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キラめき一閃!  作者: チーム奇人・変人
2→3年 春
57/66

春の和解③

「メイ、強くなって絶対四中に勝とう! このまま廃部になんかさせたくないよ」


 ワタシはメイにハッパをかける。同時にそれは、ワタシ自身に向けた言葉でもある。


「は、はい。でも私、レギュラーじゃないし……」

「何言ってんの。レギュラーの座を奪ってやる、ってくらいの気概を見せてみなよ。メイはせっかく恵まれた体格してるのに、その性格でソンしてるよ」


 メイはいつもツムの後ろに隠れていて、自分から前に出ようとはしない。小さいころのツムもそんな感じだったけど、そのツムは今は立派にひとり立ちしている。メイにも早くそうなって欲しいと思うんだけど。


「たしかに、先程の審査を拝見しても、レギュラーでないのが不思議なくらいしっかりとした試合運びをしていましたね」

「せやな。キミは中学入ってから剣道はじめたんじゃろう? ほいであれだけやれるんじゃけん、大したものぞな」

「ええッ? わ、私なんてそんなたいそうなものじゃないですよぉ」


 強豪校の2人がほめてくれても、メイはとんでもないとばかりにかぶりを振る。


「ああ、これはたしかに性格的な問題かもしれませんね」


 そんな姿を見て、テンテンがポツリともらす。


「でしょ? 自信がつけばイイんだけど、何かアイデアないかな?」

「そうですね……」


 テンテンは口もとに指をそえてしばらく考えこむと、


「違う自分を演じてみる、というのはいかがでしょう?」


 そう提案してくる。


「違う自分、ですか?」

「ええ。こうありたい、と思い描いた理想の自分、強い自分など、見せかけだけでもいいからまずは演じてみるのです」


 首をかしげるメイに、テンテンは優しい口調で説明を続けた。


「最初は演じているだけでも、それを続けているうちに本当に理想の自分に近づいているような気になる。そうすれば自然とそれが自信へとつながるのです」

「な、なるほど。まずは演じることからはじめるんですね。やってみます!」


 テンテンの言葉に刺激を受けたのか、メイは控えめながらもガッツポーズを作ってやる気を示していた。


 でも、普段はツンケンしてるテンテンがこんな親身に相談に乗ってくれるなんて、


「意外だなぁ……」

「何がですか?」


 ワタシがポツリともらした言葉に、テンテンは首をかしげる。


「他校のコなのに真剣に話を聞いてくれて、マジメにアドバイスしてくれるなんてさ」

「私は求められれば、自分にできる限りのことはしますよ?」


 テンテンはコトも無げに答える。


 改めて意外に思うし、それならもう少しワタシに対しても優しく接して欲しいものだ、とも思ってしまう。


「それにしても、理想の自分を演じる、かぁ……。もしかして、テンテンもそういう経験あんの?」

「わ、私ですか? あ、ありませんよ!」


 何気なくたずねた言葉に、テンテンはしどろもどろになって否定する。


 ――なんかアヤしくない?


 取り乱した態度を不審に思っていると、


菊池(きくち)はコスプレが趣味なんじゃ」


 またしてもセーラがあっさりとチクる。


「たぁぁぁきぃぃぃがぁぁぁわぁぁぁぁぁッ‼︎」


 怒りで顔を真っ赤にしたテンテンが、セーラの胸ぐらを掴んでガクガクと揺らす。


「ウチと菊池(きくち)はコスプレ仲間で、アニメキャラのコス着てようイベントにも参加しとるんじゃ」


 まったく意に介さず、セーラは満面の笑みでワタシたちに告げる。


「やめろと言ってるんだぁ!」


 テンテンは完全に取り乱して、ついには涙目になってしまう。


「へぇ、意外な趣味だね」

「くっ……笑いたくば笑えばいい」

「なんで? イイじゃん、コスプレ」


 ワタシがそう言うと、テンテンは目を丸くする。


「ワタシの友達にもカワイイ衣装を自作してるコだっているし、そういうのスゴいと思うよ」

「……」


 テンテンは落ち着きを取り戻して、ひとつ深呼吸する。


「ヒミカ……意外といい人なのですね」


 そして、これからポツリとそんなコトをつぶやく。


「当たり前じゃん。てか、意外とっていうのは余計じゃない?」


 ワタシがそう言うと、テンテンは少し笑った。

 

 ――なんだ、ちゃんと笑えんじゃん


 ようやく彼女の笑顔が見れて、ワタシはうれしいと思った。


「じゃあ、後でそのコスプレ画像送ってよ」


 ワタシが少し調子に乗ってそう言うと、


「お断りします」


 予想通り、にべもなく言われるけど、


「りょ〜かい⭐︎」


 代わりにセーラが答える。


「だから、キサマというヤツはぁぁぁぁぁッ‼︎」


 そして、いつものように取っ組み合いがはじまるのだった。



 その日の夜――


「ふぅ……そろそろ寝ようかな」


 読書を終えて時計に目をやり、ワタシは大きく腕を伸ばしてあくびをする。


 そして、歯を磨きに洗面所に向かおうと立ち上がったその時――


 ピロン!


 机に置いたワタシのスマホから通知音が鳴る。

 ワタシはすぐにスマホを手に取る。


「ツムから?」

 

 見ると、<MAIN(メイン)>にツムからのメッセージ通知が届いていた。


 チャットを開くと、


『どうしよう、ミカ(ねえ)! メイちゃんがグレちゃったよー!』


 という文字が表示される。


「ん?」


 なんのコトだろ、と首をかしげていると、


 ピロン!


 さらに通知音がなって、今度は画像が添付される。


 それはメイのプロフィール画面で、よく見るとそのプロフィール画像のメイは真っ黒なサングラスをかけていて、紹介文には<夜露○苦>という今時誰も使わないような挑発的な四文字が表示されていた。


「メイ……方向性ものスゴく間違えてるから……」


 ワタシは思わず頭を抱えてしまった。


 そしてすぐにメイにメッセージを送り、やめさせたのは言うまでもない。

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