83話 囲からのモテフラグ集中、逆ハーレム寸前…いやいや私、どうすればいいのですわ!
模擬試験後、私のもとに妙な空気が漂い始めている。
“闇王を倒し、学園トップの成績を収め、王太子の婚約者としてますます確固たる地位を築いたセレスティア・ノイエンドルフ”
——そんな評判を耳にした他クラスや他科の男子生徒、あるいは一部貴族子息から
「セレスティア様、あの、よろしければお茶会を……」
などとアプローチされる事態が急増しているのだ。
もともと私は悪役令嬢という肩書きゆえに、敬遠されることも多かったはずなのに、最近は“あの英雄セレスティア様なら話をしてみたい”とか“本当は優しい方では?”みたいに認識が改まり、やたらモテフラグが立っているらしい。
取り巻き令嬢ズが「セレスティア様、またお手紙が届きましたよ! 男子生徒からランチに誘われてます!」と嬉々として報告してくる度に、私は戸惑いを隠せない。
「ちょっと……私、王太子殿下の婚約者扱いなのに、こんな誘いを受けていいの?」
そう呆れると、取り巻きが「でも正式に“結婚が確定”したわけでもありませんし、相手が一方的に憧れてアプローチするのを止めるのは難しいですわ!」とケラケラ笑う。
もはや“悪役令嬢”ではなく、学園最強ヒロインとして君臨しているような状況で、あちこちからファンが集まるのも仕方ないのかもしれない。
さらにややこしいのが、義弟レオナルトやガイ、アレクシスなど、以前から私に好意的だった男性陣も、最近「セレスティアこそ俺にとってかけがえのない存在……」「いや、俺が支えたい……」みたいな空気を漂わせているらしいとのことだ。
傍目から見ると私が男性陣を侍らせている状態——まさに“逆ハーレム”寸前の雰囲気になってしまっている。
具体的には、ある日の昼休み、私が学園の中庭で一息つこうとすると、ガイが「セレスティアさん、最近疲れてないっすか? 俺が何か手伝いましょうか?」と寄ってきてくれたり、アレクシスが「ふん、俺は別に興味ないが、光の勉強に付き合ってやってもいいぞ」と提案してきたり。そこへレオナルトが「姉上、騎士科に頼んで特製のお弁当をもらいましたよ!」と走ってくる。
さらに殿下が「何の話だ?」と割り込んでくる……など、私を中心に会話が成り立つ流れになり、他の生徒が「すご……何その逆ハーレム感……」と思われている場面が増えているのだ。
「もう、みんな集まりすぎよ……落ち着いて……」と困惑しても、彼らも一応私を支えようとしてくれているだけだし、
私は嫌な気はしない。それでも、昔の私が想像した“破滅フラグの孤立”とは対極すぎて、笑うしかない。
アニーなどは「私も逆ハーレムみたいな立ち位置を経験してみたかったのに」と愉快そうに言う。
取り巻き令嬢ズがさらに「最近は他クラスや後輩の男子もセレスティア様に憧れている様子ですわ! 演劇で悪司祭役をしながら魔物を倒した姿が噂になって、“凛々しく美しいヒロインだ”と評判みたいで……」と耳にして、私は困惑が絶頂に達する。
しかも、私は王太子との婚約ルートが既定路線と周知されているからこそ、私に告白しても振られる可能性が大と思われ、あまり直接的なアタックは受けず“憧れの対象”となっている状態。それが逆に恋心を燃やすファンを増やしている……ううん、複雑だ。
「はぁ……こんなにモテても、私には王太子殿下がいるし……そもそも“逆ハーレム状態”になりたいわけじゃないのになぁ……」 そうぼやいていたら、ガイが照れ笑いしつつ「ま、セレスティアさんは皆のヒーローですからね! モテても仕方ないっすよ」と肩をすくめる。
アレクシスは「別に俺はお前を恋愛対象として見てるわけじゃない……が、お前が国を救ったのは事実だし、見直す人は多いだろうな」とクールに言い捨てる。
殿下に至っては、王家の次期当主として“国民的ヒロイン”となった私との距離のとりかたにまだ戸惑っている様子がある。
この間などは、「婚約破棄はしないんだから、もう逆ハーレムとか紛らわしい行動はほどほどにな」と言っていた。
