78話 闇の王『ゲームなど糞食らえ…私は現実を滅ぼす!』メタ発言に唖然ですわ!
光と闇が激突し、巨大な衝撃波が起きた王宮中央ホール。
私たちの合体魔法による一撃で、闇の王のオーラは確かに削られた。だが、それでも生き延びている闇の王が、不気味な笑い声をあげつつ、黒煙の奥からこちらを見下ろしていた。
「ああ……駄目なの……こんなに総力を出しても……まだ倒せない……」
アニーが血の気の失せた顔で呟き、私も意識が朦朧とするほど疲れている。
殿下やガイはボロボロで、アレクシスも片膝をついて息を荒らげている。
騎士団の多くは倒れこみ、あるいは壁際で辛うじて踏みとどまっている状況。闇の王だけがまだ余裕を見せているように見える。
そのとき、闇の王が怪しく吐息をもらしながら、こちらへ視線を向けた。
「ふふ、これほど光を振るえる者がいるとは思わなかった。だが、私は“別の世界”から転生してきた究極のラスボスだ……。お前らのようなゲームの駒に、好きにされるわけにはいかん!」
ゲームの駒? 私は耳を疑う。周囲の転生者も同時に「え……?」と顔を見合わせる。
闇の王がさらにメタ的な発言を続ける。
「私は別ゲームの魔王。その世界で破れ、転生してここに来たのだ……。この世界など、ただの代替地にすぎん! お前たち乙女ゲー連中とやらも所詮作り物だろう……私が頂点になって何が悪い!」
何を言っているのか、一瞬理解が追いつかない。
私たち転生者は“乙女ゲー世界”に飛ばされたつもりだったが、それ以外の“別のゲーム”から来た魔王なんてあり得るのか?
でも、これほど圧倒的な闇を操る相手が同じ転生者だとすれば、メタ発言にも説得力がある。とにかく、彼も似たような経緯で転生し、この世界を支配対象にしているのだろう。
殿下が「なっ……お前も転生者なのか? なんてふざけた話だ!」と歯を食いしばる。
アレクシスが冷や汗を流しながら「なるほど、だから世界観がバグってるわけか……闇魔導書もお前が扱うには道具にすぎないんだな」と唸る。
ガイは「別ゲーム? 魔王? 何だそれ、ややこしいな!」と混乱している。
私は必死に体を支えながら「そうか……あんたも転生者だったのね。私たちと同じように、前世の記憶を持ってる。でも……だからって、この世界を滅ぼしていい理由にはならないわ!」と叫ぶが、闇の王は嘲笑を深める。
「ふん、前の世界で“勇者”とやらに敗れたが、今回は私が勝ち取る番だ。乙女ゲーだろうと何だろうと、私にとっては舞台にすぎない。結末は私が支配する王道の闇エンド……お前らなどその踏み台にすぎん!」
頭に血が上りそうな侮蔑だが、同時に背筋が寒い。この世界が舞台などと割り切っているからこそ、闇の王は人々を駒扱いし、国を滅ぼすことにも躊躇がないのだ。
アニーが震える声で言う。「この世界は“ただのゲーム”じゃありません……私たちが生きて、大勢の人が暮らしている現実です! あなたなんかに破壊させない!」
闇の王は眉をひそめ、「現実? 笑わせるな。私はもう一つのゲーム世界で魔王として君臨していたが、そこでも勇者どもに討たれて転生した。今回こそ私が勝者になる番だ!」と高笑い。
まるで私たちをナメきっている。
殿下が苦しげに「くそ……完全に暴走した転生者じゃないか……。そんなめちゃくちゃな理屈、通用させないぞ!」と剣を構えるが、彼もボロボロで、まったく剣を振るう余力はなさそう。
ガイも立ち上がれず、アレクシスも闇同士の相克で自滅しかけている。
私は決して諦めたくないが、どうやって闇の王を止める?
