51話 アニーが“隠しラスボスは魔王系キャラ”と推測…私、破滅回避どころか大ボス戦のキーパーソンですの?
「セレスティアさん、実は私……確信があるんです。闇の王って、やっぱり魔王系キャラですよ!」
……そんな衝撃的な言葉を放ったのは、他でもない本来のヒロイン・アニー。
私とアニーが放課後の自習室で2人きりになれた機会を見計らい、彼女は前世の開発スタッフとしての仮説を口にする。
「魔王系キャラ……ね。ゲームの終盤に現れて国を滅ぼしかねない、真のラスボスってことかしら?」
「はい。もしかすると、大昔に封印された“闇の王”の転生か、あるいは闇魔導書の力で復活する設定……。いずれにしても、ただの闇魔法使いとは桁が違う存在になるはずです。」
アニーは小さく身震いする。「ゲームならプレイヤーがレベル上げしてから挑むでしょ? でも私たちにはそんな時間が……現実だと、いつ襲ってくるかも分からないんです。」
私は深く頷く。封印迷宮の亀裂や王都での黒ローブ騒動など、すべて“魔王”降臨の布石かもしれない。
(破滅フラグ……なんて生易しい話じゃない。国そのものが闇に支配されれば、私たち全部滅亡よ。ここで勝つにはどうすればいい?)
アニーが神妙な面持ちで続ける。「前世で聞いた話だと、最終的に“王家の光”と“聖女の力”を合わせて魔王を封印する予定だったルートがあったんです。でも、そこに“悪役令嬢”が加わり、3人協力で……みたいな未確定の情報もあって。」
「3人……王太子、聖女、そして悪役令嬢?」
「そうです。悪役令嬢が実は光属性持ちで、本当のヒロイン級の活躍をする裏ルート……。ただ完成版がどうなったのかは分からないまま、私がクビになったんです。」
私は思わず苦笑。「そう……やっぱり私が重要ってわけね。リヒト殿下だけでは闇を完全に封印できないかもしれないし、アニーも聖女力で支援はできても決定打が足りない……ってことかしら。」
アニーは少し申し訳なさそうに目を伏せる。「ええ。私が出来る限り力を貸しますけど、主力はどうしてもあなたになる可能性が高いんです……。ごめんなさい、負担を押し付けるみたいで。」
私は首を振る。「ううん、気にしないで。もう私、覚悟してるから。悪役令嬢ルートは無くなったし、今は“光の力”を鍛えて闇勢力を止めるしかないって思ってる。」
(ああ、初めは破滅フラグ回避が目標だったのに、いつの間にか魔王との最終決戦の主役枠……人生分からないものね。でも、守るべき人たちがいるなら怖がっていられないわ。)
ほどなくしてリヒト殿下やガイ、アレクシスらも合流し、アニーから話の概要を聞く。みんな最初は驚きを隠せないが、次第に受け入れる空気になる。
リヒト殿下:「最初はお前を断罪して“ハッピーエンド”にしたかったのに、もう完全にお前がいないと国が滅ぶレベルか……仕方ない。」
ガイ:「俺も闇の王相手に戦うとき、光の援護があれば何とかなるかも! 逆に言うと、セレスティアさんなしじゃキツいってことっすね!」
アレクシス:「フン……俺の闇魔法だけじゃ対抗できないのは分かってる。あくまで俺は補助に回るしかないのか。癪だが、認めるしかないな。」
私が「いや、みんなで一緒に力を合わせて……。一人じゃ無理に決まってるんだから。」と焦ると、彼らは口々に「分かってる、当たり前だ!」と笑う。
こうして私が“魔王封印”のキーパーソンになり、皆がそれをサポートするという体制が、ほぼ確定路線になりつつあった。
(もう断罪や破滅フラグは完全に無関係ね。闇の王がラスボスっていうなら、もはやバトルファンタジーの最終章に突入した気分……大丈夫かしら私?)
