春のあけぼの②
そして大会がはじまる。
今回も全6校によるトーナメント戦が行われ、その戦績で優勝チームが決まる。
二中のチームメンバーはいつもの6人だけど、今回はアッキーが控えに回ってメイがレギュラーに入っている。
そしてワタシたちは、一中戦、宮郷戦、殖蓮戦をすべて5-0で勝利して、連勝の勢いそのままに三中戦を迎えるコトとなった。
「「よろしくお願いします‼︎」」
コート中央で、両チームが礼を交わす。
先鋒のワタシの相手は、タッつんだった。
ワタシたちは視線を交わし合った後、コートの外へと戻る。
まさか、こんなに早くタッつんと再戦する機会がおとずれるなんて思わなかった。
抑えきれない高揚を胸に、ワタシは一礼と共にコート中央で蹲踞をする。
目の前のタッつんもキレイな蹲踞で、まっすぐに竹刀を構えている。
ホントに、以前対戦して時とは別人のようにまっすぐだ。
「はじめッ!」
主審のコールがかかると同時にワタシは――ワタシたちは竹刀を振り上げる。
「「面ェェェェェンッ‼︎」」
開幕直後の攻防は、お互いの竹刀が重なり、弾け合う。
「おりゃァァァァァッッッ‼︎」
タッつんの気合いの声が館内にこだまする。
「シャアァァァァァッ‼︎」
ワタシも目一杯の気合いで応える。
「小手ェェェェェッ‼︎」
タッつんは続けて、小手を目がけて竹刀を振り下ろす。
ワタシはそれを竹刀で弾こうとしたけど、タッつんはさらに竹刀を振り上げ、今度は面を目がけて竹刀を振り上げてくる。
「胴ォォォォォッ‼︎」
ワタシはすかさず体を深く沈めて相手の胴を目がけて一閃する。
お互いの攻撃は、わずかに外れて無効となる。
――あぶなかった……
ギリギリの攻防に、ワタシは少し肝を冷やした。
だけど、それと同時に高揚感はますます高まっていく。
――強い!
前に戦った時とは段違いだ。
ワタシはひとつ深呼吸を入れて、集中力を高める。
もっと速く、もっと鋭く、極限まで研ぎ澄まされた一撃を放つために。
「小手ェェェェェッ‼︎」
だけど、タッつんは間髪入れずに攻撃を繰り出してくるから、なかなか自分のタイミングで踏み出せないでいた。
なおも積極的に打ちこんでくるタッつんの攻撃をしのぐだけで、ワタシは精一杯だった。
しかも一方的に打ちこまれているから、審判から消極的と見なされて注意を受ける可能性もある。
それでも、ワタシの心に焦りはなかった。
いつものように、わずかなチャンスをものにするために集中力を高める。
そして、再びタッつんが動き出す。
――今だ!
ワタシもそれに応じて踏み出した。
「小手ェェェェェッ‼︎」
タッつんが繰り出した小手打ちを竹刀で擦り上げていなしながら、
「面ェェェェェンッ‼︎」
相手の懐に飛びこみ、面を目がけて竹刀を振り下ろした。
パシィィィィィンッ‼︎
たしかな手ごたえが伝わる。
審判3人の赤の手旗が一斉に掲げられる。
ワタシの面打ちが決まったのだ。
「くぅぅッ!」
くやしそうに声を上げるタッつん。
だけどその顔には、まるで遊びに興じる子供のような無邪気な笑みが浮かんでいた。
そして、開始線のところで再び竹刀を構える。
「面あり。2本目ッ‼︎」
試合再開と同時に、
「「面ェェェェェンッ‼︎」」
ワタシたちは同時に面打ちを繰り出す。
これも相打ちのため無効になる。
その後も、お互い何度も打ち合った。
「楽しいなぁ、ヒミカ」
まるでお互いの情熱をぶつけ合うように、何度も何度も。
「うん、楽しいね、タッつん」
ワタシたちはこの舞台の上で、すべてを出しつくすのだ。
「そろそろ……ケリをつけようぜ」
そろそろ試合終了の時間かというころ、肩で息をするようになったタッつんがそう告げる。
「そうだね」
ワタシたちは竹刀を向け合い、最後の攻防に挑む。
ワタシは肺いっぱいに息を吸いこみ、再び集中力を高める。
「りぁあァァァァァッ‼︎」
刹那、タッつんが動き出す。
「シャアァァァァァッ‼︎」
それに応じて、ワタシも速く、鋭く、深く脚を踏み出す。
「「面ェェェェェンッ‼︎」」
パシィィィィィンッ‼︎
お互いの竹刀が交錯し、たしかな衝撃音が響く。
残心を取って振り返る。
審判は3人とも赤い手旗を掲げていた。
ワタシの面打ちが決まったのだ。
ワタシは、ホッと脱力し、開始線に戻る。
「完全にやられたぜ」
開始線で竹刀を構えながら、タッつんが笑みを浮かべて言う。
「また、やろうよ」
ワタシがそう言うと、タッつんはさらにうれしそうに笑った。
「勝負あり!」
そしてワタシたちは、一礼と共にコートを後にする。
思えば公式戦は、ワタシにとって秋以来となるひさしぶりの大舞台だ。
そこで強いライバルと竹刀を交えるコトができたワタシは、剣道をやっていてよかった、と改めて感じた。
そして試合は、次鋒以降も二中が勝利を重ねて三中に勝利。
優勝に向けて大きく前進するのだった。




