57話 レオナルト『お姉さまの破滅どころか、国崩壊かも…』と大慌てで、みんな複雑ですわ!
期末後の補習期間を終え、学園は完全に夏休みに突入する直前。そんなある日、義弟レオナルトが真っ青な顔をして私のもとへ駆け込んできた。
「姉上、どうしましょう……“破滅”とかいうレベルじゃない噂を聞きました! もしかして国が崩壊するかもしれないって……」
私はぎょっとなる。「国が崩壊って、また大げさな…どこからそんな話を?」
するとレオナルトは息を切らしながら説明する。闇魔導書の噂を追っている騎士団員が、
「黒ローブの集会らしきものを目撃し、そこで“この世界を闇に沈める”なんて言葉を聞いた」と報告したのだとか。
「これまでは局所的な魔物襲撃ばかりだったけど、もし本当に闇の王を召喚するなら、国自体が滅びる可能性が高いって。……姉上が破滅どころじゃありません!」
れを聞いて私も慌ただしく情報を集め始め.
結果、王都の一部では「闇の王が来れば世界が終わる」なんて恐慌じみた噂すら囁かれ始めていると判明した。
私は深呼吸し、「分かったわ。これ、騎士団や殿下も既に把握してるわよね?」とレオナルトに問いかける。すると彼は「あ、はい……殿下やガイ、アレクシスとも共有して、どう動くか協議中です」とうなずく。
さっそく私もその会議に顔を出すと、殿下が険しい顔で言う。
「俺の父上や側近の間でも、“闇の王がまもなく顕現するかもしれない”とささやかれはじめた。国崩壊、つまりゲーム的にはバッドエンド以上の最悪があり得るってことだ……」
取り巻き令嬢ズが「そそそ、そんな、悪役令嬢の破滅より国崩壊なんて…比べ物になりませんわ!」と震える。
まったくもってその通りだ。私が処刑されるだけならまだしも、国そのものが暗黒に飲まれる可能性があるなんて、想像するだけで寒気がする。
ガイは怒りを込めて拳を握る。「こんな悪質な連中、許せないッスね! 俺たちで止めましょう、セレスティアさん!」
「ええ、当然。みんなで必ず阻止するわ。」
アレクシスも腕を組み、「俺も多少は闇魔法を扱えるが、相手は規模が違うだろうな。ここは光と聖女力、そして王家の権限をフルに使わないと勝てない」と認めている。
そしてレオナルトは何度も「姉上を破滅から救うはずが、こんな巨大な破滅(国崩壊)が迫るなんて!」と嘆く。私が「私が破滅しないどころか、国が破滅するかもって話になってるんだから、もう婚約破棄とか笑い話でしょう?」と返せば、殿下が顔を赤らめて下を向く。
「ぐぬぬ……俺だって本当に破棄したいわけじゃ……いや、もう、どうでもいい……」殿下の声は弱々しく、もはや完全に婚約破棄計画が無意味になったのを自覚しているようだ。
アニーが神妙な声で言う。「国崩壊なんて言葉が出るほど、大きな闇の儀式が近いのかもしれません。」
(セレスティアさん、以前お見せした開発資料にも“世界が闇に覆われるエンド”が書かれてましたよね……もし真に発動したら、この世界はゲームのバッドエンドよりもっと悲惨になるはずです)
私はうなずく。「そう……それは絶対に止めなきゃいけない。私たち転生者が学園でのんびりしてるうちに、闇の王が現れたら手遅れかも。いま王宮と連携して、可能な限り手を打つ必要があるわね」
レオナルトが私の腕をぎゅっと掴んで泣きそうな顔をする。「姉上、絶対に国崩壊なんてさせません! 僕らが必ず食い止めます! だから姉上も無理しないで……」
彼の一途な様子に心が痛むが、私だって無策で突っ込むつもりはない。
「大丈夫よ。私が倒れるのが一番まずいって自覚してるから、ここはみんなで役割分担しましょう。私の光魔法が主力になる場面もあるかもしれないけれど、アニーや殿下、アレクシス、ガイがいれば十分協力できるはず」
それでも不安は尽きない。今は小規模な魔物が散発的に出る程度だが、真犯人が本気で“国崩壊”を狙って動き出すのは時間の問題だ。夏休みになれば生徒は学園から離れるし、王都も人の出入りが増える。騎士団ですら全方位を守りきれるか怪しい。
ガイが叫ぶ。「くっそ、俺たちで見回りやっても相手が姿を隠してちゃな……いい加減、これが最後の嫌がらせならとっとと仕掛けてきてほしいっすよね!」
殿下は溜息まじりに「仕掛けてきたらきたで危険だけどな……。しかしそのときこそ俺たちが総力で叩き潰すチャンスだ。セレスティア、頼むぞ?」
と私を見つめる。
私は苦笑いしながら「分かってるわ。もう私、悪役でも何でもないし、闇に屈する気もない。絶対にこの世界を護るもの」と宣言した。
取り巻き令嬢ズやクラスメイトの一部は、私たちがそこまで深刻に構えている姿を見て「
なにやら本格的に戦争のようですね……?」
「セレスティア様がいれば大丈夫!」
と無責任な期待を寄せてくるが、正直プレッシャーも重い。
しかし、もし私が悪役ムーブを演じる余地などあるはずもないし、破滅フラグを気にするのも馬鹿らしい。
「国崩壊かもって言われたら、婚約破棄どころじゃないものね」と取り巻きに零すと、彼女たちは「ですよね」と苦笑して頷く。誰ももう“断罪”など気にしていない。
アレクシスがボソリと呟く。「……俺だって昔は闇魔法で国を牛耳りたいとか思ってたが、本当の闇王が復活するなら洒落にならん。俺も闇側から協力して封印を助けるしかないな」
その言葉はかすかに震えていて、彼の心中の葛藤をうかがわせる。でも今は誰一人として余計な衝突は望んでいない。みんなで力を合わせて国崩壊を防ぐ――それが最優先だ。
レオナルトがふと胸に手を当てて言う。
「姉上が破滅どころか、このまま王太子妃としてみんなから崇められる未来が来るかもしれませんね! BL脳的には複雑ですが、姉上の幸せが一番です!」
「もう、そんなこと気にしてる場合じゃないでしょう……」
と私は半笑いで返しつつも、確かに破滅ルートなんて遠い昔の話になっていると再認識する。
「闇の王との決戦が終わったら、いよいよ本当に私が王妃になるかどうかの話になるのかしら……」
そう頭の隅で思いながら、しかし今はそれも後回しだ。国崩壊が近いなんて話を放置できない。
こうして、レオナルトの大慌て報告によって改めて危機意識を強めた私たち。破滅する可能性があるとすれば、私個人ではなく国全体だという現実が、さらに鮮明になった。
「この夏……絶対に勝負が来るわ」
アニーが背筋を伸ばして決意し、私も
「ええ、いよいよ最終ルートに突入ね」
と覚悟を固める。もし敵がゲームのラスボスなら、私が“光のヒロイン”として戦わないといけない。前世の悪役令嬢という肩書きは完全に消滅し、今や私はこの世界を守る運命を背負う存在なのだ。
学園での婚約破棄騒ぎが三度あっても失敗に終わった今、殿下すらようやく腹を括り始めているらしい。私も“破滅フラグ”なんて言葉を思い出すたび、「国が破滅するよりマシでしょ」と心で呟き、自分を奮い立たせる。
次なる一手をどう打つか――敵がどこで仕掛けてくるか――全く読めない不安に胸を焦がしながらも、私たちは“自分ができること”を確実に準備していこうと歩み出すのだった。
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