11話 お昼休みの庭ランチ、ヒロイン乱入…はずなのに?
学園に入学してから、あっという間に日々が経過した。
授業にもある程度慣れ、クラスメイトたちの顔と名前も少しずつ覚え始めた頃。わたくし、セレスティア・ノイエンドルフは、王太子リヒト殿下とともに、学園の中庭でお昼を取ることになった。
きっかけは、リヒト殿下の「せっかくだし、婚約者同士でランチでもしようか?」という提案。
もっとも、殿下としては「学園内で俺たちの関係を周囲に知らしめて、悪役令嬢VSヒロインの対立を煽ろうかな……」という下心がありそうだけど。
「なぁ、セレスティア。最近どう? 学園生活は楽しんでる?」
「……まぁ、普通に楽しいわ。取り巻きが騒がしいけれど」
私は小さくため息をつきながら、ランチボックスを開く。
芝生が広がる中庭のテーブル席は空気も良く、天気も快晴で実に心地よい。
(本来ならここで“ヒロイン”アニーが弁当を落とすとか、転んでしまうとか、定番のコミュニケーションイベントが発生しそうだけど……)
私はチラリと辺りを見渡してみる。
……いる。遠くのベンチに、アニーがちょこんと座り、ぼそぼそとお昼を食べている。
向こうもこちらの存在に気づいているようだが、目が合うとすぐに視線をそらし、何やら緊張している様子。
(あれ? 私に話しかけるチャンスなのに、なぜ彼女は来ないの? ヒロインならもっと堂々と殿下との縁を結ぶはずじゃ……)
と、そのとき、リヒト殿下がヒソヒソ声で囁いてきた。
「なぁ、あの子……たぶん平民の聖女枠だよな? 俺が声かければ自然とイベントが起きそうなんだが……なんか気まずそうにしてるなぁ」
「そ、それはきっと……私との関係に遠慮してるんじゃない?」
「ええ……まさか、“悪役令嬢の前でヒロインが殿下にアプローチする”っていう定番が起きないなんて!」
「......ここは俺の“俺TUEEEE学園ハーレム計画”の腕の見せどころだったのに……」
殿下が残念そうに何かをぼやいている。
そのまましばらく待ってみても、アニーは遠巻きにこちらを見るばかりで、結局、私たちのテーブルに来ることはなかった。
ランチが終わる頃にすらっと立ち上がり、ペコペコ頭を下げてそのまま教室へ行ってしまう。
「ええー……」
リヒト殿下も私も、なんとも言えない肩透かし感に襲われる。
「……こういう場合、どうしたらいいわけ? 私が“ヒロインを追い払う悪役ムーブ”をすれば、彼女は殿下に泣きついて『助けて殿下!』と発展するのかしら?」
私が冗談めかして言うと、殿下は目を輝かせて「おお、それいいね!」と反応。
「頼むよセレスティア、君がもうちょっと“感じ悪いセリフ”を吐いてくれたら、ヒロインもアクション起こすかもしれないからさ!」
「で、でも、そんなことしたら私、嫌われるじゃない……」
「そこが悪役令嬢の醍醐味だろ?」
……なんて、まったく噛み合わないやり取りをしているうちに昼休みは終了。
結局、“お弁当を落として殿下が拾う”みたいな定番イベントは起きず、拍子抜けに終わった。
(そもそも、私は破滅フラグを回避したいのに、どうして殿下から“もっと悪役やって!”なんて言われなきゃいけないの……。何だか変な学園生活になりそうだわ……)
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