80話 大団円…かと思いきや、王城が半壊…私、とりあえず生きていますわ!
意識が薄れゆくなか、私とアニーの合体呪文が闇の王を包み込み、あの圧倒的な闇オーラが崩壊していった
——そんな手応えを最後に、私の意識は暗転してしまった。
次に目を覚ましたとき、そこは王宮の一角……というより、どこか広い廊下の端で、暫定的に救護所のようなものが設営されているらしかった。
痛む体に鞭打って目を開くと、私の近くでアニーが疲労困憊の表情で座り込み、私の手を握っている。
「セレスティアさん……気がつきましたか? よかった……」
「アニー……ごめんなさい。私、あれから……どうなったの……?」
声を出すだけでものどがカラカラに渇くし、体中の魔力が枯渇していて立ち上がる気力がない。
それでも、どうにか口を動かして状況を確認したい。
アニーがかすかに笑みを浮かべ、
「私たちの“聖なる輝き”が決定打になって、闇の王の姿は消滅したんです。王宮中央ホールの闇のオーラも散り散りになって……そのままホール全体が部分的に崩落してしまいましたが……とにかく闇の王は倒せた、と思います……」
「ああ……そう……助かったんだ……」
私は安堵するあまり、その場で大の字に脱力したい気分になった。
けれど、アニーの言葉からは険しいニュアンスも伝わってくる。崩落したというのだから、ただの“大団円”で済むような状況でもなさそうだ。
私はちょっと首を巡らせて辺りを見やる。周囲には騎士団員たちが負傷者の手当をしており、あちこちに瓦礫の山や穴の開いた壁からちらっと外光が差し込んでいる。
どうやら王城の中央付近が半壊状態で、屋根や壁が大きく崩れてしまったようだ。私は思わず悲鳴を飲み込む。
「こんなに壊れて……大丈夫なの、王宮がこんな状態で……国王陛下や殿下はどうしてるの?」
私が震える声で尋ねると、
アニーは「陛下や宰相は、ホールで戦闘が始まる前に近衛が別棟へ避難誘導したみたいで……何とか無事ですよ。殿下やガイ、アレクシスはまだ負傷兵の救援や、瓦礫の撤去を手伝っています。崩落の爪痕は深くて……」
と疲れた声で答える。
たしかに、私たちが闇の王と戦ったホールがほぼ崩落してしまったなら、王城としての機能は大ダメージを被ったわけだ。
ある意味で“クーデターは鎮圧”したものの、城が半壊する惨状になったと言える。
大団円……とは呼びがたいが、少なくとも闇の王は消えて脅威が去った
——というのが現在の状況なのだろう。
「でも、みんな無事で……闇の王も消えたなら……これで一応勝った……のよね……?」
そう呟きながら、私はアニーに支えられて上半身を起こす。あちこち痛むし息苦しいが、どうにか周囲の被害を見渡せるだけの姿勢になった。
ちょうどそこへ、傷だらけのガイと殿下が歩いてくる。
ガイは右肩に包帯を巻き、殿下も鎧がボロボロだ。二人とも安堵したように駆け寄り、私とアニーの無事を確かめる。
「セレスティア、アニー……大丈夫か! 本当に、よかった……」
殿下は目に涙を滲ませながら私の肩を支えてくれる。
私が「そっちこそ……酷い怪我みたいじゃない」と苦笑すると、ガイが笑いながら「へへ、俺は頑丈ですからね。殿下はちょいヤバいっすけど」と冗談っぽく応じる。
殿下が苦痛の表情を浮かべつつ、「でも、お前たちが合体魔法で闇の王を浄化してくれたおかげで……状況は収束したよ。あとは王宮の廃墟を片付けるだけだ」と言ってくれる。
やはり私たちの最終奥義が勝負を決めたらしい。
アレクシスの姿が見えないが、ガイいわく瓦礫の下敷きになった騎士団を助けに行ったとのこと。
「あいつも無理して動いてるけど、まだ気力が残ってるみたいだし……闇の王が消えたのが大きいな」と苦笑する。
