35話 アレクシス、裏で“モンスター召喚→学園祭パニック”を企む!? でも嫌な予感が…
あれは、学園祭まであと少しという時期——。
私たち2年生が模擬店の内装やメニューを整え、学園中が喧騒に包まれる中、アレクシスは密かにある計画を進めていた。
————————アレクシス視点
「ふん……どうやらリヒト殿下もセレスティアも、あの“婚約破棄”とかいう茶番に気を取られている。ならば俺がこの機に、学園祭をパニックに陥れ、権力を握る足掛かりを……」
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アレクシスは人気のない校舎裏で闇魔法の本を読み漁りながら、怪しい笑みを漏らす。
王宮の宝物庫盗難事件には直接関われなかったが、それでも彼は“自分なりに闇魔法を習得している”という自負がある。
小型モンスターを召喚して騒ぎを起こせば、王太子や学園関係者が混乱し、その隙に何か有利な立場を得る——というのがアレクシスの考えだ。
「本当なら、もっと大規模に闇の眷属を呼び出して、国を揺るがすくらいのインパクトを与えたいが……今の俺の力ではモンスターを数匹が限度か。まぁ、学園祭がパニックになれば十分だろう」
彼は唇を歪める。しかし、その表情にはいつもの自信満々というより、どこか焦りが混じっている。
(この学園には転生者が多数いて、俺の動きを妙に牽制してくる。特にレオナルトって少年が怖い……姉上推しとか言いながら、俺の闇魔法を警戒してくるし。セレスティアの光魔法も以前より強力らしい……)
それでもアレクシスは、己の目的のために行動を止める気はない。
「大丈夫……ここでモンスターを“適度に”暴れさせて、俺が闇の力で制御して見せれば、みんな俺を見直すかもしれない。セレスティアや王太子にも一目置かせられる……!」
そう呟いてから、ふと思い出す。あの闇魔導書盗難事件。
犯人は未だ不明だが、あの犯人ならば、もっと強力な魔物を呼び出す可能性がある。
(いや、まさかこの学園祭にぶつけてくることはない……だってそれじゃ規模が大きすぎるか? うーん、でも何か嫌な胸騒ぎが……)
アレクシスが眉をひそめたその時、取り巻き令嬢ズが遠巻きにこちらを見ているのに気づく。
「あら……アレクシス様、もしかして闇ルートを狙ってます?」などとクスクス笑っているが、アレクシスは面倒になって立ち去る。
(くそ、転生者が多すぎるこの学園、本当にやりづらい。まぁいい……俺は学園祭当日に合わせて、モンスター召喚を仕掛ける。それで状況をコントロールしてやる!)
————————セレスティア視点
私は自分の模擬店準備で忙しく、アレクシスの動きなんて把握していなかった。
教室では取り巻きが「このテーブルクロス、ちょっと地味じゃありません? もっと豪華なレースを……」と騒ぎ、レオナルトは「姉上、紅茶の試飲をどうぞ!」とせっせと注いでくる。
ガイは騎士科の出し物で“異世界風バーベキュー”をするらしく、「俺の店、絶対に勝ちますよ! 漫画飯ってやつです!」と盛り上がり。
アニーはアニーで「私の店は“聖女カフェ”だから、癒やし効果のあるハーブティーを……」と順調に進めている。
リヒト殿下だけが「むぅ……ヒロインの店を露骨に贔屓しても、誰もケンカしてくれないし」と不満げ。
(こうして見ると、なんだか学園祭は平和そのもの。アレクシスが裏で何か企んでる可能性があるなんて、あまり想像できないわよね……)
————————
「セレスティアさんの出し物、邪魔しないでくださいね!」
ところがある日の放課後、アニーがアレクシスと廊下で言い争い(?)をしているところを、私が遠目に目撃した。
アニーは珍しく険しい顔で、「アレクシス様、わたし……嫌な予感がしてるんです! どうか学園祭でモンスターを呼んだりしないでください!」と声を荒げている。
アレクシスはムッとしながら「はぁ? 何の話だ。俺がそんなことするわけ……」ととぼけているが、アニーは引かない。
「転生者仲間から聞きました! あなたは闇魔法で何か派手な騒ぎを起こす気なんでしょう? でもセレスティアさんは……悪役令嬢とか言われてるけど、ほんとに学園祭を楽しみにしてるんですよ! だから邪魔しないでください!」
「な、何を勝手に決めつけて……」
アレクシスが反論しようとするものの、アニーも珍しく食い下がる。
私から離れた位置にいる二人なので、詳しい会話までは聞き取れないが……「アレクシスが何かやらかそうとしている」と悟って止めているのだろう。
最終的にアレクシスは舌打ちし、「ふん、余計なお世話だ……」と背を向けて去る。アニーはその背中を不安そうに見送る。
(うーん……やっぱりアレクシス、何か企んでるのね。もし本当にモンスター召喚なんてしようものなら、学園祭が台無し……いや、それ以上に大惨事になりかねないわ。光魔法で対抗できるかしら?)
————————
学園祭当日まで残りわずか。私の店もアニーの店も準備はほぼ整い、リヒト殿下の“贔屓作戦”もやや失速気味。
ガイは「自分の店が大繁盛しそう!」と嬉しそうに腕を振り回し、取り巻きたちは「セレスティア様、当日の“高笑い”はバッチリ練習しましょう!」なんてエキサイトしている。
私は何とかしてアレクシスの動きを警戒したいが、具体的な証拠はないので先生や殿下に大々的に訴えることもできずにいた。
「……大丈夫かしら。もしかしたら“闇魔導書”の真犯人も、学園祭を狙ってくるとか、そういう展開があるんじゃないの? 物騒すぎて考えたくないけど……」
夜、寮の部屋でベッドに横になりながら、そんな不安が頭をよぎる。
(私が悪役令嬢として破滅するよりも先に、この国自体が破滅したらどうしよう……。ああ、気が気じゃないわ)
しかし、取り巻きやレオナルト、アニーたちもいるし、最悪の場合は私の光魔法で応戦すれば何とかなる……はず。
そう自分に言い聞かせ、眠りに落ちる。
……このとき私は、さらに別の闇勢力が絡んでくるなど思いもしていなかった........
夜は更けていく——。
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