05話 学園への道中で遭遇したのは、まさかの“ヒロイン”候補!?
ついに迎えた学園入学シーズン。
私、セレスティア・ノイエンドルフは、馬車で王都の中心街を抜け、クレリア魔法学園の門へ向かう——その途中だった。
ノイエンドルフ家の紋章入りの馬車はそこそこ目立つせいか、道ゆく人々が遠巻きにヒソヒソしているようにも見える。
「あれが王太子殿下の婚約者だって……」「悪役令嬢だって噂だけど……」とか、勝手なことを言われている気がして、なんとなく居心地が悪い。
(はぁ……初日からこんな感じか。まったく気が滅入るわ)
そう思っていたら、ふと窓の外に、何やら人だかりが見えた。どうやら道端で露店が並ぶ通りの一角で、若い女の子が片づけのようなことをしているみたい。
白っぽい髪を三つ編みにまとめていて、あまり裕福そうには見えない。おそらく平民か……。
「うーんと……お店の箱が重くて……」
彼女がそう呟きながらバランスを崩しかけた瞬間、私は思わず「危ないわよ!」と声を上げてしまった。
御者が馬車を止めてくれたので、私は急いで外に降りていく。
周囲の護衛役の騎士が「お嬢様、危険ですよ」と慌てるが、それよりも先に私は、その娘の荷物を受け止めてあげた。
「ありがとうございま……っ!?」
彼女は目を丸くしてこちらを見る。私も間近で顔を見て、その愛らしさに少し驚いてしまう。——大きな瞳と可憐な雰囲気、まるで絵に描いたような“ヒロイン顔”じゃない!?
「も、申し訳ありません……わたし、平民の身で、こんな大貴族の方に手助けしていただくなんて……!」
彼女はぺこぺこと頭を下げる。いくらなんでも卑屈すぎる態度だ。
「いえ、私が勝手に動いただけ。荷物は大丈夫?」
「は、はい……。あ、あの、もしかして……ノイエンドルフ侯爵家の……セレスティア様ですか?」
「そうだけど……あなたは?」
「わたし……名前はアニーといいます。えっと……聖女の力を持っているかもしれないと診断されて、今回、特待生として学園に入る予定で……」
——やっぱり!
聖女の力を持つ平民少女。これぞまさに、本来の“乙女ゲーム”でいうヒロイン枠じゃないの!?
私は内心で「ついに来たか!」と身構える。定番のイベントならば、悪役令嬢の私はこの娘に失礼極まりない嫌味を吐いたり、足を踏んだりする……とか聞いたことがある。
でも、やりたくない。そんなことしたら一発で破滅フラグが跳ね上がるかもしれない。
「あの、セレスティア様、ありがとうございます。わたし、どうお礼を言えばいいか……」
アニーはとにかく控えめな態度で、私に高貴な微笑みを求めているかのように上目づかい。
(うわぁ……もしこれが“ヒロインイベント”なら、私はここで彼女を見下し、侮蔑の言葉を浴びせる……のか? いや無理!)
私は咳払いしながら、なるべく高飛車にならないよう言葉を選ぶ。
「たいしたことはしてないわ。礼なんていいの。……その……あなたも学園に通うのなら、また会うでしょう」
「はい! わたしは平民出身ですけど、一生懸命がんばります!」
ぺこぺこ頭を下げるアニー。
(こんなに腰が低いヒロインなんて……ゲームでもそうそう見なかった気がするわ)
「と、とにかく怪我には気をつけてね。それじゃ、私は先を急ぐから」
言い捨てるように言葉を残し、私はそそくさと馬車に戻った。
護衛の騎士たちが「大丈夫ですか、お嬢様」と心配そうに声をかけるが、私は苦笑してごまかす。
「ああ、何てことないわ。……それにしてもあの子が学園へ……ね」
馬車が再び走り出してから、私はふと窓越しにアニーの背中を見やる。
ヒロイン然としているわりに、あんなに低姿勢だなんて拍子抜けする。それとも、まだ“天然ドジっ娘”としての醍醐味を見せる前なのかしら?
いずれにせよ、学園で会うのが少し不安。もし彼女が王太子リヒト殿下との恋愛ルートに突入したら、私はいよいよ“悪役”として何かしなきゃならないのか……?
(いや、私は破滅したくない。だから極力、アニーと揉め事は起こしたくないんだけど……。どうすればいいのかしら?)
もやもやした不安を抱えつつ、私の学園生活が始まろうとしていた。
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