「そう……みんな生きてるのね。よかった……」 私はようやく心から安堵の息を吐く。婚約破棄なんて言葉も思い浮かばないほど、頭が真っ白になる。ここまで苛烈な戦いを勝ち抜き、死にかけた仲間が誰も欠けずに済んだのなら、それこそ奇跡だと思う。
殿下が小さく笑って、「俺だって死に物狂いで戦ったよ。もはやお前の破滅フラグなんて眼中にない……国が滅ぶところだったんだからな」と呟く。
「ええ……私も、破滅するくらいなら国を守りたかったわ」
言葉が自然に出て、私はふと視線を下げる。なんだか照れ臭い。同時に、とてつもない虚脱感が押し寄せ、瞼が重くなる。
闇の王がいなくなったというなら、少し眠りたい
——そんな感情すら湧くが、まだやるべきことがあるはずだ。
「あの……国王陛下とは会えそう?」
と私が尋ねると、殿下は小さく頭を振る。
「父上は無事だが、王宮の被害が甚大で、今は避難しながら臨時の指揮所を作っている。すぐには会えないかもしれないけど、落ち着いたらお前たちにも礼を言いたいって騎士が伝えてたよ」
ガイも「いやあ、セレスティアさんとアニーさんの魔法がなきゃ、マジで終わってたっすよ。そんで殿下も超頑張った。ヤバかったけど勝てた! 王城はガッタガタだけど……」と苦笑いで胸を張る。
確かに、この半壊した王城を見れば“被害甚大”という言葉がぴったりだ。だが、闇の王が消滅したというのなら、今後は再建へ向けて歩み出せるはず。国が潰れるよりは遥かにマシだ。
私はもう一度、アニーと微笑みを交わす。「学園祭もぶっ飛ぶほどの闇騒ぎだったけど、結局私たちが踏ん張れたわね……。よかった……」
アニーは半泣きで頷いて、「本当、頑張りましたよね……。これで平和が戻ってくれるといいんですが……」と呟く。
まだ確証はないが、とりあえず闇の王の姿が見えない以上、このクーデターは収束へ向かうに違いない。
そんな私たちの安堵をよそに、周囲では救護や瓦礫撤去が進んでいる。騎士団員が「セレスティア様、アニー様、ここは危険です。もう少し安全な場所へ移動を!」と声をかけてくれ、殿下やガイが私たちを抱え上げるようにしながら廊下の端へ歩き出した。
その途中で私は王城の廊下の崩れた天井を仰ぎ見て、胸が痛む。
(大団円……かと思ったら、王城はこんなに壊れて……でも、国は救われた。私の破滅は完全に消えたし、この国崩壊フラグだって折れたはず……。よかった……生きてる……)
光魔法で体を癒やそうとしたが、魔力不足でままならない。
今はアニーの回復も限界だし、私たちも休息が必要だ。周りの騎士が、寄せ集めのベッドを用意してくれたようで、私とアニーはそっと横になり、殿下とガイが「本当にありがとう、少し眠れ」と囁いてくれる。
私は素直に目を閉じ、クーデターが終わったんだ……という実感がじわじわ湧いてくる。
破滅フラグどころではない――国が滅ぶか否かの瀬戸際だったが、今はとにかく生き延びた。
城が壊れてしまったのは痛ましいけれど、その代わりに闇の王が消滅したなら、大団円……とまでは言えないが大きな勝利には違いない。
こうして、王城は半壊という壮絶な爪痕が残ったものの、私とアニー、仲間たちの奮戦で闇の王のクーデターを阻止できたらしい。ま
だ真の安堵には至らないが、大勢が生存している今、この国が大きく崩壊する最悪だけは回避できたことが救いだろう。
もはや私の破滅フラグなんて影も形もない。私はただ、この勝利が確かなものであるよう願いつつ、意識を眠りへと預けるのだった......
毎日投稿頑張ってますΣ੧(❛□❛✿)
保存といいねお願いします……!