「闇魔導書の真犯人は、複雑な儀式を経て“魔王”を呼び起こすはずだ。……学園祭のときにも小型召喚で干渉されたが、あれは試金石だろうな。」
アレクシスが冷静に解説する。自分も闇魔法に通じているだけに、ある程度の筋道が分かるらしい。
「つまり、まだ本格的な魔王召喚はしてない。だが、下準備は進んでいる……。我々が動くなら、早めに探知して儀式を止めるしかない。召喚されたら、もう大規模な戦争になるかもな。」
するとガイが燃え上がる。「よーし! なら探して叩き潰すだけっしょ! 今度こそ俺たちが見張りをしっかりやって、黒幕を見つけますよ!」
リヒト殿下は苦い顔で頷く。「まあ、そう簡単に見つかればいいんだが……。王宮も捜査中だが情報不足だ。」
私は少し考え込み、「夏休みに突入する前に、何らかの事件が起きるかもしれない……。私たちも自警を続けながら、見つけ次第対応するしかないわね。」
アニーが不安げに手を握りしめる。「はい、頑張りましょう……。私は聖女力で支援しかできないけど、セレスティアさんこそ大変ですよね?」
「ええ、でもやるわ。自分が倒れるまで頑張る気はないけど、放置すれば国が滅びる可能性があるなら……もう覚悟するしかない。」
期末が終わり、成績発表を待つ数日の間にも、王都で小規模な魔物騒ぎが頻発する。私やガイ、騎士団が連日駆けつけ、小競り合いのような状況があちこちで続いていた。
幸い、私たちが速やかに対処できていて大事には至っていないが、これだけ繰り返されると明らかに闇勢力が実験か挑発をしているのが伝わる。
「もういい加減、姿を見せなさいよ……。チクチク嫌がらせされるほうが精神的にきついわ。」
私が苛立ちを隠せないでいると、レオナルトが「姉上、落ち着いて。きっと黒幕は隙を伺っているんです。油断禁物ですよ!」と諭してくれる。
そんな落ち着かない日々の合間に、ようやく学園で2年生前期の成績が公式に発表された。
結果は、1位アニー、2位セレスティア(私)、3位アレクシス、4位リヒト殿下、5位ガイ……という順位になったらしい。
「惜しい……アニーにほんの僅差で負けちゃったわね、私。」
とはいえ2位は十分に高成績。アニーはさすがに「ごめんなさい、でもセレスティアさんも私とほぼ同点でした!」と恐縮しているが、私は「いいのよ、あなたが1位にふさわしいわ」と笑う。
取り巻き令嬢ズは「2位でも十分凄いですよ、セレスティア様!」と拍手し、周囲も「あの光の英雄が勉強までできるなんて……」と絶賛。
(もうまた“悪役令嬢(笑)”扱いか……この煽りから遠ざかる感じ、慣れたけど微妙に恥ずかしいわ。)
リヒト殿下は4位だが、「上位5名は国王から褒章を与えられる」という特典にぎりぎり入った形。これにより、婚約破棄を宣言しづらい空気がさらに強まる。
「くそ……褒章式でセレスティアと並ぶなんて……。ますます国中に『次期王妃として安泰』と思われるじゃないか……。」
殿下が廊下の隅で頭を抱えているのを目撃した取り巻きが、笑いを堪えきれず去っていく。もう誰も殿下の破棄願望を本気で取り合わない感じだ。
(本当にどうしようもないわね……。私もそこまで婚約に固執するつもりはないけど、今さら破棄したら国民が納得しないし、殿下が叩かれるだけだもの。)
こうして2年生前期が正式に終了し、成績順位も確定。周囲からは「セレスティア様、国王への褒章式でまた注目されますね!」と声をかけられつつ、私の胸には別の思いが渦巻いている。
(このまま何もしなければ、黒幕は夏休み中にも大規模に動きそう。ここで闇を断つ準備を急がないと……。)
アレクシスやガイ、リヒト殿下、アニー、レオナルトらも同じく「次こそ決戦かもしれない」と認識し始めているから、自然と緊張感が高まる。
私は改めて“自分が中心的役割”になる覚悟を固める。悪役令嬢の“破滅回避”ははるか昔にクリア済みなのだから、今は国の存亡をかけた闘いへ突入するのが定めだろう。
「夏休み突入前に、何としてでも一矢報いられれば……。闇勢力のアジトを見つけられたらいいけど。黒ローブの正体を突き止めなきゃ……!」
もはや私は自分で思う。“悪役”という肩書きは完全に無効化され、正統派ヒロインを通り越して“主人公”扱いにも近い立場になっている……。
それでも構わない。破滅フラグを超えた先、国崩壊フラグをへし折るには、私が動くしかないのだから。
毎日投稿頑張ってますΣ੧(❛□❛✿)
保存といいねお願いします……!




