53話 闇勢力が小規模襲撃→ セレスティアまた活躍、王都で“救世主”扱い! リヒトの見せ場がない…
「いやー、また魔物襲撃……この国、本当に大丈夫かしら……?」
私、セレスティア・ノイエンドルフは夏休み前の期末試験終了後も、連日のように発生する小規模魔物騒ぎへ駆り出されていた。
王都のあちこちで闇の残滓が観測され、騎士団や自警団が呼ばれて現場を整理するのだが、そこに私の光魔法が必要になるケースも多い。
本来なら王太子リヒト殿下や騎士科のガイ、アレクシスらが率先して活躍してもいいはずなのに、なぜかタイミング的に「私が先に駆けつける」「私が最後の一撃で魔物を倒す」展開が多い。
義弟レオナルトが常に私に付き添い、危険がないよう先手を打ってくれるおかげもあって、魔物退治の主役になりがちだ。
「姉上、今回もさすがでした! さっきのグリフォン型魔物も光の槍で一撃でしたね!」
「そ、そう? まあ、少し手こずったけどね……」
周りのモブが「すごい……セレスティア様がまた街を救った……」と呆然と見つめる姿を目にするたび、私は若干の気恥ずかしさを感じる。しかしもう慣れてしまった部分もある。
(最初は悪役令嬢として罵られて破滅するはずが、今や街の救世主扱い。転生人生って分からないものね……)
一方、王太子リヒト殿下はと言うと、近衛騎士を引き連れ巡回しているものの、私が先に片付けてしまうため、駆けつけた頃には“もう終わってる”というケースが相次ぐ。
そのたびに殿下は「くそ……なんでいつもセレスティアが先に! 俺が主役になれないじゃないか!」と苛立つ。
取り巻き令嬢ズは「殿下こそお疲れですわ。セレスティア様を断罪しようとするから余計にタイミングが合わないのでは?」と苦笑し、殿下は「何だと……!?」と拗ねる。
(まあ、私が強くなったせいで殿下の出番が奪われるのは仕方ないわよね……)
魔物絡みの事件が増えれば増えるほど、私が光魔法で被害を食い止めるニュースが市井に広まり、大衆紙や噂が「セレスティア様マジすごい!」と盛り上がる始末。
王太子との婚約についても「むしろ破棄なんてとんでもない」「セレスティアこそ未来の女王に相応しい」と言われ、殿下の断罪計画は完全に冷めきっている。
私が「あの……私は別にヒーローごっこをしたいわけじゃないのに」と複雑な気持ちを抱いていると、レオナルトやガイは「姉上、逆にこれで闇勢力も手を出しづらくなるかも! いいことですよ!」と前向き。
(いや、相手は魔王系だから、私が有名になっても遠慮せず襲ってくるんじゃ……)
実際、王都の地下かどこかで黒ローブの人物が不気味に笑っている
——そんな目撃情報が少しだけ騎士団の耳に入っている。
それを聞く限り、敵はまだ本気を出していないらしい。
「どうせ学園祭や街での騒ぎは“試し”に過ぎない。近々、大規模な儀式を起こしてやる……」そんな声を誰かが聞いたとか聞かなかったとか、曖昧な噂だ。
アレクシスは「やっぱり連中は魔王の完全復活を狙ってるな……。
セレスティアが目障りだから、今は嫌がらせを小出しにして消耗させようとしているんだろうか?」と推測する。
私としては、「小出しにされても体力はそれほど減らないし、焦らしてる間にこっちも準備できる」と楽観する面もあるが……果たして相手が素直にこちらの都合を待ってくれるだろうか。
(ああ、破滅フラグなんて笑い話。いま私が破滅どころか闇勢力が破滅する可能性のほうが高そうね……と思いたいけど油断禁物。)
こんなふうに連日私が先に魔物を討伐してしまうため、一般市民の間では「王太子殿下よりセレスティア様のほうが防衛で活躍してない?」という声が出始めた。
実際、リヒト殿下も途中参加が多く、大きな見せ場がなく凹み気味。一部の民衆が「王太子はセレスティア様のサポート役?」と揶揄し始め、殿下のプライドはボロボロだという噂……。
(殿下、ほんとかわいそう。自業自得かもしれないけど、婚約破棄なんて言ってる場合じゃないわね。)
周囲から持ち上げられるほど、「本当にこのまま私に国を救う力があるの?」という不安が募る。
