73話 婚約破棄は…? もうそんな話してる場合じゃないですね、と殿下がやっと悟りましたわ!
合体魔法の練習を終え、私はアニーと共に学園へ戻る道すがら、ふと王都の空を見上げていた。
最近、ほのかに靄がかかったような感覚が続いていて、まるで“闇が空気中に漂っている”かのように感じる。こんな状況で破滅フラグなど全く意識しなくなった自分を、改めて冷静に見つめ直す余裕もなく、国の未来を案じる日々が続くばかり。
そんなとき、道端でばったりリヒト殿下に遭遇した。
彼も視察の途中でこちらを見つけたらしく、「おお、セレスティア、アニー。お前たちが合体魔法を成功させたって聞いたぞ。すごい威力だったそうじゃないか!」と瞳を輝かせてくる。
私は「ええ、まぁ……まだ完璧じゃないけど、魔王が出てくれば使うつもりよ」と軽く微笑んだ。
アニーが「殿下、私ももっと精度を上げられるよう練習しますので、殿下も頑張ってくださいね!」と励ますと、殿下は「もちろん。俺も王家の血を侮るなよ、いざとなれば二属性魔法を使うし、剣技だってまだまだ上達する余地がある」と胸を張る。
しかし、そのあと殿下は気まずそうに言葉を探り、「あー……ところで、前から言おうと思ってたんだが、もはやお前と婚約破棄する理由なんて微塵も残ってないよな……。いや、俺も最初はゲームイベントを夢見てたけど、国がこんな状態だし、正直お前に惹かれてるところもあるし……」と告白じみたことを呟く。
思わず私は苦笑してしまう。「殿下が認めたように、いまはそんな話をしてる場合じゃないでしょう? 闇勢力が猛威を振るっているのに、私を断罪とか破棄とかあり得ないわよ。周りが誰も納得しないわ」
殿下は恥ずかしそうに視線をそらし、「う、うん……そうなんだ。だからもう、諦めたというか、受け入れるよ。お前を王太子妃にするのが一番だって周りにも言われるし、俺自身もお前の力を欠かせないって本気で思ってる」と正直に明かす。
アニーが横で微笑ましそうに見つめ、「やっと殿下、吹っ切れた感じですね。私も本来のゲームシナリオだと殿下と結ばれるルートだったかもしれませんが、現実では全然違う展開になったなあと実感します」とフォローする。
「本当、私が悪役令嬢のはずだったけど、いまじゃ婚約破棄なんて誰も期待してない。国の危機に際して、闇を倒すのが先決だもの」と私も相づちを打つと、殿下は「ああ……婚約破棄はもはや懐かしい妄想だ」と苦笑いしてうなずく。その姿は妙に清々しい。
殿下の心情としては、前世から引きずっていた“ゲームイベントをやってみたい欲”を捨てきれず、幾度も破棄未遂を起こしていたが、学園祭をはじめ、様々な危機で私が国を救う姿を見ていて完全に意識が変わったのだろう。
もうバカバカしくて口に出せなかった――それをやっと認めたようだ。
私がクスッと笑って「でも、あなたが言い出さないから私も楽だったわ。破滅フラグが消えて安心はしてたけど、こうもはっきり言われると……ちょっと照れるわね」と返すと、殿下は赤面して「べ、別に惚気てるわけじゃない。俺だって真剣に国を守るための判断だ」とむくれる。
アニーはそのやり取りを見て「良い感じに仲直りですね」と嬉しそうに見守る。
その後、殿下が真顔に戻り、「さて、闇勢力の動きが本格化してる今、婚約破棄の話をしてる場合じゃないのは当然として、やっぱり俺とお前が協力して戦うのがベストだ。
国王や騎士団、アレクシスやガイもいるが、お前の光魔法が核になるのは間違いない。前世ゲームの設定だと王家の光が最強と思ってたが、今はお前のほうが突出してるからな」と素直に認める。
私も真剣に頷く。「そうかもしれない。アニーが強化してくれる聖女力もあるし、殿下の二属性魔法も合わせられれば、さらにパワーアップするでしょうし。いざとなればみんなで三重、四重の合体魔法を試すのもアリよね」
というわけで、殿下が“婚約破棄はもうしない”と明言した瞬間、周囲(街にいる兵士や学園の生徒たち)からも「ああ、やっぱりそうなるよね」「まあ今さら破棄する理由ないし」と納得の空気で迎えられる。
そもそも私が何度も国を救った実績があれば、破談なんて殿下が言い出そうものなら大炎上間違いなしだ。
こうして破滅フラグが完全に散ったどころか、婚約継続ルートが確固たるものになり、私はちょっと困惑しながらも「うん、闇の王を倒すまではしっかり連携を取ろう」と落とし所を見つける。
私が王妃になるかどうかまでは、まだ先の話だし、国が無事である保証すらまだないのだから。
内心ホッとしつつも、まわりが「これでセレスティア様が王太子妃ルート確定!」と大騒ぎするのが目に浮かんで恥ずかしい。
実際、取り巻き令嬢ズやレオナルトが横で「殿下、やっと悟りましたね!」と大はしゃぎしていて、殿下が「お前らもうるさい……」とたじろぐ光景が微笑ましいやら気の毒やら。
けれど、私にとっては本当に婚約破棄が“遠ざかった”というだけで、気が楽になったことも確かだ。闇勢力との決戦が近いいま、余計な不安要素がなくなるのはありがたいし、私が破滅エンドを回避できたのは嬉しい限り。
これで大きな分岐がはっきりする。「婚約破棄はもうありません」と殿下がハッキリ表明し、周囲も納得済み。私が昔恐れていた“断罪イベント”が完全に崩壊した以上、あとは闇王との戦いに勝って平和を掴むしかない。
しかし、その障壁はまだ取り除かれていない。
王都は不穏な空気に包まれたままだし、黒幕の正体は依然不明。魔王が本気で現れれば、婚約破棄がない代わりに国が滅びる可能性すらある。
私と殿下、アニー、ガイ、アレクシスらが総力を結集して乗り越えられるか――いよいよ物語の大詰めに向けて、一気に加速していきそうだ......
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