前世から乙女ゲーの悪役令嬢転生として破滅フラグを避けようと思っていたけれど、こんな“別ゲームの魔王”相手に何ができるのか
――正直、合体魔法も通じないとなれば、打つ手がなくなりつつある。
「何とか……何とかしなくちゃ……」
それでも私が必死に頭を働かせていると、闇の王が乾いた声で「ゲームなど糞食らえ……ここはもう私の現実だ。お前たちの妄想するハッピーエンドなど、私が食い潰してやる!」と怒鳴る。
空気が震え、地響きがホールに響き渡る。床や壁にさらに亀裂が走り、王宮が崩壊しそうな勢いだ。
「まずい……本格的に崩れ始めてるわよ……!」とアニーが顔を青ざめる。
殿下も後方を振り返り、「くそ、父上や宰相は避難してくれただろうか」と動揺を隠せない。
ガイや騎士団が急いで瓦礫を支えようとするが、闇の波動で次々破壊される。
見れば闇の王が両腕を広げ、魔法陣をさらに拡大しようとしているようだ。これが完成すれば、城は完全に内側から崩壊し、王家は滅亡状態に追い込まれるだろう。
合体魔法の再使用はもう厳しいし、体力もみんな限界に近い。どうすれば……!?
涙があふれそうになる。私が破滅を回避できても、国が滅亡してしまったら何の意味がある? せっかく仲間とここまで頑張ったのに、やっぱり闇の王には勝てないのか……。
だが、私は拳を握りしめ、残された気力を奮い立たせる。
「嫌よ……私、前世で悪役令嬢の破滅を恐れていたけど、いまは国が破滅するなんてまっぴら。絶対にこんな終わりは嫌……!」
殿下やガイ、アレクシス、アニーも必死に体を起こし、「もう一度立ち向かおう……少しでも抵抗するんだ!」と息を切らして叫ぶ。
ローブ配下の闇使いたちが周囲を取り囲むが、騎士団が踏ん張ってそれを阻もうとしている。完全に総力戦だが、勝てる保証はゼロに近い。
しかし、だからといって退くわけにもいかない。
闇の王が「くだらぬ悪あがきはやめろ……私の前にひれ伏せ!」と一喝し、ホール天井の一部が崩落して巨大な瓦礫が落下してくるのを見て、私は光の盾を必死に展開した。
殿下が剣で瓦礫を払い、ガイが隙を狙って闇の王の側面へ突っ込もうとするが、またも黒い触手のような闇がガイを跳ね飛ばす。やるせないほど強大だ。
(もう限界なの……? いや、違う。絶対にここで折れちゃ駄目!)
私はアニーと目が合い、「無理かもしれないけど、もう一度やるわよ……合体魔法!」と唇を噛む。
彼女も泣きそうになりながら「ええ、わかりました。たとえ失敗してもやってみましょう!」と決意を固める。
アレクシスも「俺が時間を稼ぐ……!」と虚勢を張るが、ボロボロの身体でどこまで動けるか不安だ。
ここで闇の王が大きく唸り、さらに闇魔力を引き上げる気配。
ホールの半ばが崩れて落下し、床下から赤黒い炎のようなものが漏れ出している。
地獄絵図さながらだ。私は泣きそうなほど恐怖を感じながら、それでも光魔法の杖を握りしめ、最後の合体呪文に賭ける心構えをしていた――。
こうして闇の王が“別ゲームからの転生ボス”というメタ発言を堂々とぶちまけ、私たち転生者が唖然とする。
世界崩壊を狙う彼と全力でぶつかってみたものの、現状まだ勝ち目が薄い。国が文字通り崩れかけている最中、私とアニーの合体魔法が再チャージ可能かどうかに一縷の望みを託す
——そんな息詰まる展開を迎えている。
破滅するのは私ではなく、むしろ“国全体”が瀕死の危機に瀕している。
婚約破棄だの悪役令嬢だのはもはや完全に消え、私たちは単なるキャラではなく“この世界の住人”として運命を背負う立場だ。
魔王が本気を出せば、ここで世界が終わってしまう。何とかあと一手、決定打を探し出さねば
――涙と血と光が交錯するなか、私たちは最後の足掻きを繰り広げる準備をしている.......
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