アニーがその点を察し、「セレスティアさん、あなた一人で何とかしようとしないで……私だって聖女力があるし、リヒト殿下にも王家の兵がいます。アレクシスの闇研究やガイの物理戦闘力も頼りになるんだから!」と励ましてくれる。
「ええ、ありがとう。そうね、みんなで乗り越えるしかないわね……。」
悪役令嬢とかヒロインとか言ってられない。とにかく協力し合うしか道がないのだ。
リヒト殿下が「俺も前線で目立ちたい!」と騎士科に掛け合って**“殿下特別小隊”**みたいなのを作り、夜間巡回を主導しようとするが、結局私やガイが速攻で魔物を倒してしまい、またも殿下の出番が少ない。
「くっ……なんでいつもこうなるんだ! おのれセレスティア……いや、ありがとうセレスティア……うーん、複雑……!」
殿下が頭を抱える姿はもはや学園の風物詩と化していて、取り巻きやモブ生徒が笑いながら「殿下、がんばってー!」と適当な声援を送るだけ。
私が「あの人、意外と素直に『あなたが好き』って言えばいいのに……」と思いつつ、闇勢力への警戒を続けていると、ある日ついに中規模襲撃が起きてしまう。
それは夜のうちに数十匹の魔物が農村地帯を襲ったという報せで、私たち自警団&騎士団が急行。
到着してみると、そこそこ大きめの魔獣も混じっており、住民が必死に避難していた。ガイが剣術で前線を切り開き、私は光魔法で範囲攻撃を放って一気に弱体化。仕上げに騎士団が総がかりで斬り伏せる。
短時間のうちに被害を最小限に食い止められたのはよかったが、こんな規模の襲撃が今後さらに大きくなる可能性を感じざるを得ない。
今回も私とガイが目立つ形になり、王都や農村で「セレスティア様たちこそ本当の守護者!」と感謝が殺到。リヒト殿下は途中合流したが、後片づけに回っただけで終わったらしい。
ニュースや噂を聞いた民衆がますます「セレスティア様、国の光! 王太子よりすごいんじゃ?」と勘違いを加速させ、殿下がさらにひねくれるという悪循環……。
私が「ごめんね、殿下。私だって好きで先に魔物を倒してるわけじゃないのよ」と謝ろうとすると、殿下は「いや、もういい……ありがとう……俺はもう諦めてる……」と肩を落とす。
(こんな形で殿下と私の立場が逆転するなんて、前世のゲーム知識からは想像もできないわね)
マント姿の黒ローブ集団が闇夜に佇むイメージが浮かぶ。学園祭、街中の散発襲撃、今回の農村襲撃……すべて**“本番”への準備かもしれない。
これ以上、私たちが先手を打たないと、いずれ魔王復活という大惨事が起こるだろう。
アレクシスは「そろそろ本格的にアジト捜索をかけるべきだ。俺の闇感知も限界があるが、レオナルトやガイが協力すれば可能性はある」と提案し、殿下も「よし、父上に掛け合おう」と意気込む。
私やアニーは、夏休みに入ったら教会の古文書を探る**計画を進めることに。なんとしても対抗手段を見つけたい。
ここで取り巻きが「セレスティア様、殿下がまだ“婚約破棄”を捨てきれていないそうですよ? 本当に大丈夫ですか?」と茶化すが、私は肩をすくめる。
「もはやそんな話、誰も真面目に受け取らないもの。私自身が殿下との結婚をどうこう考える前に、闇勢力の問題を片付けなきゃ……。」
周囲も「それはそうですね」と頷き、婚約破棄の話は自然にフェードアウト。破滅フラグはいまや関係なし。
夜、部屋で一人になって考える。
(破滅しないのは嬉しいけど、本当に何が起きるか分からない。夏休みに突入したら、学園が休みで皆が散り散り……その隙を突いて魔王が顕現したりしたら、どうする?)
不安は尽きないが、もう前に進むしかない。私を慕う多くの仲間がいるし、闇がこのまま増殖すれば国全体が破滅する——それこそ“婚約破棄どころじゃない大災害”になりかねない。
「次は絶対、黒幕の尻尾を掴んでやる……。ここまで来たら徹底的にやるわよ……!」
やる気を奮い立たせながら、私は決意を新たにする。悪役令嬢どころか国の救世主フラグを感じながら、この夜を静かに過ごすのだった。
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