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81話  クーデター収束、王都に平和が戻る…やっと普通に生活できそうですわ!

どれくらい眠り込んでいたのか分からない。


私が目を覚ますと、そこは仮設の医務スペースのような場所で、薄暗いランプが揺れながら私の横顔を照らしていた。


身を起こして周囲を見回すと、私の向かい側にはアニーが横たわっており、そちらも微睡んでいるらしい。両者ともにはだけたドレス姿に応急包帯が巻かれていて、痛々しいけれど一応命に別条はない。  


すると看病していた取り巻き令嬢ズの一人が目を潤ませて「セレスティア様……! 目が覚められましたのね!」と駆け寄り、袖で涙を拭う。


「ああ、本当に……よかったですわ。もう何日も寝込んでおられるから心配で……」


 「何日……? 私、そんなに寝てたの……?」

 私は仰天しつつ、身体を点検すると、どうやら3日以上は意識が戻らなかったらしい。合体魔法で魔力を使い果たした影響と深い疲労が重なり、こんなに長く倒れていたのだ。


 取り巻きが「でも、さすがセレスティア様! 闇の王を退けて、国を救って……今や王都中の英雄扱いですわ!」と声を弾ませる。


私はまだ頭がぼんやりしているが、少なくとも闇の王が再来してないなら、クーデターは収束しているのだろう。


 そこへ義弟レオナルトが姿を見せ、「姉上……ほんとによかった。長く眠ってたんですよ。王都は今、復興に向かって落ち着きを取り戻してます。殿下や騎士団のみなさんがめちゃくちゃ頑張って……」と報告してくれる。


その表情は半分泣き笑いのようだ。


 聞けば、あの大決戦後に闇の王の影は完全に消え、もともと城内に広がっていた闇の魔法陣も一瞬で霧散したらしい。


複数のローブ配下が逃げようとしたが、負傷した騎士団とガイらがどうにか捕縛したそうだ。黒幕が消えたことで、街に散らばっていた魔物は大半が消滅し、一部残った雑魚は速やかに処理された。


 「王城は半分崩れたけど、一応クーデターは抑えられて、国王陛下も無事。殿下が中心となって復旧を指揮してる。今のところ、もう闇の脅威は感じられないんだ……」とレオナルトが感慨深く語る。


私は安堵すると同時に、胸が熱くなる。


 そこへ騎士団の人が入ってきて、「セレスティア様、ご容体はいかがですか? ぜひ殿下が一目お会いしたいと仰っていて……」と言うので、私はヨロヨロと起き上がる。


まだ体は完全じゃないが、このまま寝ているわけにもいかない。


 アニーもほぼ同じタイミングで目覚めたようで、相変わらず頭痛を訴えつつも「せっかくなので私も行きます……」と起き上がろうとする。


取り巻きやレオナルトが支えてくれて、私たちは仮設の救護室からゆっくり廊下へ出た。


 廊下というより、もう王城の壁や天井は大きくひび割れ、あちこちに修復作業が始まっている。重機のような魔法道具を使って瓦礫を撤去し、臨時の足場を組む騎士や職人の人々が忙しそうに動き回る姿が見える。まさに“復興”の段階らしい。


 私が「こんなに壊れちゃったんだ……でも、街の人たちは大丈夫なの?」と呟けば、取り巻きが「はい、学園や貴族区が避難所になってて、まだ混乱はあるようですが、殿下が細かく指揮して落ち着きつつあるそうです」と答える。


その言葉に、改めて殿下の成長を感じる。彼も最初は“悪役令嬢断罪”に躍起だったけど、今や立派に国を引っ張っているのだ。


 そうして私たちが歩を進めるうち、城の奥から慌ただしく駆けつけたのは——王太子リヒト殿下本人だ。ボロボロの仮甲冑姿に腕や額には包帯を巻いているが、表情は明るい。


私を見つけるや「セレスティア!」と声をあげ、駆け寄ってきてくれた。  


「お前、やっと目が覚めたのか……! 本当に良かった……」  そう言うと殿下は私の手をそっと握りしめ、安堵しきった顔を見せる。


私は少し照れつつ、「ええ、ちょっと長い間寝てたらしいわね……殿下の方こそ無事?」と問い返すと、殿下は苦笑混じりに「まあ、すぐには死にそうにないよ。あれから忙しくて寝る暇もないが……」と肩をすくめる。


