秋の東京③
せっかく東京にいるんだから、とワタシたちは試合を終えたコジマと一緒に観光を楽しむコトにした。
東京スカイツリーの天望デッキに登って、東京の街並みを眺めた。
浅草では花やしきで遊んで、浅草寺にお詣りもした。
ひさしぶりの東京観光は楽しいけど、コジマもすっかり笑顔を取り戻して楽しんでいるみたいで安心した。
そしてワタシたちは最後に、浅草もんじゃの店に入った。
本場のもんじゃ焼きもひさしぶりで、ワタシたちは桜エビや明太子の入ったボリュームたっぷりのもんじゃ焼きを楽しむコトにした。
「「「おつかれーーーッ‼︎」」」
ワタシたちはジュースで乾杯する。
そういえば前も伊勢崎のもんじゃ焼き屋でこうして3人で食事を楽しんだけど、あの時もコジマが主役だったっけ。
「伊勢崎もんじゃも美味しいけど、浅草のもんじゃも美味しいねー!」
「だね。コジマ、もっと食べてイイよ。今日はアンタが主役なんだから」
「マジで? 朝バナナ食べただけだったから、腹減ってたんだよなぁ」
和気あいあいと食事を楽しむ。
「いやぁ、やっぱ全国のレベルは違うよなぁ。それを知ることができただけでも来た甲斐があったよ」
もんじゃを食べながら、コジマが振り返る。
「うん。でもソウちゃん、カッコよかったよ」
「ワタシも、コジマがここまで強いとは思わなかったよ。スゴくがんばってたんだね……」
ワタシたちがそう言うと、ピタリとコジマの手が止まる。
「いやぁ、2人がせっかくここまで応援に来てくれたんだから、優勝したかったんだけどなぁ!」
そう言っておどけてみせるコジマ。
だけどすぐに顔を伏せると、彼の目からはボロボロと大粒の涙があふれ出し、
「オレ、勝ちたい……。もっと強くなりたい……」
ずっとガマンしてたんだと思うくやしさを、ここで吐き出すのだった。
「ソウちゃん……」
「コジマ……」
勝ちたい――
強くなりたい――
それはワタシ自身の思いでもあった。
秋の新人戦では、たしかにワタシは勝利するコトはできた。だけど内容はとても褒められたものじゃないし、その後すぐにメイと交代させられたのも、ワタシがまだ信頼を得られる程強くないからだ。
ツムもたぶん、同じ気持ちを抱いていると思う。
ツムは団体戦で三中の部長カッシーと対戦して引き分けた。その後に行われた個人戦で、ツムは準決勝で再びカッシーと対戦して、その時は一本取られてそのまま負けてしまった。
イイところまで勝ち進んでいただけに、くやしさもひとしおだったと思う。
それに、団体戦でチームは三中に勝利したけど、その後に宮郷中に負けてしまった。まだまだ安定感に欠けるチーム事情も課題だ。
『頼む、キミの力を貸して欲しい! 父の期待に応えるために。二中剣道部の向上のために!』
夏祭りの時、ワタシはシーコにそう懇願された。
戸惑いもあったけど、ワタシは<二中を団体戦で優勝させる>という彼女の目標に賛同し、もう一度がんばる決意をした。
だけど、こんな調子じゃまだまだダメだ。
勝ちたい――
強くなりたい――
今日のコジマの姿は、そんなワタシの決意を再認識させる。
これだけくやしがれるんだ。コジマはきっと強くなれる。
そして、ワタシも――
「……そうだね。強くなりたい。強くならなくちゃね……」
ワタシはまるで自分に言い聞かせるように、コジマの肩に手をあててそう言った。
帰りの電車の中――
泣き疲れたのか、コジマは座席に座ったままツムと一緒に眠っていた。
――お疲れ、コジマ
ワタシは彼の寝顔を見つめながら、心の中でつぶやいた。
外から差しこんだ夕焼けの茜色が、ワタシの網膜を刺激する。その優しくて烈しい光のヴェールは、切なさと情熱で包み込んでこの心ににじんでいくような気がした。




