18話 殿下はアニーさんが好きなんですって?”と煽られても、拍子抜け!
夜会が進み、音楽やダンスが始まる頃
——私はしばしの休憩を取り、ホール脇のテーブルで飲み物をいただいていた。
華やかなドレス姿の人々が踊りに興じるのを眺めつつ、ふと気づくと、そこに他の貴族令嬢たちが何人か寄ってきていた。
「セレスティア様、こんばんは。あら、本当にお似合いのドレスですこと!」
「噂によれば、殿下が最近アニーさんという平民の聖女に興味をお持ちだそうですわね?」
……きた! 本来なら悪役令嬢が嫉妬を露わにし、激昂するシーン。
令嬢たちは何やら面白そうに私を観察している。恐らく彼女たちも転生者で、これからの展開をワクワク見守っているのだろう。
「え、ええ、そうなの? だとしても別にいいわ。私は気にしないもの」
私は冷静を装って答える。
「えーっ、そんなにあっさり? “この泥棒猫!”とか言っちゃわないんですの?」
「言うわけないでしょ……殿下が誰を好きだろうと自由だし、私が口を出すことでもないし」
「そ、そうですか……(小声:あれれ、思ったよりクール……)」
煽ってきた令嬢たちは拍子抜けした様子だ。そのうちの一人が「じゃあセレスティア様は殿下との婚約を捨てても構わないんですか?」とさらに追及してくるが、
「捨てるとか捨てないとか言う前に……私はもともと破滅フラグ回避が最優先なの。アニーが殿下とくっつくならそれはそれでいいんじゃないかしら」
と言い捨てると、令嬢たちは「はぁ……これじゃ煽りにならないわね」と肩を落として離れていった。
(なんなのよ、彼女たち。煽って私を逆上させ、“断罪イベント”へ持ち込みたかったのかしら?)
だけど私だって、わざわざ騒ぎを起こして自爆するほどバカじゃない。
(取り巻きやレオナルトにも“あんまり突っ走らないで”と言われてるし、私は彼らの期待に沿わない形でも、この夜会を乗り切りたいところ……)
そう考えていたら、アニーが遠慮がちに近づいてきた。青みがかったドレス姿が清楚で、だいぶ似合っている。
「セレスティア様……! すみません、こんなパーティーでご挨拶もできず……わたし、ダンスなんて慣れなくて……」
「別にいいわよ。私だって堅苦しい場は慣れてるけど好きじゃないし。……ドレス、似合うわね」
「そ、そんな恐れ多い……ありがとうございます!」
この様子を見ていた周囲の令嬢が「おいおい、悪役令嬢がヒロインを褒めるなんて……」と目を丸くしている気配がある。
(うん、これはこれで面白い展開なのかもしれない……私としては平和が一番だけど、周りは物足りないのかな)
そう思っていたら、義弟レオナルトがサッと私の横に来て、「姉上、お疲れではありませんか?」と気遣ってくれる。
まわりの視線もあり、私は姫ムーブを続けるしかない。結局、嫉妬イベントや婚約破棄騒ぎは起こらず、粛々と夜会が進んでいくのだった。
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