17話 夜会当日、私のドレス姿に周囲がうっとり…? リヒト殿下も迷走中
そして迎えた夜会当日。
会場は王都の中心にある大規模な貴族社交ホール。煌びやかなシャンデリアがまばゆく、たくさんの招待客がドレスアップして集っている。
私も意を決して母が用意した豪華絢爛なドレスに身を包み、足を運んだ。髪もきっちりアップにまとめ、宝石もふんだんに飾っている。……正直、少しやりすぎ感があるかも。
(ああ、恥ずかしい……でも、こんな場所では地味な恰好よりはいいのかしら)
恐る恐るホールに入ると、パッと人々の視線がこちらに集中する。
「あれはノイエンドルフ侯爵家のセレスティア嬢……」「噂には聞いていたが、なんて美しい……!」
ざわざわとさまざまな声が飛び交う中、私はなるべくツンとした表情で歩く。
——が、どうやらそれが“悪役令嬢の高慢さ”ではなく、“気高い姫君”のように見えるらしく、周囲の人々は憧れのまなざしを向けている模様。
「セレスティア様……本当に素敵です!」
横に控えていた義弟レオナルトが、まるで執事のように私のドレスの裾をさっと整えてくれる。
「姉上が転んじゃ困りますからね!」とウキウキ。おかげで全然転ぶ気配もない。
(あれ? 悪役令嬢って、本来はわざと靴を踏み外してヒロインを巻き込むとか、なんやかんやトラブルを起こすイメージが……。でもレオナルトのサポートが完璧で、何も起きそうにないわ)
そのうち、リヒト殿下がホールの奥から姿を見せる。……相変わらず周囲に令嬢たちが群がり、「殿下、こんばんは!」などと声をかけられているが、彼の視線は真っ直ぐこちらへ向けられていた。
私がすっと視線を合わせると、彼は一瞬ポカンと口を開け、そっと呟く。
「……セレスティア、ずいぶんキレイだな……」
(な、なにそれ……! ただの社交辞令?)
私の胸がドキリとする。悪役令嬢としては、殿下のそんな感想にまともに照れてはいけないのかもしれないけれど……。
「べ、別に普通ですわ! 今日は母が勝手に張り切っただけよ……!」
「はは、そっか。……あ、そうだ。実は俺、今夜こそ“婚約破棄”を……じゃなくて……なんでもない!」
……どうやら殿下も、私が想像以上に美しく着飾っているため、気が揺らいでいる様子。
(まさか...こんなに素敵な相手を今ここで破棄していいのか?と内心葛藤しているのかもしれない?)
「なんて....あるわけはないですね.....」
「おやおや、殿下とセレスティア様、本当にお似合いですね!」と周囲の貴族たちが口々に褒めそやす。
(これじゃあ、破棄イベントなんて言い出しづらいわよね……)
こうして、夜会の幕が上がる。私は人前で妙な恥をかくこともなく、ただただ「悪役令嬢なのに美しい……!」という褒め言葉を受けながら、ホール内を歩き回ることになった。
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