第68話 プリンセス指数 被験者 200名
<ララ>
せっかく、SVNに来たので、カルマポイントのついでに、プリンセス検査の正体の資料もあったので私は読んでいた。
調査報告書によるとある日、魔法のあるこの世界で被験者200名を対象に統計がとられた。
男と女に夢のスライド次々と見せ、脳内のホルモン物質を計測。計測後は夢の記憶を消す。そして、相関関係の高そうなホルモンの種類とスライドの組み合わせを使ってニューラルネットワークを使って数式を編み出した結果、男が10-35 女は65-90の範囲におさまる確率は95%を超えた。
ハーティガンのディップテストが行われており、統計学的に二峰性の分布曲線として有意性があると一応証明されている。
統計的裏付けとしては申し分ない。全く科学的根拠に欠如しているとまでは言えないだろう。だが、これだけで心の性別を表している数字であるとするのは若干、論理の飛躍がある。
たとえば、男の方が女より、全体的に身長が高い傾向があるが、男の平均よりはるかに身長の高い女を男の肉体の持ち主であるとカテゴライズするのには、無理がある理屈であることは誰でも直感的にわかる。
だが、この数字はいずれ、人物を評価する数値として定着していく予感はする。
1950年代、日本、ある中学教師により、学力偏差値というものが発明された。この発明により、学校は学問の質ではなく入学難易度で格付けされることになり、必ずしも実態とは一致しない学歴のブランドが生まれた。その当時の大人には批判された数字であり、また、1970年代などは受験戦争への批判が国民的関心ごとであったが、やがて当時の受験生たちが大人になり高齢者になる頃には、昔からある由緒ある伝統の数字として、学校の品格を表すものだと広く信じられるようになった。
プリンセス検査も今は私のように懐疑的な人間はいるだろうが、やがて、誰にも止められない権威に育って、進学、就職、あるいは入れるトイレなどに影響を与えていくことはありうることだ。私たちはその過渡期を生きる証人になっていくのかもしれない。
今は、カルマポイントのことで手いっぱいだが、いずれ、戦うことになるテーマかもしれない。




