47話 リヒト、ついに『婚約破棄しないか?』と直球発言→ 私は失笑するしかありませんわ!
そして迎えた期末試験初日の朝。
校舎に向かって歩いていると、突然リヒト殿下が私を呼び止める。「セレスティア、少し話せないか?」
「何よ急に……試験始まるわよ」
しかし殿下は落ち着かない様子で、「……悪い。どうしても今、言いたいことがあるんだ。来てくれ」と私を人目の少ない中庭へ連れていく。
(また何か面倒な相談かしら? 闇勢力の情報?)
殿下が深いため息をつきながら切り出す。「お前さ……最近は完全にヒロイン扱いされてるじゃないか。悪役令嬢の面影なんてない。これでも婚約破棄イベントを起こす余地はあるか?」
「……ないでしょ?」
呆れ顔の私に、殿下は「だよな……」と苦笑い。「けどさ、まだ諦めきれない俺もいるんだよ。転生したなら“ゲームの醍醐味”を味わいたいっていう夢が……」
「殿下、正直に言うけど。もう無理よ? 私が今さら何をやらかそうが、周囲は『セレスティア様なら仕方ない』とか『彼女が悪いはずがない』とか擁護してくれる空気だもの」
「うっ……それは分かってる。でも……じゃあどうする? このまま本当に俺と結婚するか?」
殿下がやけに真顔で問い詰めてくるものだから、私もドキッとしてしまう。
殿下は言葉を続ける。「ぶっちゃけ、俺はまだ“お前と結婚”というビジョンがあまりにリアルに想像できない。前世じゃただのオタクだし、王太子ルート自体がファンタジーだと思ってた。でもお前が“悪役”じゃないなら……逆に俺はどう振る舞えばいいか分からないんだ」
「それ、私に聞かれても困るわ……。悪役令嬢転生のはずだったけど現実はこうなったんだし、あなたの前世の夢とは違うじゃない」
「そう……だな。もうゲーム的に楽しむどころか、闇勢力が本気で国を狙ってるから、王太子としての責任も重い。……もしかして、婚約破棄してもっとフラフラ自由にやりたいって気持ちもあるんだけど……でもそうしたら“国民的人気のセレスティアを捨てる”って悪評がすごそうで躊躇するよ」
最後の殿下の言葉には私も苦笑。「そうね。今や私を捨てたら“殿下がバカ”と世間に叩かれるわ。国王にも怒られるんじゃない?」
「それは嫌だ……ああ、もうどうしたらいいんだ」
私は溜め息まじりに微笑み、「殿下、自分の気持ちに素直になりなさいよ。私を本当に嫌ってるなら、世間の反応を気にせず破棄すればいい。でもそうじゃないなら、なぜ悩むの?」
すると殿下は「え、いや……別に嫌ってるわけじゃなくて、(むしろ最近はお前のツンデレも可愛いと思ってるし、むしろ好き寄りかも……)」などと口ごもる。
(嫌われてないのは好都合ですわ)
「ねえ、殿下……私は別に、あなたに執着してるわけじゃないの。破滅ルートを避けたいからここまで頑張ってきた。でも今は破滅どころか、私が国を救う立場になりそうだし。正直、婚約を解消されたところで死にはしないと思うわ。好きにすれば?」
私はわざと冷たい口調で言うと、殿下は目を見開いて「えっ、そ、そうか……お前、意外とサバサバしてるのな……」と動揺する。
(本音を言えば、もう婚約破棄するメリットが殿下にないと思う。私も殿下を嫌いじゃないし、今さら破棄されても国民が納得しないわよね)
殿下がさらに何か言おうとしたところで、チャイムが響き渡る。「まずい、試験に遅れる!」
私たちは慌てて教室へ駆け戻る。結局“婚約破棄の話”は微妙なまま、「ま、いっか……」と保留されることになった。
教室に滑り込み、私が息を切らせて席に着くと、周りの生徒が「セレスティア様と殿下が二人で遅刻しそうだった! キャー素敵!」と勝手に盛り上がる。
(私が悪役って噂、もう完全にどこかへ消え去ったわね……)
試験科目が始まると、さすがに私も“破滅フラグどころか婚約破棄で悩む王太子”のことなど忘れて問題用紙に向かう。
気づけばペンはスラスラ走り、前世オタク知識や転生仲間の補習が役に立ち、これは上位いけるな、と手応えを感じる。
アニーもアニーで机に向かい、たぶん首席を狙っているはず。ガイは苦戦しつつ奮闘、アレクシスは余裕そう……リヒト殿下は神妙な面持ちで問題を解き進める。
(どこが悪役令嬢の学園生活よ……普通に優等生イベントじゃない)
試験1日目が終わり、教室で軽く感想を言い合う中、リヒト殿下は一人うつむいて「くそ……できは微妙だ。俺の婚約破棄計画も微妙だ……」と二重の悩みで暗いオーラを放つ。
取り巻き令嬢ズは「殿下、もうセレスティア様との破局は無理だと思いますよ?」とあっさり爆笑し、アニーが「殿下、そんなことばかり言ってないで勉強に集中して……」と説教モード。
私も「殿下、ほんと何してるの。次の試験がんばりなさいよ」と呆れるしかない。
正直、殿下の直球発言「婚約破棄しないか?」に私が失笑するのは——
もはや悪役令嬢フラグが完全死しているから
闇勢力が迫って国がやばいのに婚約破棄など些末事
世間も私をヒロイン扱い、殿下との結婚をむしろ推奨
——という状況を踏まえたら、断罪イベントなんて茶番にしかならないというわけだ。
(殿下ももういい加減に認めてほしいわね……私と婚約破棄するより、闇を滅ぼす協力相手として私が必要だってことを)
授業後、ひとり廊下を歩きながら、ふと自分の感情に気づく。
(今の私、もし闇勢力を倒して国を救ったら、本当に王太子妃候補として“最強の嫁”扱いされるんじゃ……? 前世で悪役令嬢ルートを散々見たけど、まさか正史ヒロインを越える立場になるとは……)
もちろん確定じゃないし、闇を倒せるとも限らない。けど、このまま突き進めば**国を救った“光の令嬢”**として圧倒的評価を得て、そのまま王妃コース……という未来も自然な流れに思える。
(あれ? それって私が破滅どころか最高のハッピーエンドになるんじゃ?)
くすっと笑いつつ、「まぁ、まずは期末試験をがんばらなきゃ」と気持ちを切り替える。
周囲がいくら騒ごうと、私は変わらずツンデレ悪役っぽい口調を時々使いながら、でも内心はかなり“デレ”が強まっている自分に気づく。
(もう悪役でもなんでもいいわよ……殿下、婚約破棄したいならすれば? でも絶対世間が許さないわね)
こうして私は心のどこかで殿下との関係を「保留」としながら、闇勢力への備えと試験に集中する道を選ぶ。
破滅フラグから完全に解放されつつある解放感……でも喜んでばかりもいられない。国崩壊だけは回避しなきゃ……そんな複雑な思いが胸を満たすのだった。
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