表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/78

第54話 ジャーナリスト精神 反骨精神 90%

<スピリトーゾ>


新聞部部長の俺は退屈な季節が来たことを嘆いていた。


「また、選挙の季節かよ。新聞部としては記事の書き甲斐がなくてつまんないんだよな」


「政治に興味を持つのは市民、そして学生の責務だと思いますが」


コモドのやつが、たしなめるが、俺は反論する。


「政治がつまんねぇとか興味持てないってわけじゃないんだよ。ほら、選挙の記事って、自由度が低いというか、代々受け継がれてきたフォーマットで書いて、大人のチェックを通らなきゃいけないじゃないか。取材とかしたところで、書けることの幅が狭い。だから、つまんねぇ。記者じゃなくてただの校正マンだ」


「校正は立派な職業ですから、そのような不用意な発言をされては困ります」


「まあ、とにかく、そういうわけで、記事のフォーマットが決まっているわけだ。たとえば、1年生の書記の記事なんかは、保守の支持を得ているグルーヴの記事が10行でかでかと書けるが、無所属のララなんかは1行で書けって上から言われている。大人たちに選挙結果、操作されてるようなもんだな」


「グルーブの評判の悪さは噂になってますよ。女子にボディタッチ仕掛けたりとか、ナード男子なんて希少なMTG系のカードを奪われてるとか」


「だからこそ、やつがこのまま当選するのが気に入らねぇんだ。一矢報いて大人たちをぎゃふんと言わせたい。そう思って、ララを取材したわけだ。そしたら、泣かせる背景持ってるわけだ。父親がリザードマンで、傭兵で貯めた金で入学金と高価な古文の資料集を買ったあげく戦死したとか。こりゃあ勝たせてあげたいと思ったね。マイノリティに同情的なリベラルだけじゃなく、退役軍人が身内に居る保守層にも絶対に響く。たとえ敵対勢力への愛郷心だとしてもだ。パトスとロゴス、いわゆる感情と論理だな。論理を訴えるのはララは得意だが、感情に訴えるのが不得手だ。選挙ってやつは、結局は、感情をいかに動かせたかだ。そこんとこを記事で補強してやろうってわけよ」


「とはいえ、選挙は中立の報道が求められますよ」


「そうだろうな。だからこそ、せめて、平等に5行ずつくらいにしてやりたい。大人たちが、利害関係や数字を追うのに必死なあまり、忘れてしまったジャーナリスト魂を、俺の手で取り戻してやるんだ。未来を切り開くのは俺たち学生だってことを思い知らせてやるんだ」


「うまくいくでしょうか」


「手は考えてある。大人から言われたとおりに作った原稿Aだな。これを先生に提出し、そして、印刷所には、ララについて書いた原稿Bを提出する。シンプルなトリックだ。だが、人は簡単に騙される」


「我々、新聞部、クビにならないですかね……」


「なったらなったときだ。人生長いんだ。なんとでもなる」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界サックス!元男子の美少女ジャズ奏者の揺れる乙女心 魔法と音楽の男女入れ替わりファンタジー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