春の和解①
ワタシたち4人は、会場付近のファミレスに移動した。
お昼時だからけっこう混んでいたけど、運良くちょうど席が空いたタイミングですぐに座るコトができた。
とはいえ、相向かいの席にいるのが四中の菊池と瀧川というのは、なんかスゴく不思議な気分だ。まあ、誘ったワタシが言うのもなんだけど。
テーブルの上には、ワタシとメイの前にハンバーグセット。菊池の前に和食御膳。瀧川の前にオムライス。そして、中央にみんなでシェアするためのフライドポテトが並べられている。
ワタシたちは食事をしながら、お互いの近況などを話した。
そして、当初の目的どおり菊池と<MAIN>のアドレス交換を済ませ、一緒に瀧川とも交換した。
「菊池さん、てさ。SNSでもそのまんま<菊池>なんだね」
<MAIN>上の彼女のプロフィール画面には<菊池>の名前と共に、剣道着姿でクールに澄ましている本人画像が表示されている。
なんというか、スゴくこのコらしい感じがする。
「私は菊池なんだから当たり前です」
にべもなく言い放つ菊池。
ちなみにワタシはSNS上では<HIMIKA>表記だ。
「ねえ、菊池さんて下の名前なんていうの?」
「なんでアナタに教えなければならないのですか?」
何気なく聞いてみたけど、相変わらずの拒絶反応だ。
「せっかくこうして仲良くなったんだからさ、あだ名で呼び合おうよ。ね?」
「断固拒否です!」
「ええな!」
ワタシの提案に、またしても正反対の反応を示す2人。
「で? 下の名前は?」
ワタシはかまわず問う。
「絶対に教えません!」
「テンカやで」
「瀧川ァァァァァッ‼︎」
あっさりとチクられて、菊池は怒りの叫びを上げながらテーブルをバンっとたたいて立ち上がる。
すると当然周囲からの視線を一斉に浴びてしまい、菊池は口をつぐんでおずおずと着席する。
「テンカ、ってめずらしいお名前ですねぇ。どう書くんですか?」
「天気の<天>に、人偏に土2つの<佳>や」
メイの言葉に瀧川が解説する。
「へぇ〜、スゴくカワイイ名前だねぇ〜」
「くぅぅ……」
名前のコトで勝手に盛り上がるワタシたちを、菊池はうらめしそうに睨む。
「じゃあ、あだ名はテンテンで決まりね」
「テンテンッ⁉︎」
大きな声を上げてくわっと立ち上がるテンテン。再び衆目を集めてしまい、頭を下げて座る。
「なんなんですか、そのはずかしい呼び方は? やめてください!」
「え〜? カワイイじゃん、テンテン」
「はい、カワイイと思います、テンテン」
「めっちゃカワイイぞ、テンテン」
「うわぁ、その名を連呼しないでくださいッ‼︎」
みんなからその名を呼ばれたテンテンは、ついには頭を抱えて悶えてしまう。
「それじゃあ、瀧川さんは……」
一方、瀧川の<MAIN>のプロフィールには<セーラ>と表示されている。
「<セーラ>で決まりね」
「え?」
ワタシの言葉に真っ先に反応したのはテンテンで、
「瀧川は名前が星羅だからセーラ……。では、そちらの方のあだ名は?」
彼女は納得のいかない様子で、メイを指し示してたずねる。
「メイ? メイは名前が芽衣だからメイだよ」
「そのまんまじゃないですか! でしたら、私もテンカでいいと思いますがッ‼︎」
テンテンは興奮気味に不満を向ける。
「え〜? テンテン、ってカワイくてイイと思うけどなぁ。リンリンもそうだけど、スゴく語呂がイイんだよね」
「リンリン⁉︎ お嬢さまをリンリンと呼ぶなど、なれなれしいにも程があります!」
ついには怒り心頭といった感じで抗議するテンテン。
「でも、リンリンはスゴくよろこんでくれたよ?」
「うっ……」
リンリンを引き合いに出されて、テンテンは何も文句が言えなくなって、
「……アナタのそのネーミングセンスは理解しがたいものですが、いいでしょう。この屈辱、甘んじて受け入れましょう」
ついにはあきらめたようにテンテン呼びを了承するのだった。
でも、ぜんぜんよろこばれてないのがちょっと納得いかないなぁ。ネーミングセンス、悪くないと思うんだけどなぁ……。




