71話 セレスティア、アニーと協力し“聖女×光”合体魔法を試してみますわ!
王都での魔物騒動が収まり切らないまま、さらに衝撃的なニュースが飛び込んできた。
王宮の回廊で深夜に不気味な魔法陣が現れ、そこに闇の魔術師らしき人影が映し出され、言葉を発したという。曰く「私は真の闇の支配者。
王家を滅ぼし、この国を絶望へ陥れる!」と――まさに**“闇の王”が宣戦布告**したとしか思えない状況らしい。
「闇の王が名乗りを上げたってこと……? 本当にこの世界を滅ぼすつもりなの?」と私が絶句すれば、アニーやガイらも恐怖で青ざめている。
アレクシスは「来たか……。やはり裏で魔王クラスの存在が蠢いていたんだ。
クーデターというより、もっと大規模な崩壊を狙っているかもしれない」と唇を噛む。
リヒト殿下は激昂しながら報告してくれた。
「父上が直々に騎士団を集め、この闇の王を探すよう指示を出した。だが敵は姿だけ出してすぐ消えた。回廊に薄い闇の跡を残していただけらしい。完全に挑発だな……」
王宮の中では国王や宰相が激怒しているというが、現実的にどこを探せばいいのか分からない。
闇の王がこの世に存在するのか、どこか異界に潜んでいるのかも不明。私やアニーが前世の情報で「ラスボスは物語終盤に君臨するはず」とか考えても、具体的な手がかりはない。
アレクシスいわく、「やはり王宮地下に巨大な魔法陣を秘かに構築し、タイミングを見て“闇の王”を完全召喚する気だろう。今は大雑把に姿を映して宣戦布告しただけで、本体はまだ封印の外にいないのかもしれないな」と推測している。
もしそれが本当なら、時間の問題だ。大規模クーデターを起こす時期が近いに違いない。
私が「いつ襲ってくるの? 魔王が起動したら、私たち転生組で対抗できるの……?」と不安を口にすれば、ガイが重々しく頷いた。
「俺もそこが心配っすね。中型の魔物でもヒーヒー言いながら倒してるし、魔王とやらが何百匹も呼び出したらどうなるやら」
それでも私は胸を張り、「何が来ようと、私とアニー、殿下、アレクシス、ガイ、みんなが力を合わせれば勝ち目はあるはずよ。もう結束が固いんだから、頑張りましょう!」と言い切る。
転生者同士、ここが正念場という意識は共有しているし、姉上推しのレオナルトや取り巻き令嬢ズも含め、私に期待している人たちが多い。
「闇の王が出たら、セレスティア様が光でぶち破る!」と半ば信仰みたいに言われているのだから、やらないわけにはいかない。
しかし、宣戦布告の具体的内容が分からない以上、私たちは何を防御すればいいのか判然としない。
学園側も「もし王都が再度襲われたら生徒を避難させる」と動き始めたし、王宮は厳戒態勢で騎士団をフルに動員しているが、黒幕が首を出す気配はない。
闇の王が“私の前”に姿を現さない限り、封印も封印術も使えないからもどかしい。
そんな中、殿下が深夜の密会で私を呼び出し、王宮の書庫を一緒に見に行くと言い出した。
「父上から借り出した古文書に“闇の王が宣戦布告した前例”が載ってるかもしれない。こうなると、セレスティアの光が本格的に鍵になるのは確実だから、一緒に探してくれないか?」
それを聞いた私も「分かったわ、少しでも情報を得られるなら」と応じた。
二人で夜の王宮をこっそり巡るのは妙な緊張感があるが、学園祭の魔物騒動を経て、もう殿下との関係にギクシャクはない。
むしろ婚約破棄の話題が封印され、ただの協力者として動きやすくなっている。
書庫の片隅で殿下がボソリと本音をこぼす。
「俺……本当は前世の夢を捨てきれずに、悪役令嬢断罪イベントを狙ってたけど、もう無理だな。国がこんな危険な状態で、お前を悪者扱いするなんて馬鹿らしい。むしろお前と組まないと勝ち目がない」
私は苦笑を漏らし、「そりゃそうよ。私だって悪役になりたいわけじゃなかったし、今さら断罪されるなんてまっぴらよ。大体、国が滅んだら私たちまで巻き添えだし。前世の“ゲーム”とは全く違う現実だものね」と返す。
