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13話  リヒト殿下、早くも婚約破棄を言い出すのに、誰も乗ってくれませんわ!?


ある日の放課後、私は校舎のホールを歩いていると、背後からいきなりリヒト殿下に呼び止められた。


「セレスティア、ちょっといいか?」

「な、なによ? 急に真顔で……」

殿下は周囲を見回し、人通りが少ないのを確認すると、私を柱の陰に引っ張るように連れ込む。


「その……お前、悪役令嬢だろ? そろそろ俺と婚約破棄とか、起きてもいいと思わないか?」

「……はぁぁ!?」


思わず声が裏返りそうになる。まさか殿下がここまであからさまに“婚約破棄イベント”を持ち出してくるとは……。


「だってさ、学園に入ったらいずれヒロインとの恋路が加速し、悪役令嬢との仲はこじれて破棄……ってのが王道だろ? なのに、アニーは全然前に出てこないし、お前も“絶対に破滅したくない”とか言って積極的に動かないし……このままだと何も起こらないまま学園生活が終わりそうなんだよ!」

リヒト殿下は焦り混じりの口調でそうまくし立てる。


「え、ええと……そんな、私に言われても困るわ。破滅させたいなら、そっちが勝手に宣言すればいいじゃない」


「だから、今こうして宣言しようとしたんだよ。でも、ほら、人目があるし、もうちょっとドラマチックに……。学園の全員が見てる前で“お前なんて婚約者にふさわしくない!”って言ったら盛り上がるかなって……」


……あのね。


私は頭を抱えたくなる。まるで殿下にとって“婚約破棄”は、彼のハーレムゲームを盛り上げるためのギミックなんだもの。


「もう勝手にすれば……私は破滅したくないけど、あなたがどうしてもって言うなら、そちらの都合で破棄すれば?」

私が投げやりに言うと、殿下は「それがさぁ……」と歯切れ悪く口を濁す。


「教室で“セレスティアは悪役だ!”って叫んでも、周りが雑談してて誰も聞いてないし、食堂でやろうとしたら取り巻き令嬢ズが“あらあら殿下、急にどうなさいました?”って笑いに変えちゃうし……実はチャンスを狙ってたんだけど、タイミング逃してばかりなんだよ……」


どこまでも噛み合わない。しかも殿下自身も、なんだかんだ言って私を本気で嫌っているわけじゃないらしい。


「はぁ……ご苦労様ね」

「ほんとだよ、誰かが『おおっ、ついに悪役令嬢断罪か!?』ってノッてくれればいいのに、皆スルーするんだよ……」

リヒト殿下はガックリと肩を落とす。


その直後、廊下の向こうからクラスメイトの男子たちが談笑しながら通りかかり、殿下に「よう、リヒト~。今日は早く帰ろうぜ!」と声をかけてきた。


「え、あ、うん……今ちょっと重要な話を……」

「ふ~ん、大事な話? セレスティア様といちゃついてんのか?」

「ち、ちげーよ!」


男子たちはからかうように笑って、そのまま去って行く。結局、殿下は“婚約破棄”どころか会話すらまともにできずに終わる。


「くそ……タイミングって難しいんだな……」

「もう、どうでもいいから帰りましょうよ……」


こうして、リヒト殿下の“婚約破棄第一弾”は、誰にも取り合ってもらえずに消滅したのだった。

毎日投稿頑張ってますΣ੧(❛□❛✿)

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