100話 エピローグ――破滅フラグは消え失せ、周囲が転生者だからこそハッピーエンド一直線でしたの!
結婚式の翌日。王宮(と言っても再建途中だが)の仮大広間で、新婚夫婦としての祝賀パーティーが行われた。
今度は主賓が私と殿下で、国王や宰相、海外の貴賓、そして多くの市民代表も詰めかけて大盛り上がり。
悪役令嬢の断罪イベントとは真逆の“称賛セレモニー”が繰り広げられ、「セレスティア様、もう悪役なんて誰も思っていませんわ!」と皆が笑顔を向ける。
特に取り巻き令嬢ズは「せっかくですから最後にオホホホって高笑いしましょう!」
と懲りずにリクエストしてきて、私が「もう結婚式でやったじゃない!」と苦笑すると、「いやいや、もう一度見たいですわ!」などとわがままを言う。
殿下が「……ま、まあ、やりたければやってもいいが……」と妙に肯定的なのがまた困る。
結局、「じゃあ一回だけよ?」と渋々承諾し、私はドレス裾を軽く持ち上げて
——「オーホホホホ!」
と高らかに笑い声を上げる。
周囲がまたしても「きゃー!」と爆笑混じりの歓声を上げ、「やっぱりセレスティア様は最高!」なんて言っている。
殿下は半分呆れつつも微笑むばかり。私は心の中で「本当、悪役令嬢って何だったの?」と自問するが、これを喜んでくれる皆の顔を見ると“まあ、いいか”という気持ちになる。
そのパーティーの最後には国王が登壇し、
「かつては破滅フラグに怯えていたと言われるセレスティア殿が、この国を救い、王太子の妃となってくれたことを、私は心から感謝している!」
とスピーチをしてくれた。
私が破滅フラグに怯えていた事実を軽く茶化すように言うものの、国王も笑顔で「これで終わりではない。お前はこれからも国を照らす光として、共に未来を築いてほしい」と締めくくる。
拍手の中、私が深く一礼すると、「万歳!」と歓声が上がり、もはや圧倒的な祝福に包まれる。闇王など遠い過去の出来事
——まさに“ハッピーエンド”の完成形と言っていいだろう。
本当に私が破滅するはずの悪役令嬢ルートがあったのだろうか?
確かに前世の記憶ではそういうシナリオもあったが、ここでは転生者同士の干渉でいつの間にか国崩壊を回避し、私が“光の守護者”みたいなポジションにまで上り詰めてしまった。
たとえ想定外でも、結果オーライすぎる最終結果を迎えている。
パーティーの後、私は殿下と王宮のバルコニーへ出て夜風にあたる。
再建工事の足場が周辺に立っているが、それでも星空が美しく見える場所。
殿下が私の手をそっと握りしめ、「これが俺たちの新しい人生の幕開けだな……悪役令嬢とか婚約破棄とか言ってた時期が懐かしいよ」と囁く。
私も「ええ、ほんと。あの時は恐怖で仕方なかったのに、今じゃ全部笑い話だわ」と笑みを返す。
そんな私に、殿下は愛おしそうに目を細め、「お前がいてくれて良かった。破滅じゃなくハッピーエンド。これから先も、俺の隣で手を繋いで歩いてくれ」と言葉を重ねる。
私はうなずいて「もちろんよ」と答える。
背後にはまだゲストたちの騒ぎが続いているが、ここだけは静かな二人だけの空間。
胸が温かさに満ちて、私はかつての悪役令嬢恐怖がいかにちっぽけだったか思い知る。
「前世の私なら、この結末を“嘘でしょ”って笑ったかも。でも、これが現実。周囲が転生者だらけだからって理不尽? いいえ、みんな優しかったからこその今よね」
心のなかで呟くと、殿下がふっと微笑んで「どうした?」と問いかける。
私は首を振り、「なんでもない、ただの独り言よ」と囁き返す。
闇の王はいない。破滅フラグも消えた。あるのは幸せになっていく明日だけ
——それで充分だ。
こうして、私と殿下が正式に結婚式を挙げ、大盛り上がりの祝賀会を終える場面で幕を閉じる。
転生した“悪役令嬢”であるはずの私が、最終的には破滅とは無縁の最高ハッピーエンドを迎えるストーリー。自分でも驚くほど大団円となったが、実際に“断罪”は一度も起きず、仲間や殿下に支えられ続けた結果だ。
——そしてその後の未来には、いろいろな小波乱があるかもしれないけれど、闇の王を倒した私たちなら何が来ても大丈夫だろう。
たとえ“悪役令嬢ムーブ”をちょっと懐かしんで「オホホホ!」と笑っても、周囲はむしろ笑顔で応えてくれる。
破滅フラグどころか、王妃として歓迎される立場……
こんなに幸せになっていいのかと思うけれど、今は素直に受け入れよう。
私は殿下と寄り添いながら夜空を見上げ、心の奥でほほ笑むのだった。
「私が“悪役令嬢”なはずなのに、周囲が転生者だらけでなぜか破滅フラグどころかハッピーエンドまっしぐら」という物語。これで本当に最終幕だ。
いつか子どもができたら、「母上は昔悪役令嬢だったんだよ」なんて笑って話す日も来るかもしれない。
だけど今はただ、この幸福をかみしめて生きていこう
——私たちの新しい未来は、ここから始まるのですわ!?
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