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55話  アレクシスが“闇魔法の深部”に手を出すも失敗、私たちの夏休み前が慌ただしくなってきましたわ

期末試験が終わり、補習期間も残りわずかという頃。私たちが闇勢力への対策を話し合っていると、アレクシスから妙な打ち明け話があった。


 「実は……俺、闇魔導書の断片を取り寄せて、“深い呪術”を試そうとしたんだが、どうも失敗してな。部屋が煙だらけになるだけで成果なし。それに、誰かに見られた気がして……」


彼がそう口にするのは渋々という雰囲気。以前からアレクシスは闇魔法を研究しており、自身の野心もあったはずだけれど、学園祭で痛い目を見て以来、少しずつ私たちと協力するようになっている。


 「それ、本当に危ないのでは?」と私が呆れつつ尋ねると、アレクシスは眉をひそめて続ける。

 「うるさい。あらかじめ言っておくが、俺が国ごと乗っ取ろうとする気はもうない……。


実際、闇の深部に触れようとしても何か“強大すぎる存在”が邪魔をするようで、俺じゃ太刀打ちできん。むしろ別の者が、もっと危険な形で闇を使っている可能性が高い。そいつを探らなきゃならん」


 私たちはその話を聞き、全員が表情をこわばらせた。王都各所で魔物騒ぎが相次ぎ、黒ローブの魔術師が目撃される昨今、アレクシスの試みなど可愛いものかもしれない。けれど、もし“真の闇の所有者”が更に深い呪術を扱っているなら、それこそ大惨事を引き起こす危険がある。


 「……期末も終わって、もうすぐ夏休みよね。きっと闇勢力が大きく動き出すなら、その前後が一番怪しい。去年の宝物庫盗難も、まさに夏休み直前だったし」


 私がそう言うと、リヒト殿下が沈んだ顔で頷く。

 「ああ、俺も父上(国王)に何度も警告してるが、真犯人の所在がつかめず手をこまねいている状態だ。下手に王都全体を戒厳令にしても、闇魔導書が隠れているだけなら成果は薄いし……。どうにも国中が焦ってるんだ」


 取り巻き令嬢ズは「セレスティア様、ここはもう悪役どころか本気で国を護る英雄ですわね!」と少し楽しそうに言うが、私としては内心穏やかではいられない。


私がヒロイン扱いされるほど危機的状況だし、アレクシスも闇の深部に失敗して煙まみれになる程度の行動しかできない――つまり、真の黒幕はかなりの使い手かもしれない。


そしてガイが、やや興奮気味に声を張り上げる。

 「へへ、だったら早いとこその黒幕とやらを探しだして、俺が一発ぶっ倒せばいいんじゃねーっすか? 最近騎士科でも“闇に対抗する実践訓練”が盛んだし、俺も腕が鳴るし!」


 その脳筋ぶりは正直頼もしいけれど、闇魔導書をまともに使いこなす相手が相手なら、ガイ一人の力では厳しいかもしれない。


 私が苦笑交じりに「皆で協力しなきゃ危険よ。光の力だけでも心許ないし、アニーの聖女力、リヒト殿下の王家権限、アレクシスの知識、ガイの武力……全部合わせても、相手の正体が分からなければ動きづらいわ」と言うと、全員が静かに頷く。


しかし、そこへ義弟レオナルトが意気揚々と手を挙げてこう言った。


 「姉上、闇魔導書を扱う真犯人がどんな手口で動いているか、地道に探ってみませんか? 前に僕が夜の王都を偵察したとき、何度か黒ローブらしい人物を見かけてます。そのタイミングを狙って姉上を呼べば、光魔法で捕捉できるかもしれませんよ!」


 レオナルトは腐女子転生なはずが、今ではすっかり有能な弟として策を練る姿が板についている。アレクシスが「お前、妙に勘が鋭いからな……共に巡回するのも悪くないか」と渋々同意。


 そんな風に自警団的な話し合いを進めていると、私の頭の片隅で“期末後に起きる恒例の行事”を思い出す。そう、褒章式だ。


 成績上位五名が国王に謁見し、表彰されるというイベント。アニーが1位、私が2位、アレクシス3位、リヒト殿下4位、ガイ5位という並びで呼ばれる。


 「ねえ、もしかして表彰式の場に闇勢力が襲撃したりしないかしら……?」

 私がそう言えば、リヒト殿下がうなずく。

 「可能性はあるな。国王も褒章式に顔を出すし、そこに闇魔導書の黒幕が紛れ込めば、大混乱を起こせるだろうし……。俺も警戒はしてるけど、逆に言えばそこがチャンスかもしれない。あちらが仕掛けてくれば、一網打尽の可能性もあるしな」


