39話 学園祭当日③ しかしセレスティアが先陣きって“光魔法”で応戦! 学園を救う英雄ムーブ!?
パニックに陥る学園祭の人混みをかき分け、私はなんとか体育館の正面に到着した。
そこにはモンスターの群れ……といっても3~4体ほどだが、先ほどの教室とは違う姿の魔物たちが蠢いている。色も形もバラバラで、単純に“同種”ではなさそうだ。どう見てもアレクシスが意図した召喚獣より強力そう……。
中ではちょうどコーラス部の発表が行われていたらしく、悲鳴や混乱が巻き起こっているのが聞こえる。舞台衣装のまま逃げようとして転ぶ生徒たちも見える。
モンスターが体育館の入口を破壊し、突撃しようとしているため、必死に数名の騎士科生と教師が防戦しているが、どうにも押され気味。
「やばい……間に合うか!?」
私はその場に急行し、杖を構える。脳裏には夏休み中に急激に強化された光魔法がイメージとして浮かぶ。
(そうだ、私……あの時の感覚でより大きな光を扱えるかもしれない。だけど範囲攻撃が暴走したら、味方にも被害が及ぶ。そこをうまくコントロールできるか……)
背後からレオナルトが追いつき、「姉上、僕が盾を張りますから、光魔法で一気に押し返してください!」と叫ぶ。どうやら途中で人々を誘導しつつ、私を追ってきたようだ。
「わかった、でも無理はしないでよ!」
「ええ、任せてください!」
彼は小さな防御結界を展開し、モンスターの攻撃をある程度受け止めてくれる。レオナルト自身は魔力こそそこまで高くないが、腐女子脳に基づく研究? で習得した防御術が地味に頼りになる。
その隙に私は深呼吸し、杖に魔力を凝縮する。
「……行くわよ、これが私の光魔法……!」
集中すると、周囲の騒音が少し遠のいて感じられる。視界の中心に、禍々しいモンスターたちのシルエット。彼らが唸り声をあげ、こちらに突進してくるのがスローモーションのように見える。
「……“浄光の閃陣”!」
私が詠唱を終えると同時に、杖の先から眩い閃光が弧を描きながら広がり、モンスターたちの足元を塗り替える。床に描かれるようにして“陣”が形成され、そこから上方へ光の柱が立ち上る。
モンスターたちは突然の強烈な光に怯み、動きが鈍くなる。呻き声を上げ、もがく姿が見える。
「あと少し……!」
私は魔力をさらに込め、光の柱を一気に収束させる。するとモンスターの体表がバチバチと音を立てて浄化され、断末魔の声を残して消滅……。3体のうち2体までは一気に仕留めることに成功した。
「やった……!」
しかし残り1体はギリギリ射程から外れたようで、すぐ横の教師陣が必死に抑えている。
そこへガイがすかさず飛び込んで、「よっしゃ、こいつは俺がトドメを刺す!」と剣を振り下ろし、見事に撃破。周囲からわっと歓声が上がる。
(ほっとした……間一髪だったわ。でも、まだ校内に他の個体がいるかもしれない)
体育館周辺にいた人々が、私やガイの活躍を目撃して拍手や歓声を上げ始める。
「セレスティア様が助けてくれたわ!」「あの閃光、まさに闇を払う聖なる力……」「すごい、美しすぎる……」
まるでヒロインさながらの扱いだ。私は戸惑いつつも、今はそういう空気を払拭する余裕がない。
レオナルトが駆け寄ってきて、「姉上、かっこよかったです! でももう少し気をつけてくださいね?」と心配そうに眉を下げる。私は肩で息をしながら「ええ……ありがとう」と応じる。
(悪役令嬢のはずが、周りから“セレスティア様最高!”と称賛されるなんて、どうなってるの……? 破滅イベントどころか、英雄扱いになりつつあるわね)
体育館周辺のモンスターは片付いたが、別のフロアや校庭にも同種が出没していると聞く。私は光魔法を使いすぎて少し疲弊気味だが、ここで止まるわけにいかない。
義弟レオナルト、騎士科のガイ、取り巻き令嬢ズもサポートに回り、私たちは手分けして学園内を走り回る。
アニーもどこかで聖女の力を使って負傷者の手当をしているらしく、彼女にしかできない回復サポートが非常に助かっているという報告を受ける。
リヒト殿下も近衛騎士を動員し、混乱の収束に全力を注いでいる模様だ。
こうして私たちは、次々と現れる魔物を封じたり、配置された教師・騎士科生と連携して討伐を進める。
普段の学園生活や学園祭の賑わいからは考えられない激闘の連続に、転生者たちは「なにこれ、もうゲームシナリオぶっ壊れじゃん! もはやバトルファンタジーの最終クラス!」と面食らっているらしい。
(けど本当に、こんな学園祭になるなんて誰が予想できたの……?)
小一時間ほど大混乱が続いたが、最後にはモンスターの大半が倒され、逃げた何匹かも騎士たちが追い詰めて消滅させる。
私も何度か光魔法を繰り返し、疲れ切って廊下にへたり込む。レオナルトが「姉上、大丈夫ですか?」と水筒を渡してくれる。
「ええ……何とか……。皆も怪我はない?」
周囲を見回すと、もちろん生徒や来客に軽傷者は出たが、幸い大きな負傷者や死者はいないようだ。騎士や教師の奮闘もあり、最悪の事態は回避された。
そんな中、集まった人々が口々に「セレスティア様がいなかったら、もっと大惨事だった……!」「あの閃光、一瞬でモンスターを消し去るなんて……」と私を褒め称える。
「え、そんな、大げさよ……。ガイや騎士科の子たち、アニーの回復もあったし、みんなのおかげよ」
私が否定しても、周囲は「いやいや、あなたこそ今回の大功労者!」と拍手。
リヒト殿下まで息を切らせて駆け寄り、「お前……ホントすげえな。断罪しようとか言ってたけど、こんなに助けられたら無理だよ……」と苦笑する始末。
私は「はぁ……変なとこで正直ね」と返し、内心くすぐったい。
(これ、もう完全に“悪役令嬢”って立場ではなくなってるわね。ますます破滅フラグが遠のいた……ってことならいいことなんだけど、複雑だわ)
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