59話 アレクシス、真の闇勢力と一瞬接触…『あれがラスボス? マジでヤバそう』と内心ビビりますわ!
休みに入り、私はアニーとの教会行きの準備を着々と進めていた。そんなとき、突然アレクシスが蒼白な顔で「……俺、夜の王宮地下で“マント男”に会った」と打ち明ける。
「マント男? もしかして黒ローブの闇魔術師?」と私が聞き返すと、アレクシスは肩を震わせながら答える。「ああ……あれはただの魔術師じゃない。『貴様も闇を使うか…面白い』と嘲笑され、次の瞬間には姿を消された。闇魔法のレベルが俺の比じゃなかった……」
彼の話では、夜中の王宮地下を探っていた際、マントを被った謎の男が現れ、ほんの数秒だけ言葉を交わして消えたという。まるで異次元への扉を開いたようにスッと消えたらしく、アレクシス自身も何もできなかった。
「お、おのれ……俺も闇を操れると思っていたが、あいつには敵わん。下手をすれば瞬殺されていたかもしれない…」
実際、アレクシスは闇魔導書の偽物(断片)で失敗したばかり。もし黒幕が本物を持っているとすれば、戦力差は歴然だろう。
私やガイ、殿下、アニーらが顔を揃え、緊急の自警団会合を開く。
アレクシスは表情を曇らせながら断言する。
「あれが真ラスボスなのかは分からないが、間違いなく凶悪な闇の使い手だ。王宮の地下まで平然と入り込み、俺に見つかっても余裕そうに消えていった……。王族や国全体を舐めてるとしか思えない。」
殿下が唇を噛む。
「くそ……王宮の警備は厳重なはずなのに、その程度じゃ対処できないか。もしかして魔王復活を試みる輩が、既に宮中に潜り込んでいるのかも……」
義弟レオナルトは怖がるように「じゃあ、もしかしたら姉上を闇討ちしようとしてる可能性もあるんじゃ? 姉上こそ闇王を封じる光だから……」
と指摘する。
私は一瞬ぎょっとするが、「確かに、私が狙われる可能性は高いわね。でも『おのれ光の令嬢め』と正面から挑まれるほうが分かりやすいわ。コソコソされるほうが対策しにくい」と返した。
アニーが震え声で言う。「では、いよいよ本当に“闇の王”クーデターが近いんでしょうか…。セレスティアさん、姉上だと言ってくれた方々……私たち転生者が団結しないと……!」
「ええ、もちろん。夏休みだからって気を抜けないわ。私とあなたは教会で古文書を探し、ガイや殿下は王都の巡回、アレクシスは可能な範囲で闇の気配を探知――皆で情報を共有すれば、いざというとき対応できるはず」
ガイは拳を鳴らし、「おう、俺は突撃隊として前線を任せてもらうぜ! どんな魔法使いだろうが、懐に入りさえすれば叩き落とせる!」と気合を入れているが、アレクシスが「本当に大丈夫か……」と冷めた目で見ているのが印象的だった。
私の心中にも不安が膨らむ。黒ローブが王宮地下に現れたということは、宝物庫盗難の犯人――すなわち闇魔導書の真犯人――とほぼ同一人物だろうし、アレクシスが感じた闇オーラは相当なもの。
(私は何度も小物の魔物を倒してきたけれど、そんな次元じゃない本物の闇魔術師とぶつかるなら、学園祭や街の騒ぎ以上の大ピンチが来る……)
殿下が暗い面持ちで言葉をつむぐ。
「このままでは、いずれ“闇の王”が復活して国が滅びかねない。婚約破棄だ、なんだと騒いでいた自分が情けないよ……」
取り巻き令嬢ズは「まあ殿下、最初はゲーム感覚でしたしね」と苦笑。
リヒト殿下自身も「はは……もういいさ。俺はセレスティアの破滅を望むより、国を救いたい。今はそれだけだ」と、視線を私に向けてくる。
その表情に宿るのは複雑な感情。最初は私を断罪して楽しみたかったのかもしれないが、今では私がいないと国が危ういことを痛感している――だから何も言えないのだろう。
私は小さく笑い、「ええ、闇の王から国を守るためなら、私も力を惜しまないわ。悪役令嬢や婚約破棄なんてどうでもいい……。あなたも協力してくれるなら嬉しいわよ、殿下」と言うと、彼は少しだけ微笑んで「…ああ、もちろん」と頷く。
こうしてアレクシスが“ヤバい闇魔術師”と接触したことで、私たちが最終決戦への準備を具体的に急ぐ流れになった。魔王が現れる前にできることをやり切らないと、国崩壊フラグが待っている。
「闇の王? そんな存在、さっさと封印してしまうわ……!」
私が心中で決意を固めると、レオナルトが「姉上、絶対に僕がサポートしますから!」と隣で誓ってくれる。ガイも「おう、俺だってバッチリよ!」と拳を突き合わせる。殿下とアレクシスも黙って頷き、アニーは「はい!」と少し緊張した笑みを浮かべる。
破滅フラグ? そんなものは跡形もない。もはや私を断罪する暇など国のどこにも残っていない。アレクシスがビビるほどの闇勢力が、いつどこで大暴走を起こすか――それだけが問題だ。
こうして私たちは“黒ローブ魔術師”が王宮地下にまで出入りしている事実を重く受け止め、夏休みの褒章式や教会調査を前に、一層の警戒を敷く。
この先で待ち受けるのは、もはや“悪役令嬢の破滅”ではなく、“国家滅亡”と紙一重の真ラスボス決戦だろう....
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