58話 2年生最後の試験が迫る→ 私、やっぱり上位確実な気配…悪役令嬢イベントになりませんわね
「もうすぐ夏休みが来ると思ったら、また別の試験……?」
と困惑する人もいるかもしれないが、実は学園では年に数回“特別実技テスト”が行われる。2年生の後期にもなると、その“模擬試験”が近づいてくるのだ。
私たちが闇勢力の動向に警戒している間にも、学園の方針はブレない。
「試験と実力評価はちゃんとやるべき」
と、教師たちは意外に腰が据わっている。
「この特別実技テストでの上位三名は、国王から褒め言葉と追加奨励金を得られるって話もあるわね……。もう期末の成績とは別枠だし、やれやれよ」
私がそう漏らすと、ガイが「よーし、今度こそ俺が上位に入るっす!」とやる気満々。
ただ、アレクシスが「いや、実技なら俺も闇魔法研究が生きるし、殿下も剣技がある。アニーも聖女力が評価されるだろう…」とクールに分析している。
私だってもちろん光魔法で上位を狙えるはずなので、再び“クラスメイトたちの期待”を背に受ける形。
今や私に対する“悪役令嬢の嫉妬”なんて微塵もなく、むしろ「セレスティア様またトップ付近でしょうね…」と好意的に言われている始末だ。
(これじゃあ悪役イベントは起きようがないわね……いつになったら誰かが私を断罪してくれるのよ?)
と苦笑するが、今さらそんな展開を望む人はいない。殿下すら心が折れかけているのだから。
アニーは隣で「実技テストは苦手かと思ったけど、最近は聖女力を買われて評価されそうで嬉しいような恥ずかしいような……」と照れている。
光魔法を扱う私やアニーが実技試験で注目されるのは必然だろう。
取り巻き令嬢ズは「セレスティア様、ここでこそ“高笑いの圧”を発揮してみてはいかがです? 悪役スタイルを久々に…」などと余計な提案をしてくるが、そんなことをしても誰も“断罪”なんてしないし、むしろ「また面白いパフォーマンス」
くらいで受け取られるのがオチ。
「いまさら演技じみた悪役ムーブをしても、誰も引っかからないもの……」と私は溜め息。レオナルトが「ですよね!」と笑って合意するのだから、まあ今は仕方ない。
結局、私たちは闇勢力と戦いになるかもしれない状況でも、学園の特別実技テストに向けてそれなりの準備をしている。何しろ出席しなければ留年の可能性もあり、学園生活が終われば国防どころか自分の立場が不安定になりかねないからだ。
「闇王が出る前に、私は自分の実力を教師たちにも示しておきたい。教会に行く前に、学内評価が高いほうが動きやすいし……」
と心で考え、私は日々地道な訓練を続ける。
一方、リヒト殿下は「どうにかして俺も見せ場を…」と息巻くが、「セレスティアに先を越される」に100ガイア(学園内の賭け?)なんて冗談がクラスで交わされるほど、もう殿下の逆転は難しいと思われていた。
そんな中、ガイやアレクシス、アニー、それに殿下までもが「練習試合」みたいな形で模擬戦を仕掛けてくることが増えた。特別実技テストの前に実戦慣れしておきたいというわけだ。
例えばガイと剣を交えながら私が光の防御壁を展開し、そこにアニーが回復魔法を差し込み、アレクシスが闇拘束を加えて殿下がフィニッシュの剣撃を入れる……など、まるでパーティ連携の訓練になっているのだから、教師たちも「おお、素晴らしい連携だ!」と感心している。
もはや“婚約破棄”など言い出す暇がないほど、私たち転生組は強い結束を育みつつあった。悪役令嬢の孤立イベント? そんなものは遥か昔に消え去っている。
しかし、それでいて闇勢力の小競り合いは一向に止まらない。王都で目撃された黒ローブの集団や、時折発生する魔物が、私たちの不安を煽り続けている。
「このまま夏休みに突入して、実技テストが終わったらみんな散り散りに帰省する。そこで敵に一網打尽にされないか心配……」とアニーが怖がるのも無理はない。
私が「もし本当に大規模儀式を起こすなら、学園よりも王宮や封印迷宮のほうが危険かもしれないし……私たちは褒章式や教会参りで王都に残る予定だから、その間に事件が起こるかも」と言えば、ガイとレオナルトが「絶対に姉上を守る!」と意気込む。
殿下も苦い顔で「父上がもう少し早く非常事態宣言を出してくれればいいんだが、政局の都合か慎重すぎるんだ。……こうなったら、いざとなれば俺が王太子権限で動かすしかない」
と腹をくくっているようだ。
(私は私で、悪役令嬢なんてイメージを跳ねのけるだけじゃなく、国の平和を守る責務まで背負わされそう。前世でただのゲームと思っていたこれが、こんなにリアルで巨大な運命になるとは……)
そして迎えた特別実技テストの当日。
予想通り、私は光魔法で安定した高得点を叩き出し、アニーが聖女力の緻密な操作で大絶賛を浴び、アレクシスは闇の封印術で見事に仕留め、ガイは剣技、殿下も剣と基礎魔法で華麗な動きを見せた。
結果発表はまだ先だが、おそらくまた私かアニーが上位だろう。
周囲は「セレスティア様、本当に凄い。悪役令嬢なんて噂が信じられない!」と例のごとく褒めちぎり、私はもう慣れた苦笑いを浮かべるしかない。
「破滅フラグなんてまったく立たないわよね……」と取り巻きに呟くと、
「ええ、もう完全に“悪役転生”から“最強ヒロイン転生”に切り替わってますわ!」とあっさり返される。
実技テスト後、殿下がまた少しだけ
「せっかく俺も活躍したのに、結局はセレスティアが先に光魔法で全体をサポートしてしまうから……」とグチるが、取り巻きが「殿下、もう破棄は無理ですわよ?」と断言。
殿下自身も「……だよな」と納得した様子だった。
こうして実技テストも無難に終了し、いよいよ学園は夏休みへ。私はアニーとともに教会へ向かう準備を始める。ガイやアレクシス、殿下、レオナルトは別々に王都での巡回や封印迷宮の点検に携わり、闇勢力の出方を警戒する形だ。
「これで2年生最後の試験が終わったわけね。でも私、結局一度も“悪役令嬢”らしいことができなかった…」と心中複雑なまま、教室を見渡す。
もちろん破滅フラグを避けられたのは嬉しい。それどころか国を救う光として君臨する勢いだ。しかし、その先には“闇の王との対決”という巨大な壁が待っている。
(婚約破棄? もう数え切れないくらい失敗してるし、そもそも殿下が本気で私を悪と見なしていないんだから、あり得ないわよね。)
私が何とも言えない感慨に浸っていると、義弟レオナルトが「姉上、用事は終わりました? そろそろ帰りましょう!」と声をかける。ああ、こんな日常がいつまで続くのか分からないが、今はまだ守られている。
破滅フラグのかわりに“国崩壊フラグ”を消すため、私は光魔法の訓練を続け、教会での調査もバッチリこなしてやるつもりだ。闇の王なんて、私が全力で迎え撃ってやる……と、心に決めるのだった。
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