冬の青春
冬休みが終わって、今日から3学期が始まる。
まあ、ワタシたち剣道部は部活で昨日まで毎日登校してたから、特に変わりはないんだけど。
変わりはないといえば、凍えるような寒さも相変わらずだ。
幸いまだ雪は降ってないけど、それでも凍れるような寒さに加えて北から吹き下ろされる山風が余計に体温を奪い、誰も彼もが身をすぼめている。
「う〜、さむッ!」
ワタシは駐輪場に自転車を停めると、たたきつけるような強風に体を震わせる。
群馬県の平野部は年中風が強いけど、特に冬の風は格別だ。天気予報だと、近いうちに大寒波が下りてきてここら辺でも雪が降るって言ってたから、その影響で風も余計に冷気をまとっているんだと思う。
――雪はヤダなぁ
はぁ、と吐き出した息が瞬く間に真っ白に染まる。
ワタシは自転車のカギを閉めて、校舎へと向かう。
ちなみに、自転車はこの前<コジマサイクル>に持って行って整備してもらったから、もう以前あったような異音はなくなっている。
コジマが整備してくれたんだけど、その手際の良さはさすが自転車屋の息子、といった感じだった。
ワタシはその時、改めてコジマに礼を伝えた。
誕生日プレゼントを贈ってくれたコト――
不安なワタシの背中を押してくれたコト――
コジマは、おう、と笑顔で応えてくれた。
ワタシたちはもう、以前のような関係には戻れない。コジマが強くなりたいと願って大きく変わったように、ワタシもまた変わらなくちゃいけないんだ。
ふと前に目を向けると、校舎に向かう人波の中に、よく見知った大きな背中を見つける。
ソイツは両手をポケットに入れたまま、のん気に大きなあくびをしている。
ワタシはソイツに向かってダッとかけ出すと、
「ボケっとしてんなよ、ソウタ!」
そう言ってトモっちみたいに背中をバシッとたたいて、その横を通り過ぎる。
ソイツの――ソウタの驚く声がワタシの耳もとをかすめる。
ワタシはくるりと振り返り、
「ワタシ、大人しく守られてなんかやらないんだからね!」
彼からの告白に対するワタシなりの答えを伝える。
最初は目を丸くしていたソウタだったけど、
「お前らしいよ、ヒミカ」
すぐに笑顔で返してくれた。
ワタシもほほ笑みを返し、校舎へとかけ出した。
周囲のヒトたちがみんな、ワタシに目を向けているのがわかる。
はずかしさと高揚で胸がドキドキする。
真冬の寒さだというのに、胸の中はポカポカとした暖かさで満たされていく。
――ああ、そうか……
このドキドキと一緒にある充足感が――この青クサい温もりこそが青春なんだ、ってワタシは気づいた。
青春なんて古クサい?
青春なんてダサい?
笑いたいヤツは笑えばイイ。
この青クサさをあざ笑うヤツに、サイコーの青春なんてやって来やしないんだから。
この温もりを素直に感じられないヤツなんて、人生をソンしてるだけだ。
――ワタシ、サイコーに青春してるんだ!
雲越緋美華 15歳。
季節は冬だけど、ワタシは今、青春の真っただ中だ。




