42話 セレスティア、普通に成績上位&光魔法注目株として認知される!? 悪役要素が消滅…?
「あれ……私、いつの間にこんな目立つ存在になったのかしら?」
学園祭のモンスター騒動から数日後、2年生の通常授業が再開した。ふと気づくと、教室や廊下ですれ違う生徒たちが、私に向けてやたらと感謝や称賛の言葉をかけてくる。
「セレスティア様、先日の学園祭では大変お世話になりました!」
「やはり光魔法って最高ですね、憧れます!」
「うちの家族も見ていましたが“悪役令嬢なんて噂は間違い”と絶賛していましたよ!」
あちこちからそんな声が飛び交い、私は苦笑するばかり。
(いや、私は本来“高慢ちきな悪役令嬢”で、婚約破棄&断罪エンドを回避したいと思っていたはず……それが今じゃ、みんなに好かれて英雄扱いなんて。もう破滅フラグなんてどこにもないわよね?)
さらに、学園の中間試験が近づいていたため、各科目の先生から「セレスティアは今回も上位を狙えるだろうね」「実技試験ではぜひ光魔法のデモンストレーションを!」などと期待される。
私ってもともと勉強も魔法習得も嫌いじゃないし、周りの転生仲間たち(取り巻きやレオナルト、アニー)から補習を受けたりノートを借りたりしているせいで、成績が下がる要素がない。
「……まるで本当に優等生ヒロインじゃない? 悪役らしいところが思いつかないわ」
休み時間、ぼやく私に取り巻き令嬢ズは「ふふ、セレスティア様はもう“悪役の皮を被ったヒロイン”という新ジャンルですわ!」などと妙な褒め方をしてくる。
一方で、私が扱う光魔法はこの国では“限られた血筋しか扱えない”と以前から言われていたはず。それが私の家系にも存在したというのは、周囲にとっても驚きだった。
しかも学園祭で“あれほど強力な光魔法”を披露したことで、先生たちが「どうやら先天的に眠っていた才能が急激に覚醒したのでは?」と盛んに研究したがっている。
「いや、私……本当に覚えてないのよ。幼少期に頭を打って転生要素を思い出して以来、断片的にゲーム知識があったけど、それと関係あるのかしら……?」
いまだに謎だが、ともかく私はどんどん“光魔法の注目株”として認識され、もはや悪役扱いは微塵もされない日々を送っている。
(リヒト殿下との婚約はどうなるのか分からないけど、破滅フラグが遠ざかるのは良いことだわ。……まあ、闇勢力の動きは怖いけどね)
そんな私を尻目に、“本来のヒロイン”アニーが複雑そうな顔をしている場面が増えた。
放課後の図書室で、アニーに声をかけると、彼女は静かにノートを閉じ、私を見上げる。
「セレスティアさん……本当にすごい活躍で、学園全体の人気者になってますよね。でも……私、前世では“悪役令嬢ルート”が確実に存在するって知ってたし、これほど真逆の展開って想定外というか……」
「うん、私も正直驚いてる。もはやヒロインはあなたじゃなくて私みたいな勢いだし」
アニーは苦笑いを浮かべ、「私は別にヒロインの地位にこだわりはないですよ。でも、闇勢力が動いてる今、ゲームがまるで別ストーリーに変わっているようで……少し不安で」と呟く。
私も同じ不安を抱えている。“乙女ゲー”としては破滅フラグは回避されて万々歳……のはずが、代わりに大きな闇がルートを乗っ取ってしまったら、国全体が破滅してしまうかもしれない。
(本来、アニーが王太子と結ばれて、悪役令嬢が断罪されるルートが王道……だけど今は私が活躍し、殿下はハーレムどころか振り回されていて、アニーも中途半端に“開発スタッフ”知識を持ちながら混乱している状態。まったく先が読めないわ)
「まあ、ここまで来たら成り行きに任せるしかないわよね。私たちがいくら前世のシナリオを思い出そうとしても、今は別ルートが走ってるんだから」
そう言うと、アニーは少しほっとした顔で頷く。「そうですね……いつか隠しボスらしき“闇の王”が現れるのかもしれないけど、その時は私も協力します!」
「もちろん私も一緒に戦うわ。もう悪役令嬢とか関係なく、この国と学園を守りたいもの」
……こうして私たちは、改めて決意を新たにする。成績上位&光魔法の期待株として、もう悪役扱いされない立場だからこそ、闇を退けるために活躍する義務があるのかもしれない……。
同時期、アレクシスはいつものクールな仮面を装いながら、学園の裏庭や地下迷宮などに潜入していた。
「闇の王がいるなら、封印の跡とか何か手掛かりがあるはずだ。しかし、みんな転生者だらけで妙に理解がありすぎるというか……本来なら、俺の闇オーラに怯えて嫌がらせされる展開だったろうに」
不満げに呟くが、クラスメイトも教師も「アレクシス様、あの騒動以降ちょっと改心したみたいですね」と温かく(または興味本位で)見てくるだけで、彼を厳しく罵る者はいない。
(彼も悪役ムーブで周囲をビビらせたかったのに、すべて空回りしているわけだ)
「……くそ、闇魔導書を盗んだ真犯人を探りたいけど、どうしたらいい? このままじゃ俺が役立たずじゃないか」
表情には悔しさがにじむが、学園祭で身をもって“真の闇”の強大さを痛感した以上、アレクシスも単独暴走する気にはなれない。
結果、彼はレオナルトとしばしば夜間パトロールを行い、時々「姉上に近づくな!」と言われながらも一緒に情報収集をしている。
(なんとも不思議な関係ね……このままツンデレ的友情になっていくのかしら)
「セレスティア様、クラスのレクリエーション幹事をお願いしたいんですけど!」
「悪役令嬢キャラって言われてるけど、もうただの優等生じゃないですか!」
「いえいえ、ツンデレな面がいいんですよ!」
あちこちからそんな反応が飛び交い、私はクラスメイトたちとごく普通に打ち解けている。むしろ当初“嫉妬を向けられる立場”になるかと思っていたが、まるで皆に愛される存在だ。
リヒト殿下は最近ますます困惑しており、「誰か、セレスティアを悪役と呼んで断罪させてくれよ……」なんて弱音を吐いているが、もうほとんど聞く耳を持たれない状況。
(……もう破滅フラグ回避というか、私自身が別のフラグを量産してる気がする。闇勢力が出なければ、平和に卒業して王太子妃まっしぐらかもしれないわね。ま、先のことは分からないけど……)
こうして改めて私は“悪役令嬢”から“光の優等生ヒロイン”へと変貌し、学園のスター街道を進んでしまう。
しかし、その裏側で“不穏な闇”が確実に力を増している現実——これを意識するのは、私と転生仲間たちだけかもしれない。学園の他生徒は「もう大丈夫だよね?」と楽観し始めているけれど……果たしてどうなることやら。
(とりあえず中間試験に集中して、成績トップを狙ってみようかしら? そういう地味な努力も嫌いじゃないし……あれ、これこそ悪役じゃなくて正統派ヒロイン行動だわね。困ったものだわ)
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