表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/102

28話  王家の古文書を読み返すリヒト殿下、“本来の破滅イベント”を再確認?

夏休みも半ば。

闇魔導書の盗難という大事件があったものの、今のところ大規模な二次被害は報告されていない。


「闇の脅威はこれからが本番なのか……」

そんな不安が頭をもたげる中、王太子リヒト殿下は王家の書庫にこもって古文書を漁っていた。



——————————リヒト・視点


「おっかしいな。前世のゲーム知識では、悪役令嬢が『2年目か3年目に断罪される』のが王道だったんだけど……。今1年生が終わったばかりなのに、セレスティアはむしろ人気者。婚約破棄の気配すらない。国全体が“彼女こそ未来の王妃だ”みたいな空気だし……」


俺は王家の私的な書庫で、歴代の“断罪イベント”に類する記録を探している。


もちろん、これは前世から持ち越した“オタク的興味”でもあるし、実際の歴史書から「王太子が婚約者を破棄した事例」や「貴族令嬢が追放された例」を引っ張り出してるわけだ。


その中に、ゲーム世界と対応しそうな記述があるかもしれない、と期待して。


「ふむ……ここの書物によると、かつて“悪役令嬢”扱いされた侯爵令嬢が、2年生の終わりに大罪を犯した……みたいな記載があるな。王太子は皆の前で彼女を糾弾し、追放したと書いてある……」


これは何百年も前の事件らしいが、俺のゲーム知識と妙に重なる。

「なるほど……やっぱり“2~3年目にクライマックス”がこの世界のセオリーなんだ。なら、まだワンチャンあるかもしれない……」


だけど、正直俺は複雑だ。セレスティアが悪役としてあっさり破滅するのも寂しいし……。


「くそ……俺は最初、ハーレム計画でニヤニヤしてたのに、どうしてこうなった……。闇魔法のほうがよっぽど危険だし、そもそもセレスティアが破滅する雰囲気ゼロじゃないか……」


ため息をつきつつ、さらに古い巻物を読み進める。すると、中にこんな一文を発見する。


——「断罪の行方は“公的なスキャンダル”の有無による。悪役令嬢がどんなに悪行を重ねても、決定打がなければ破棄は発生しない」

なるほど。つまり「大衆の面前で揺るがない証拠を突きつける」


——これこそが悪役断罪のカギだと書かれている。


俺は目を見開き、唸った。

「そっか……だから俺が何度『婚約破棄だ!』と言おうとしても、周りが誰も聞いてくれないし、セレスティアが大罪を犯してないから説得力がなかったんだな……」


じゃあどうすればいい? 彼女に何かスキャンダルを起こさせればいいのか? でもそんなことを画策して、もし本当に傷ついたらどうする?


「……あー、もう、俺ってなんでこんなに優柔不断なんだ? 自業自得か……」

頭を抱えていると、遠くからガイやアニーらの声が聞こえてくる。どうやらまた学園仲間が王宮に来てるらしい。


「もういいや。とりあえず、2年生で何か動きがあるかもしれないから……それまでは闇魔導書の件に集中したほうがいいか……。破滅フラグなんて、余裕があればやればいいし……」


そう自分に言い聞かせて書庫を出る。結局、古文書で得た情報は「2~3年目が勝負」「スキャンダルが必須」など、既に分かっているような内容ばかりだった。


(まさか、闇の脅威がこのまま大きくなれば、悪役令嬢を断罪どころじゃなくなるんじゃ……?)


胸の奥でそんな予感が疼く。


——————————セレスティア・視点



夕方、王宮の中庭。セレスティアは両親に同行して宮廷の用事を済ませる予定で来ていたが、空き時間にリヒト殿下と出くわした。


「殿下、古文書をずっと読み漁っていたって聞いたけど……収穫はあったの?」

私が聞くと、殿下は「まぁ一応ね……」と歯切れ悪く答える。


「あなた、まだ婚約破棄に未練あるの?」と茶化すと、リヒト殿下はむすっとして「そりゃ、最初はそうだったけど……今はちょっと複雑」と小声で呟く。


その態度が、前より優しい感じに見えて、私は胸の奥がかすかに温かくなる。

(そうか……殿下は殿下で葛藤してるのね。私が悪役令嬢だと思いつつ、なんだかんだ割り切れないみたい……)


ただ、すぐにリヒト殿下は照れ隠しか「ま、まあ、2学年になったらいろいろイベントも増えるし。そこでうまく行けば破局イベントが……いや、なんでもない!」とまた迷走発言をしていく。


私も苦笑いしつつ、「どうせあなた、私のことを完全に嫌ってはいないんでしょ?」なんて心の中で思う。


「闇魔導書、早く見つかるといいわね……。なんだかどんどん嫌な予感が増えていくの。よくわからないけど、大きな陰謀が動いてる気がして」


そう呟いた私に、殿下は穏やかな表情で「お前が危険に巻き込まれるのは避けたい。俺も騎士団と協力して頑張るから、変なことには首突っ込むなよ」と言ってくれる。


「……ありがと」

思わず素直に礼を言う。こんなところでツンデレ発揮しても仕方ない。


(うう、まるで普通の“いい感じ”な婚約者同士じゃない……。私、本当に悪役令嬢だったのよね? 記憶が曖昧になってきそう……)


こうして、リヒト殿下は古文書を再確認するも、結論として「2年目や3年目にチャンスがあるかもしれない」という程度。まったく大きな進展はなく、日常は不穏を抱えながらも回っていくのだった。

毎日投稿頑張ってますΣ੧(❛□❛✿)

保存といいねお願いします……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