ただ、私自身が積極的に逆ハーレムを築きたいなんて思っていないし、周囲の男子たちも以前からの縁や好意でサポートしてくれているに過ぎない。
客観的にはモテフラグ満載だけど、誰一人として本気で“セレスティアを奪う”なんて行動を起こそうとせず、どこか諦観も漂っているのかもしれない。
「うん……まあ、そうなるわよね……婚約破棄しないし……わたし、国の英雄呼ばわりされちゃってるし……」
自分の境遇を思うと、あまりに破滅フラグからかけ離れ、笑うしかない。
普通ならテンプレ的に「王太子とライバルたちが争って修羅場!」となる展開があるかもしれないが、実際には全員仲良く協力して闇の王を倒した戦友だから、ギスギスはない。私を巡るバチバチなど皆無だ。
そうしてモヤモヤしながらも学園の廊下を歩いていると、モブ男子生徒が私を見て頬を染め、「あ、あの、セレスティア様、お疲れさまでした! あの、ほんの気持ちですけど……」と花を差し出してくる場面にも遭遇。
取り巻きがキャッキャとはしゃいで、私が固まるしかない。
結局「えーと、ありがとう……」と受け取るしかなく、男子生徒が「やった……」と頬を染めて去っていく。
昼休みに食堂へ向かえば、貴族の息子が「先日は命を救っていただき感謝しております……もしよければこちらのスイーツを……」と好意の差し入れを申し出てきたりもする。
私が恐縮していると、レオナルトが「姉上、がっちりモテモテですね……」と複雑そうな笑顔を浮かべる。
いわば“モブから主要男性陣まで”全員が私を大好きという未遂状態。
あまりにも逆ハーレムチックで、「あの、私、殿下がいるんですけど……?」と申し開きしたくなるが、誰もが「そりゃ分かってる。でも憧れだけは止められない」と言わんばかりにアプローチしてくるのが本当に微妙な空気。
私が生真面目に断ると「いえ、断るとかそういうのじゃなく、感謝を伝えたいだけです!」なんて返されるから、嫌みを言う余地もない。
そして、殿下もわりと放任気味だ。以前なら「悪役令嬢に嫉妬心を煽る展開?」がありそうだが、現実は「うん、まぁ、セレスティアは人気だし俺もどこにもやらないけどね」くらいのスタンスで、余裕を持って構えている。
取り巻き令嬢ズが「殿下、寛大ですわね」とクスクス笑っているのを見て、婚約破棄なんて単語はもう死語でしかないと痛感する。
「はぁ……こんな逆ハーレムめいた状況、乙女ゲーならヒロインルートだろうけど、私って悪役令嬢なんじゃなかったの……?」と思うたび、周囲が「もう誰も信じてませんよ! 悪役令嬢なんか!」と笑い飛ばす。
もはや破滅フラグとは一体何だったのか……。
いずれにしても、私としては殿下との婚約続行が自然な形になるだろうし、それに複数の“攻略対象”を同時に狙う選択肢なんて考えもしない。
みんな仲間であり、友人であり、私にとっては大切な存在だ。恋愛感情の順列など、今さら変動はない……はず。
そう考えても、どうしても私の周囲には“モテフラグ”が散りばめられていて、学園最後の数ヶ月は逆ハーレムコメディと化している。
このまま卒業まで、殿下を筆頭に皆が私へ好意を寄せたまま……最終的にどうオチをつけるべきなのか自分でも判断に迷うくらいだ。
だが、取り巻きやクラスメイトの「キャー! セレスティア様カッコいい!」という賛辞を聞き、アニーが「私も以前はヒロイン立ち位置かと思ってましたが、今はセレスティアさんがみんなの中心ですね」と無邪気に微笑むのを見て、私は「ああ、もういいや、やれるだけやろう」と開き直ってしまう。
破滅フラグよりは百倍マシじゃないか……と。
周囲からのモテフラグが集中して“逆ハーレム寸前”というか、むしろ完全に誕生したかのような光景が学園の日常で展開され、私は照れながらも笑うしかない。
いつか“悪役”扱いされた面影はどこにも残らないほど、私が“国民的ヒロイン”化しているのだ。
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