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26話  夏休み突入!……なのに王都で再会しすぎて休まらないんですけど!?

「ああ、ようやく待ちに待った夏休み……の、はずだったんだけど……」


わたくし、セレスティア・ノイエンドルフは、学園1年生を無事(?)終え、家族が待つノイエンドルフ侯爵邸へ帰ってきたばかり。


本来なら心ゆくまでリラックスして過ごすはず


——そう、破滅フラグうんぬんを忘れて、優雅にお茶を嗜んだり、ドレスの新調をしたりして……。

だけど、現実は甘くなかった。


「姉上! 今日はリヒト殿下がいらっしゃるとのことで、使用人たちが大慌てで準備を……」

まず、義弟レオナルトが嬉々として報告に来る。「何故王太子が突然うちに来るわけ?」と問い質せば、「そりゃもちろん、姉上とのコミュニケーションを深めるためじゃないでしょうか!」などとニコニコ顔。


……学園が休みに入ったのに、王太子リヒトは、わざわざプライベートで私の実家に顔を出すらしい。


しかもたまたま“街の視察”とか名目をつけているが、実態はほぼ遊びだろう。


「まったく……夏休みくらい放っておいてくれてもいいのに。私、だらだら過ごしたいのよ」

そうぼやきながら、廊下を歩いていたら、メイドが慌てて「お嬢様、もう殿下がお着きに……」と呼びに来る。


しまったと思いつつ応接室へ向かうと、そこにはもう王太子リヒト殿下が悠々と腰掛けていた。


「やあ、セレスティア。久しぶり……ってほどでもないけど、どうしてる?」

「ご機嫌よう、殿下。わざわざお越しいただきありがとうございます……(小声:というか、夏休みにまで押しかけなくても……)」


「いやぁ、学園ではいろいろあったし、ちょっとリフレッシュも兼ねてさ。王都の観光……というか、下見みたいなもの? あと、お前とも話したいことあるし」

リヒト殿下はなぜかご機嫌。私の方がポカンとしていると、彼は笑みを浮かべて続ける。


「ほら、せっかく悪役令嬢なんだから、夏休みの間に何か面白いイベントが起きるかもしれないだろ?」

「……あのね、私は休暇くらい普通に穏やかに過ごしたいんだけど」

「そう言うなって。お前、破滅フラグは回避したいんだろ? ならイベントごとにはしっかり目を光らせておいたほうがいいと思うぞ。もしここで急なスキャンダルでも起これば、2年生から一気に波乱が来るかもだし」


殿下も殿下で、“婚約破棄イベント”を虎視眈々と狙いつつ、でも結局うちへ通ってくる時点で迷走しているのがバレバレだ。

そうこうしているうちに、ベルティーユやコネットから手紙が届き、「夏休みだからぜひお屋敷に遊びに行きたいですわ!」と言われ、さらにはガイやアレクシスまで連絡を寄越してくる始末。


「なにこれ……学園の知り合いが、こぞって私の家に集結しようとしてるじゃない!」

私が天を仰ぎ呟くと、レオナルトが「姉上の人気は絶大ですね!」と無邪気に喜ぶ。


いや、人気があるというか、ただの転生者の集会所にされているだけでは……? と若干引きつつ、対応するしかなかった。


そうして始まった夏休みは、本来の静養などあったものではない。


王太子リヒト殿下が「昼から視察に行こうよ」と誘ってくるので、馬車で近くの商店街を回るはめになる。商人から「セレスティア様こそ王太子殿下の未来の妃……!」と歓声を受け、気まずくなる。


取り巻き令嬢ズが「セレスティア様とドレスやアクセサリーを見に行きたいんです!」とせがみ、私の実家に泊まり込みで相談会。新作ドレスをあれこれ試着させられ、「オホホ、さすが悪役令嬢の気品!」などと盛り上がる。


ガイが「騎士として町の治安状況を学びたい」とか言いながら合流し、「セレスティアさんと護衛の練習がしたいッス!」と謎の訓練に駆り出す。


アレクシスまでもが「闇魔法の研鑽を……」などとうそぶき、なぜかノイエンドルフ邸の図書室に居座って、こっそり古書を読み漁っている。


さらにアニーが「私は平民ですが、皆さんと一緒に勉強したくて……」と礼儀正しくうちに訪問。取り巻き令嬢ズも大喜びで「わぁ、ヒロインさんいらっしゃい!」とギャップがすごい。



……結果、毎日のように“お茶会”や“自主勉強会”が開催される形になり、私の夏休みは完全に潰れた。


おまけに、私が少しでも「今日は疲れたから家でゴロゴロしよう……」なんて考えていると、レオナルトが「姉上、皆さんがお待ちですよ!」と生き生きした笑顔で部屋に呼びに来る。


「うう……これが悪役令嬢の夏休みなんて……聞いてないわよ」

そうぼやきながらも、私がなぜか中心人物のように振る舞わざるを得ないのが現状だ。


(まぁ、嫌われるよりはいいかもしれないけど……どうしてこうも、周りが私に構ってくるのかしら? 破滅フラグが遠ざかるのは嬉しいような、落ち着かないような……)




ーーーーそんなある日、事件は来たのである


バタバタな夏休みを送っていたある日、王宮から物騒な連絡が舞い込んできた。


ノイエンドルフ家の執事が慌てた様子で私のもとへやってきて、「王宮で大変な事件があったとのことです……セレスティアお嬢様、至急ご家族も交えてお聞きください」と。

私は嫌な予感に胸をざわつかせながら父母と共に報告を受けた。そこにはリヒト殿下も同席し、深刻な顔をしている。


「実は……王宮の宝物庫が何者かによって破壊され、厳重に保管されていた“闇魔導書”が盗まれたんだ。扉の痕跡からして、闇属性の魔法で破壊した可能性が高いらしい」

リヒト殿下が重々しく説明する。


「闇魔導書……それって、以前から禁書として封印されていた危険な書物ではありませんか?」

私の父が驚いた表情で聞き返すと、殿下は苦い顔で頷いた。


「そうだ。かなり古い伝承魔法が記載されていて、扱い方次第では国家転覆もあり得るレベル……。これは大事だよ」


私も息を呑む。闇魔法といえば、アレクシスが興味津々だったし、学園でも夜な夜な怪しい噂があったばかり。


(……まさかアレクシスが盗んだ? いや、でも彼ならもっと堂々と“俺が闇を支配する”とか言いそうだし……。何より、この事件は規模が大きすぎる)


「犯人はまだ特定できていないし、王宮側も必死に捜査中だ。ただ、闇魔法の扱いに長けた存在が他にもいるのか……不気味だな」


リヒト殿下がそう呟くと、私の母が気遣うように「セレスティア、あなたも下手に首を突っ込まないでちょうだいね」と声をかける。


「はい、もちろんよ。私はただの悪役令嬢だし、危険なことはしません……」

口ではそう言いつつも、嫌な胸騒ぎは消えない。闇魔導書が外へ持ち出されたという事実は、この世界に大きな影を落としそうだ。


こうして、私の夏休みは騒がしい学園仲間の乱入と、王宮の不穏な事件によって、全く気が休まらない状態に突入したのだった。


「本当に……夏休み、どこ行ったのかしら……」

毎日投稿頑張ってますΣ੧(❛□❛✿)

保存といいねお願いします……!

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