殿下は切なそうに笑い、「ああ、現実のほうがよほどハードモードだ」とつぶやいて本をめくる。
こうして王宮の古い書物をひとしきり探ってみると、“遥か昔に闇の王が国へ宣戦布告し、大戦乱を引き起こした伝承”が断片的に記されていたらしい文献が見つかる。
そこでは「闇の王が言葉だけで民を洗脳し、王家を陥落させようとした」とあり、封印を解くカギとして“光と聖女の合体魔法”が必要だったとも暗示されている。
殿下が手記を読み上げ、「やっぱりお前とアニー、あるいは俺も含めた光の連携が命運を握るのか……」と眉をひそめる。
私も同意見だ。
「前世のシナリオ草案でも“王家+ヒロインで魔王を倒す展開があり得る”とされてたけど、現実でもそれが起こるのね……。笑ってる場合じゃないわ」
夜更けまで書庫で文献を漁るうち、殿下がふいに照れくさそうに「今さらお前と婚約破棄したいなんて言えないし、国を守るにはお前が必要だし……正直、俺はもう完全にお前に惚れたかもしれない」と呟いてきて、私は目を丸くした。
「え……いま告白? このタイミングで?」と驚くと、殿下は慌てて咳ばらい。
「あ、いや、違う……本当にお前がいなければ国が崩壊するのかと思うと、俺はもう嫌でもお前を認めざるを得ないんだ。破棄じゃなくて、むしろ結婚して国を支えたいくらい……」
何とも不器用な愛情表現に顔が熱くなるが、私は自然と笑ってしまう。
前世の殿下がオタク的に考えていた“断罪イベント”など、とっくに吹き飛んだ証拠だろう。
「闇の王を倒すまではそんなこと言わないで。余計なフラグ立てちゃ危険よ?」と軽くいなすと、殿下は「そうだな……すまん、落ち着いたら改めて話すよ」と肩をすくめる。
こうして二人で見つけた古文書の情報は微々たるもので、結局大きなヒントは得られなかった。
ただ“闇の王が宣戦布告するとき、既に大半の準備が整っている場合が多い”という記述があり、それが私たちの不安をさらに煽る。もはやカウントダウンが始まっているのだ。
私が書庫を後にしながら、「闇の王のクーデターがいつ起きてもおかしくない。
学園でも王宮でも、十分な体制を敷いておかなきゃ……」と小声でつぶやくと、殿下は「明日にも父上と王宮の騎士団を総動員するよう話す。
学園にはお前がいるし、アレクシスやガイも動けるから、最悪王都全域で戦う形になるかもしれないが……」と苦々しく応じる。
(本当に戦争みたいな展開ね。婚約破棄どころじゃないし、私も悪役令嬢なんて仮初の役割をはるかに超えたところに来てる。こんな世界線があったなんて、前世の私も想像しなかったわ……)
そう考えると、ここまで来られたのは“破滅フラグ”が早々に壊れて、周囲が私を悪く見ず助けてくれたからに他ならない。
レオナルトや取り巻き、アレクシス、ガイ、アニー、殿下――皆が転生者あるいは味方として私を守ってくれた。その結果、私が国の光として戦う展開が現実になったのだ。
王宮の廊下を後にする頃、殿下が急に心配げに「闇の王が現れたら、今度こそ大勢死ぬかもしれない。でもお前だけは……死なせないからな」と呟き、私を見つめてきた。
その瞳にはかつての“断罪して楽しもう”という好奇心ではなく、“本気の覚悟”が宿っているように感じた。
私も静かに微笑み、「ありがとう。私もあなたや皆を守るわ。破滅するのは闇の王のほうよ」と返す。
もうこれが、私が目指す“真のエンド”なのかもしれない。
王宮回廊で闇の王が“宣戦布告”をして消えたという報告が入り、国中が怯えるなか、私と殿下は古文書を探り“不吉な前例”を見つけてしまう。
婚約破棄などもう誰も話題にしないほど、クーデターの現実味が増している。私たちがこれをどう乗り越えるか――破滅フラグから脱却した私は、今こそ真に国を救うための光となる決断を迫られるのだった。
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