 アニーも「私もありがとうございます、殿下……」と礼を言うと、殿下は「君の聖女力こそ国を救った。感謝してもしきれない……」と頭を下げる。


なんだかとても素直で、婚約破棄を考えていた男とは思えないほど丸くなっている感じだ。私は内心くすぐったい気分だが、これが本来の彼なのかもしれない。


「闇の王は……本当に消えたのね? クーデターは収束したの?」と確認すると、殿下は力強く頷く。


「ああ、厳密に言えばまだ残党が散ってる可能性はあるけど、大本の闇魔力は完全に途絶した。王城と王都は今、復興を進めてる最中だ。


父上も無事で、宰相と一緒に仮政府を立てて指揮を執ってる……。とにかく国は助かったよ、セレスティア」  その言葉を聞き、私は全身の力が抜けるほどの安堵を感じる。


国が助かった……私の破滅フラグなんて、とっくに溶けて消えたけれど、それ以上にこの世界が崩壊しなくて本当によかった。


 王都に平和が戻ったという安心感はもちろんあるが、当面は瓦礫だらけの城や被災した街並みの修復が大仕事らしい。


殿下が私の肩を支え、「しばらくは療養に専念しろ。お前は闇の王を倒した英雄として国中が感謝してるんだ。俺もみんなも、お前に無理はさせられない」と優しい声をかけてくれる。  


「私だって復興を手伝いたいわ。体力が戻ったら光魔法で治癒を……」と訴えると、殿下は苦笑いしつつ「ならほどほどにな。アニーも頼むぞ。お前たちが倒れたらもともこもないからな」と釘を刺す。


ガイやアレクシスも同じように奮闘しているらしく、私は「みんな本当にお疲れさま……」と胸を撫で下ろす。


 このクーデター騒ぎが収束したからといって、私の“破滅フラグ”が急に蘇るわけもない。


むしろ世間では「セレスティア様が闇の王を撃退した、国の光だ!」という評判が爆発的に広まっているようだ。


取り巻きやレオナルトの話によれば、王都の人々が「セレスティア様とアニー様こそ私たちの救世主!」と噂しているとか。  


「婚約破棄の“こ”の字もあり得ないわね……」とアニーが笑うと、私は思わずクスッと笑い返す。「そもそも殿下も一緒に血を流して戦ったんだから、もうどう考えても悪役令嬢だの断罪イベントだの言ってる場合じゃないわ」  


殿下は苦い顔で「やめてくれ……過去の黒歴史だから……」と小さく呟く。私もほほ笑ましい気分で、彼を見つめる。


 こうしてクーデターが収束し、闇の王が去ったあとの王都には、確かに安堵の空気が漂い始めている。王城こそ半壊だが、そこに住む人々や国王らは無事。


街も最悪の壊滅状態にはならず、多くの市民が再建を誓って立ち上がっている。すべてを失ったわけではないという事実に、私は胸を撫でおろした。  


「本当によかった……私が破滅しないで、国も守れて……こんな未来があるなんて、昔の私じゃ想像できなかったわ……」  心の中でしみじみとつぶやき、痛む体をアニーと殿下に支えてもらいながら、そのまま仮設の養生室へ戻る。


いまは体力を回復させ、みんなで復興を手伝うのが先決だ。あの闇王が二度と現れないなら、国に平和が戻るだろうし、私の破滅は永遠に消えたと言っていい。


 闇王との死闘を経てクーデターが収束し、王都には再建と平和への兆しが見えている。


婚約破棄も破滅フラグも跡形もなく、私たちはただ生き残り、傷ついた仲間と国土を癒やす日々を迎えるのだ。


悪役令嬢という呼び名が空しく感じられるほど、世界が変わってしまったが、いまはただ心から安堵したい。


次に待ち受けるのは“復興と学園生活の再開”、あるいは……さらなる学園エピソードかもしれないが、とにかく闇の時代は乗り切ったのだ。

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