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19話  義弟レオナルトの“見当違いの忠誠”! 公爵子息、容赦なく撃沈ですわ!?

夜会の余興でのダンスや会食もひと段落し、ホールの一角では貴族たちが集まりさまざまな談笑を交わしていた。


私も取り巻き令嬢ズと軽くおしゃべりしていたけれど、そこへ突然、公爵家の御曹司が近づいてきて、すこし芝居がかった態度で私に声をかけてきたのだ。


「セレスティア様……あなたの美貌があまりにも眩しく、つい踊りの誘いを申し上げたいと考えてしまったのですが、よろしければ、私にお時間をいただけませんか?」


その公爵子息は、どこか“当て馬”っぽい雰囲気をまとっていて、前世の乙女ゲー記憶が断片的に残る私には「もしかして三角関係を匂わせるイベント?」とピンと来るものがあった。


学園のライバルポジションかつ、夜会で王太子から私を奪おうとする典型的な“当て馬”キャラクター——そんな香りがプンプンする。


しかし正直言うと、私はまったくその気がない。王太子リヒトとの婚約破棄を避けたい私にとって、余計なフラグは立てたくないし、夜会の余興くらいは程々で済ませたいのが本音だ。


だが、貴族の淑女として冷たくあしらうのも失礼かと思い、どう返事するべきか一瞬だけ迷う。


すると、その隙を突くようにレオナルト(私の義弟)がスッと私の横へ割り込み、真顔で公爵子息を睨んだ。


「公爵子息殿。あなた、姉上を“転ばせ”たり“誤解させる”ような行動はお考えですか? 姉上には王太子殿下がいらっしゃるのですよ?」


——義弟の口調は丁寧ながらも、明らかに威圧感に満ちている。


そのうえレオナルトの目はどこかギラギラと燃えるようで、公爵子息が困惑しているのが見て取れる。私は慌てて「レオナルト、ちょっと落ち着いて!」と腕を引っ張るが、当の本人はまったく意に介さない。


「だいたい、姉上を()()()()()()などと考えるなら、先に殿下へきちんと断りを入れるべきでしょう? そもそも姉上がこんなにも輝いているのは、殿下のご厚意と深いご理解があってこそ……いえ、それ以前に姉上は転生の悪役令嬢ルートを避けて——」


「ちょ、レオナルト! そこまで言わなくていいわ!」

私は声をひそめて必死に止めようとするが、もう遅い。レオナルトは気合いが入りすぎて、いきなり「姉上を侮辱したら絶対に許さない!」モードになってしまったのだ。

公爵子息が呆然とする前で、彼はいくらでも口実を並べて論破を試みる。


「それに、姉上は悪役令嬢だと言っても実際は優しいし、王太子との仲を壊す筋合いはどこにもありません! あなたごときに三角関係を作る資格など——」


「レオナルト、本当にストップ! もういいから!」

私が顔面を赤くして止めても、義弟は言葉を切らない。堂々とまくし立てて、公爵子息を言いくるめる形になり、相手はすっかりタジタジ。周囲の貴族たちもひそひそ声で「ノイエンドルフ家の弟君、強烈ね……」と噂しているのが聞こえる。


やがて公爵子息は「え、ええと……ぼ、僕はただ単にお近づきの印に少し踊りを……」と半泣きになりながら弁解する。


するとレオナルトは鋭い目つきで、「踊り? それが姉上奪還ルートになる可能性はゼロではないでしょう?」と論を続ける。もう訳が分からないが、ともかく公爵子息がなすすべなく追いつめられているのは事実だ。


結局、その御曹司は「も、申し訳ありませんでした……これにて失礼を!」とばかりにそそくさ逃げていった。


私は苦笑交じりにレオナルトを見つめ


「あなた、ちょっとやりすぎよ……」と溜め息。


すると彼は「姉上を守るのが最優先ですから!」と真顔で答えるから、私も困ってしまう。しかし、そのまっすぐな好意に胸を打たれないでもない。


「何なのよ、もう……こういう場で悪役令嬢として“私が”相手を論破するシーンじゃないの?」


私は呟いてしまうけれど、結局その役目を買って出たのは義弟レオナルトであり、私は完全に守られる側になってしまった。


夜会らしい“三角関係”イベントになりかけたものの、全然発展せずに撃沈。

周囲の転生者らしい貴族たちも「ああ、あれね……定番だけど、レオナルトくんが早々に潰しちゃったか」と失笑ぎみに見守っている。


この様子を遠巻きに見ていたリヒト王太子が、苦笑混じりに私の隣へやってきてひそひそ言う。

「うーん、俺が介入する間もなく弟さんが追い払ってくれたな……。本来なら、俺がセレスティアを庇い立てして三角関係に発展するイベントなんだけどなあ……」


そこまで言われると私も「ほんと、想定外よね……」と小声で返す。


婚約破棄に向けたヤキモキする展開をリヒトがどこかで期待していたとしても、こうしてレオナルトが先回りして相手を弾き飛ばしてしまうから、まるで“悪役令嬢の悪辣エピソード”が発動しないのだ。


結果、夜会の余興が終わる頃には、公爵子息は完全にしょげかえって退場し、私自身はほとんど何もしていないのに悪役行動どころか守られる立場で一日が終わっていた。


取り巻きが「あらまあ、セレスティア様が高笑いで打ちのめすイベントを期待してたのに」とぼやき、私は肩をすくめて「そんな暇がなかったわよ……」と答えるしかない。


こうして夜会の余興でせっかく三角関係風の余興イベントを匂わせる公爵子息が出現したものの、レオナルトが見当違いの忠誠心で論破し撃沈。


私が悪役らしく振る舞う隙もなく、モブ貴族が涙目で退散する姿だけが残った。悪役令嬢が意地悪するはずの場面がまったく発生せず、夜会は平和に終了してしまう。


結果として夜会の三角関係イベントがものの数分で終わったという不思議な結末になり、私は呆れるばかりだ......

毎日投稿頑張ってますΣ੧(❛□❛✿)

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