 どちらにせよ、夏休み前後に事件が起きる確率は高い。そのとき私たちはどう動くか――もう共通認識は固まっている。私は光魔法、アニーは聖女支援、ガイが前衛、アレクシスが闇探知と封印補助、殿下が国をまとめ、レオナルトが私の護衛をしつつ機転を利かせる。


 「まるでゲームのパーティみたいね……私が悪役令嬢枠なのに、何でこうなってるのかしら?」と苦笑すれば、取り巻きが「もう悪役じゃないですわ!」と断言して笑う。


 その後、試験後の補習期間が終わりに近づくと、学園にも少しだけ静かな空気が戻った。補習を受ける子も減り、校内は閑散とし始める。私やアニー、殿下たちはもう登校義務がなく、実質的には夏休みに突入しかけているようなもの。


 だが、そんなときにリヒト殿下から「俺……もしかしてこの2年のうちに断罪イベントやれないなら、やっぱり無理なんだろうな。どうしよう……」なんて今さら打ち明けられ、私は脱力。


 「殿下、いまさら何を言ってるの。もう国民みんなが私とあなたの婚約を認めてる状態だし、私自身が破滅しない以上、断罪なんて成立しないでしょう?」


 殿下は「わかってるさ……わかってるけど、前世ゲーマーとしては“悪役令嬢断罪”を経験したかったんだよ……」と未練がましい。


 取り巻き令嬢ズやガイ、レオナルトも口を揃えて「そんな余裕ないですよ、闇勢力どうするんです?」とツッコミ、殿下は「うぅ……」と黙り込む。もはや完全に形骸化した婚約破棄話は、空しいだけだ。


 こうして、アレクシスの“闇魔法深部への挑戦”が空振りに終わり、私たちがさらに闇への警戒を強めるなか、王都の魔物騒ぎは小出しのまま続く。国王は褒章式の日程をすでに決めており、私とアニー、アレクシス、ガイ、殿下は呼び出しを待つだけ。


 「もし闇の勢力が褒章式を狙ってくるなら、あえて私たちが目立つのも手ね。罠を張っておけば、あちらも現れるかもしれないし」

 アレクシスは腕を組み、「うむ、同感だ。大規模召喚をするには目立つ場所が最適だからな。夏休み前の褒章式は奴らにとって絶好の混乱ポイント。そこで我々が迎え撃つ」と、何とも頼もしい発言をする。


 私は微妙に緊張しながらもうなずく。魔王が出現するかどうかは分からないが、少なくとも“何か”が起こるフラグは立ちまくりだ。破滅フラグの代わりに、国全体を巻き込む闇のフラグが燃えている――その感触が嫌というほど胸をざわつかせる。


 (結局、私の破滅は消え失せて、国の破滅が視野に入ってる。ならば私は私で、これを全力で防がなきゃ……後悔のないように)


 夏休みまで残りわずか。アニーは教会の準備を進め、ガイやアレクシスは王都の巡回と闇探知を続け、殿下は国王や騎士団との連携に忙殺される。レオナルトや取り巻き令嬢ズも私のサポートに奔走し、私は光魔法の練習を怠らない。


 リヒト殿下の“婚約破棄未遂”は、今回も闇騒動にかき消されて失敗。おそらく4度目があっても同じ結末だろう


――そんな空気が学園全体を包む。


 「はぁ……悪役どころか、私がいないと闇に対抗できない。いつの間にこんなに頼りにされる立場になったのかしら……」


 私は最後に小さくつぶやきながら、アニーたちと情報交換を続ける。**2年生後半が本格的に動くのは、褒章式あるいは夏休み中――そこで闇が牙をむくかもしれない。**私も覚悟だけはしておかなくてはならない。


 こうして、アレクシスの闇魔法失敗報告が引き金となり、私たちが闇勢力への警戒をさらに強めた第55話が閉じる。断罪や破滅フラグなど完全に遠のき、私たちはただ“夏休み前に動くであろう魔王系黒幕”を待ち構える。



その日までに力を溜め、互いの連携を固めるほか道はない。私は悪役令嬢なんて呼ばれ方は忘れ、ひたすら光の魔力を研鑽し続けるのだった。

毎日投稿頑張ってますΣ੧(❛□❛✿)

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