラスメイトからは盛大な拍手と祝福が贈られ、私は苦笑しながら「こんなに順調でいいのかしら……」と内心こそばゆい感覚に襲われる。


 そして、試験結果が公式に認められた夕方、先生が私たちに「全員合格! よって卒業判定も問題なし!」と宣言する。


これにより学園生活の最終段階が実質的に終了したも同然だ。悪役令嬢としての破滅どころか、一度も断罪されないまま円満に卒業か……私も感慨深い。  



「思い起こせば、私が15歳で入学したとき、断罪イベントに怯えていたのが嘘みたいね……。ああ、本当に来るべきは“婚約破棄”じゃなく“卒業と王太子妃の道”だったんだわ……」  


心のなかでそんな独白をしつつ、取り巻きやアニーと一緒に祝杯代わりの紅茶を飲みに行く。


殿下やガイ、アレクシスも遅れて合流し、「よかったな、みんな合格!」と笑い合う。昔なら「ここで悪役令嬢が嫉妬するイベント」もあるかもしれないが、そんな要素は一切なく、和やかだ。


 逆に取り巻きが「ああ、セレスティア様の“婚約破棄イベント”を見たかったのに、もう完全に消滅ですね! 嬉しいやら残念やら……」などと訳の分からないことを言い出し、私が「やめて、余計なこと言うの」と突っ込む流れまである。


もはや“破棄”はネタ扱いで、誰も実現するとは思っていない。


 こうして卒業試験を全員合格して、最後に残る行事は“卒業パーティー”や“祝賀会”など数回のセレモニーのみ。そこまで終われば私は王太子妃の修業に入る可能性が高い。


破滅を回避どころか大勝利……自分で言うのもなんだけれど、ここまで上手くいっていいのかと不安になるくらいだ。


 私は帰り道、レオナルトにこっそり打ち明ける。


「ねえ、私、本当にこのまま何も苦労せず卒業していいのかしら? 悪役令嬢らしいドラマが一切なかったけど……」


 すると弟はニッコリして「いいじゃないですか、姉上が幸せなら! BL好きの僕としては王太子殿下にちょっとだけジェラシーしますけど、姉上の幸せが優先です!」と何とも言えない笑みを浮かべる。


彼も結局、私の破滅を全力で回避するために尽力してくれた一人だし、今やもう悪役令嬢騒ぎに未練はないのだろう。


 そう、これが婚約破棄なるものが完全に消滅した証し。


誰がどう足掻いても、私が断罪される余地は一片もなく、この学園は私たちを祝福する空気に溢れている。悪役令嬢ルートは遠い幻


——私は笑いながら周囲に感謝を伝え、卒業へ向けた最後の準備を続けるだけだ。


 こうして卒業試験の合格を迎え、婚約破棄の“こ”の字も消え失せた決定的な転機が訪れる。私自身は複雑だけれど、一度も破滅せず大団円へ進む道こそが現実になった。


あとは、残りのセレモニーやパーティーを平和に終わらせば“悪役令嬢の学園編”は幕を閉じることになるだろう.......

毎日投稿頑張ってますΣ੧(❛□❛✿)

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