春の和解②
まあ、とりあえずテンテンと仲良くなる、っていう当初の目的は果たせた。
ワタシたちはその後、お互いの部の近況を話し合ったんだけど、そこで改めて感じたのは、やっぱり四中は層が厚いというコトだ。
まず、単純に部員が多い。
四中の剣道部員は現在15人もいて、4月になれば新入生も入部するからさらに増える。
人数が多いというコトは、不調な選手が出てもすぐに換えが利くというメリットがある。
ワタシたち二中は6人しかいないから、交代できるのはひとりだけ。
今はだいたいメイが控えで、たまにアッキーかトモっちと交代するくらいだ。
「ですが、二中には素晴らしい指導者がいるではないですか」
食後のコーヒーを飲みながら、テンテンが言う。
たしかに、ワタシたちの顧問――緒方先生は5段の腕前を持つ女傑だ。
部員の数が少ないというコトは、そんな強者と竹刀を交える機会が増えるというコトでもあり、それは二中の唯一のメリットかもしれない。
「でも、四中さんはレギュラーに1年生が2人もいらっしゃいますよね? たくさん部員がいらっしゃるのに1年生でレギュラーに選ばれるんだから、やっぱり四中さんはスゴいですよ」
メイが少し身を乗り出して言う。
彼女の言うとおり、四中のレギュラーはリンリン、テンテン、セーラの3人が2年生で、残りの2人は1年生だ。
強豪チームの中で1年生のうちからレギュラーに選ばれるのは、相当の実力者だし、それはそのまま選手層の強固さを物語っている。
「そうじゃのう。1年はイキのええのが多いけど、やっぱり栗田、矢島、下田の3人は別格じゃのう」
セーラがしきりにうなずきながら言う。
二中にもツムという強い1年生がいるけど、四中にはそのツムと同じくらい強い1年生が少なくとも3人はいるというコトだ。
「それ以前に、まずは部員確保が急務なのではありませんか? 大会出場うんぬんよりも、部の存続自体が心配だと思うのですが」
少し真剣な口調でテンテンが言う。
「どゆコト?」
「ヒミカたちが引退した後のことを言っているのです。1年生が2人しかいないのですから、この春に少なくとも新入生が3人以上入部しなければチームが組めなくなりますから」
その言葉に、ワタシハッとした。
今まで自分が引退するまでのコトしか考えてなかったけど、彼女の言うとおり今年新入生を確保しなければ部そのものが消滅してしまう恐れもあるんだ。
「どうしよう……」
「気づいていなかったのですか?」
困り顔のワタシを見て、テンテンが呆れたようにため息を吐いた。
「まあ、新入生が3人以上入れはいい訳ですし、もし心配でしたら実績を残せばよろしいのではないですか?」
「実績?」
「ええ。たとえば、全国大会に出場する、とかですね。たしかな実績さえ残せば、たとえ部員が規定人数を下回ったとしても、すぐに廃部になることはないでしょうから」
「なるほど……」
テンテンの言葉に、ワタシは大きくうなずいた。
二中剣道部のスローガンも<とにかく優勝>だし、それを達成すれば最悪の事態だけは免がれるかもしれない。
そうだ、まだ希望の光は残っているんだ。
「まあ、私たちがいる限り、全国大会出場なんて夢のまた夢でしょうね」
「ぐぬぬ……」
はげましてくれたのかと思いきや、今度はニヤリと不敵な笑みを浮かべて自信満々に打倒宣言をしてくるテンテン。
何をするにしても、高い壁として必ず前に立ちはだかるのは、やっぱり四中だ。
せっかくみんな一致団結してがんばっているのに、ワタシたちが引退したら部がなくなってしまうのはスゴくさみしい。




