60話 二年生終了、国中が不穏になり始めているようですわ.......
二年生の特別実技テストが終わり、あれほど騒がしかった学園も夏休みムードへ移行しつつある。
私はといえば、成績上位で褒章式へ招かれる立場になったり、実技テストでも光魔法を使いこなして周囲を驚かせたりと、もはや学園内で“悪役令嬢”扱いされることなど全くなくなってしまった。
むしろ「セレスティア様、すっかり王太子殿下との婚約が安泰ですね!」などと無責任に囁かれる始末で、私自身も複雑な気分になっている。
そもそもリヒト殿下は、私を断罪するイベントを心のどこかで望み続けていたはずだ。だがこの二年間、それを形にしようと三度も試みても、そのたびに魔物騒ぎや闇勢力の動向にかき消されてきた。
もう殿下自身すら半ば諦めており、学園の面々も「いまさら婚約破棄なんて誰が得するの?」という空気で落ち着いてしまっている。
実際、私が破滅する可能性など微塵も感じられないくらい、周囲の期待と称賛を受け続けている状況だ。
けれど、そんな私を安心させてはくれない不穏な動きが、王都や王宮のあちこちで報告されるようになった。
最近になってますます「闇魔導書」に関連する噂が盛んになり、黒ローブをまとった魔術師が夜の王宮近辺をうろついている目撃証言が増えていると、義弟レオナルトやアレクシス、殿下らから相次いで耳にするのだ。
もともと宝物庫が盗まれた昨年の夏休み前後も騒動があったが、今年はさらに危険度が上がっているらしい。
街で魔物が頻発する量が増えており、学校の裏庭にも怪しい呪文跡がたまに見つかるなど、学園祭の時期とは違った怖さが漂いはじめている。
騎士団や王宮も「もし大規模な闇の動きがあれば国を揺るがしかねない」と危惧しており、私たち転生者の間でもいよいよ“魔王”なるものが出現する危険が高まったのではと見ている。
事実、アレクシスの闇探知によれば、地下迷宮の封印に小さな亀裂が増えているとか、王都周辺の空気が妙に濁ってきたように感じるなど、あちこちで小さな歪みが連鎖しているという話だ。
実際、私は私で街の魔物退治に何度も呼び出されるようになっていて、姉上推しのレオナルトや騎士科のガイがサポートしてくれるからこそ被害が最小限に済んでいる状況。王太子殿下も出動はしているが、相変わらず私が先に魔物を倒してしまうケースが多く、殿下の見せ場がなくて嘆いているという噂を聞く。
そんな落ち着かない雰囲気の中、王宮から「二年生上位者は褒章式に出席せよ」と改めて通達が出た。
成績一位のアニー、二位の私、三位アレクシス、四位殿下、五位ガイという順番で国王に謁見する予定だ。もちろん殿下は王太子だから特別な立場だが、形式上は“学生としての成果”を祝われる立場でもあり、なんだか妙な並びになりそうだ。
「褒章式、私あまり気乗りしないのよね。こんなに目立ってばかりで、いまさらヒロイン扱いされるのも気恥ずかしいし……」と私が呟くと、
取り巻き令嬢ズが「何をおっしゃいますか! セレスティア様こそ闇に立ち向かう光の令嬢ですもの、堂々と国王陛下の前に出ればいいんです!」と楽しそうに煽ってくる。
悪役云々という話はとうに消え失せているから、私自身も「仕方ないわね……」と苦笑いするしかない。
一方、殿下は「くそ……褒章式で改めて『セレスティア殿は国の宝』なんて言われたら、ますます破棄できなくなるじゃないか……」と頭を抱えている。
周りはもう誰も相手にせず、「殿下、今さら諦めましょうよ」と投げやり気味。
私も「今は闇の話題が最優先ですから、変に婚約破棄で騒ぐ暇があるなら国防に力を入れればいいのに」と内心思っている。
そうやって褒章式の準備が進む一方で、闇の噂はさらに拡大し、黒ローブが「魔王復活」を口にしたとか、集会で不気味な儀式が行われていたなど、騎士団経由で聞こえてくる報告が少なくない。
アレクシスが「いよいよ本格的に“闇の王”が浮上するんじゃないか」と警戒を強めれば、ガイは拳を握って「そのときゃ俺がぶっ倒す!」と相変わらず頼もしい脳筋発言。
アニーは震えつつも聖女力のさらなる開発に力を注いでいる。
私はというと、二年生が終わり夏休みに入るタイミングで、アニーとともに教会へ行き“魔王封印の手がかり”を探す計画を進めている。
もはや破滅フラグなど関係なく、完全に「国崩壊フラグをどう消すか」だけがテーマになっているわけだ。
自分自身ですら「ああ、悪役令嬢転生だったのは何年前の話だろう……」と遠い目になる。
そうして二年生の修了式があっさりと行われ、学園長から「セレスティア・ノイエンドルフ殿は今期も素晴らしい貢献をされました」と褒められ、クラスメイトから拍手を浴びる。
その拍手を横目に殿下は「ますます破棄できない……」と呟くが、もうどうにもならない。私が破滅するはずだった流れは完全に死に、私は王国の光として認められ始めているのだ。
さらに学園長が「最近、闇勢力の噂が騒がしいが、皆さんは決して怯えず、正しく対処法を学んでください。
セレスティア殿や王太子殿下も協力くださっています」と締めくくる。もう私の存在を“悪役”として名指しする人は誰もいない。
こうして、私にとっては波乱尽くしだった二年生が正式に幕を閉じる。破滅フラグが消えたどころか、最終的には「闇の脅威を払う勇者候補」と呼ばれそうな立場にまで浮上してしまった。
取り巻き令嬢ズが「セレスティア様、もはや断罪も婚約破棄もネタにならないですわね~」と笑い合い、義弟レオナルトも「姉上最高! 二年目もお疲れさまでした!」と拍手を送ってくれる。
ただ私の胸は、どうにも落ち着かない。二年生が終わった瞬間から、王都の不穏な気配が一段と濃くなっている気がしてならない。殿下もガイもアレクシスも、みんなが夏休み中にそれぞれ動き回る予定だから、連携を怠ると大変なことになりそうだ。
アニーと私は褒章式を経て教会へ向かい、“三人詠唱”や“光と聖女力の融合術”を調べる。殿下は王宮の守りを強化し、ガイとアレクシスは王都各所の巡回で黒ローブを探す。レオナルトや取り巻きは私をサポートし続ける。
そうして破滅フラグの代わりに、国が不穏な波に呑まれつつあることを肌で感じながら、私は二年生を正式に終えるのだった――。
次はいよいよ三年生編へ入るか、それとも休み中に大事件が発生するか――私たちの戦いはまだまだ終わらない。
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