45話 期末近し、“闇魔法”の痕跡が再び増大…私たちもうかうかしていられない!
2年生の前期試験(期末試験)が近づいてくると、生徒たちは勉強や実技練習に忙しくなる。
私も例にもれず、取り巻き令嬢ズやレオナルトと勉強会を開き、今回はアニーからノートを借りたり、ガイが理数系の面白い覚え方を教えてくれたりと順調に準備を進めていた。
しかし——闇魔法の匂いが増しているという噂がやまないのだ。
休み時間、リヒト殿下が私の席まで来て、小声で切り出す。「なぁ、セレスティア……ちょっと王宮の情報筋によると、“闇魔導書の力で魔物を増殖させる実験が行われているかもしれない”って話を聞いたんだ」
「実験? どこかの施設で?」
「はっきりした場所は分からないが、王都近郊や地下迷宮の周辺で目撃情報が相次いでる。学園祭のモンスター騒動も、その一端だったかも」
私は背筋が冷たくなる。
(闇魔導書の真犯人は、まだ本格的に闇の王を復活させる前に、段階的なテストをしているのかもしれないわね)
殿下は苦い顔で続ける。「もし大規模に魔物軍を呼び出されたら、国がパニックになる……。騎士団も当然警戒してるが、こっちも備えておかないと。お前の光魔法がキーになりそうだから、試験なんて言ってる場合じゃないかも……」
「……分かったわ。でも私は私で、期末を適当に済ませるわけにもいかないのよ。悪役令嬢とはいえ、成績上位をキープしたいし……」
「はは、またそんなこと言って。“悪役”って自称しても、誰ももう信じてくれないぞ?」
「そ、それはいいのよ……とにかく、闇勢力の動きが本格化してるのは間違いなさそうね」
その日の放課後、“自警団ミーティング”が再び開かれる。メンバーはいつものセレスティア(私)、リヒト殿下、アレクシス、アニー、ガイ、そしてレオナルトも加わる。
アレクシスが自分の闇魔法による探知結果を報告。「今、学園周辺で微弱な闇の残滓があちこちに散らばっている。俺の力じゃコントロールできないレベルだ。これは絶対に別の存在……しかもかなりの高位魔力が動いてる」
ガイは拳をバンとテーブルに叩き、「じゃあやっぱり闇の王ってやつがいるのか!? 早く出てこいよ!」と気負うが、リヒト殿下は「出てこられても困るんだよ……」とため息。
私は深く息を吐く。「もしそんな危険な存在が本当にいるなら、私たちだけで対処できるのかしら? 王家や騎士団を総動員するレベルかもしれないし、期末試験中に呼び出されたら最悪よ」
アニーが震え声で言う。「わ、私の知るゲームシナリオでは、3年生の終盤で闇の王が最終決戦という流れがあるけど、今かなり駆け足でシナリオが進んでる気がするんです……。転生者が多すぎて世界線がバグったのかもしれませんね」
(なるほど、学年末や3年生あたりでクライマックスになるはずが、いろんな転生者の干渉で前倒し? 破滅フラグも早期消滅したし、ゲームのお約束が通じない状態なのね)
みんなの意見が集約する。「もはやセレスティアが断罪されるとかいう次元ではない」「婚約破棄とか言ってる場合じゃない」——要するに、国崩壊フラグこそが最優先で回避すべき脅威だという結論だ。
私も苦笑しながら、「はい……分かってるわよ、私も破滅されるつもりはないけど、国全体が破滅したら本当に最悪だし」と応じる。
レオナルトは「姉上の安全が第一です。闇の王だか何だか知りませんが、僕は絶対に姉上を守り抜きます!」と燃えているし、ガイは「闇がきたら俺がぶっ飛ばす!」と単純。アレクシスは考え込んだまま黙る。
王太子リヒトは皆を見渡し、「……こうなると、俺の“婚約破棄イベント”への未練なんて笑い話だな。最初は転生したし悪役令嬢断罪して学園ライフ楽しもうと思ってたけど……。国が本気で危ないかもしれないなら、そうも言ってられない」と肩を落とす。
私が「殿下、諦めてくれてありがとう。正直、私もいつ破棄されるか気が気じゃなかったけど、もう完全に消えたみたいでホッとしてるわ」と言うと、殿下は「う、うるさい……でも嫌いじゃないよ、その開き直り」と照れくさそうに微笑む。
アニーがそのやり取りを見て微笑ましそうに眺め、アレクシスは「フン」とそっぽを向く。ガイとレオナルトは「おお、」とニヤニヤ。
(もう完全に学園ラブコメ状態じゃないの……まあいいわ。このメンバーが一枚岩になって闇と戦うなら、勝ち目はあるかも)
そんな状況でも、私たちは学生として期末試験を受けなければならない。が、試験直前になってさらに嫌な報告が入る。「地下迷宮の封印がまた揺らいでいる気配」「王都郊外で魔物が増えている」といった情報が同時多発しているのだ。
先生や騎士団から公式発表こそ出ないが、何らかの水面下の動きは活発化している模様。
(嫌なタイミング……試験中に襲撃されたらどうするのよ? まさかそんなことはないと思いたいけど)
最悪のシナリオを考えつつ、結局私もクラスメイトたちもテスト勉強に集中せざるを得ない。何しろ「成績上位3人は国王から褒章をもらえる」という特典があるから、誰も手を抜けないのだ。
ガイは「うわー、俺はバトルは得意だけど勉強は苦手なんだよな……」と嘆き、アニーは相変わらず1位を死守するため燃えているし、アレクシスはクールに「余裕だ」と強がる。
私だって“地味に1位を狙いたい派”なので、密かに夜更かし勉強を頑張っていたりする。
試験直前、私は夜の自室でノートをめくりながら溜め息をつく。
(このまま何事もなく試験を乗り切って2学期を終えられればいいけど……闇勢力がどんどん迫ってるって話を聞くと、いつ大事件が起きてもおかしくない気がする)
窓の外を見れば、月が怪しい色に染まっているような気がして、思わず鳥肌が立つ。
(婚約破棄フラグは完全消滅、だけど国滅亡フラグが発生してる……何この状況。私はゲーム的には超ハッピーエンド路線かと思いきや、世界観がハードモードすぎる)
こうして“期末試験前の勉強会”と“闇勢力の捜査”を同時進行する私たちは、前代未聞の忙しさに翻弄されている。
次回、いよいよ試験本番——そして闇の動向がさらに表面化していくのか。もう悪役令嬢がどうのという話ではなく、私が国を背負う展開へと突き進んでいるのを感じつつ、夜は深まっていくのだった。
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