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第53話 本当の自分 アンケート回答率 40%

<ララ>


「選挙の中間結果見たか?」


テヌートくんが珍しく自分から話しかけてくる。実のところ、フォルルンという接点で結びついてはいるものの、そんなに打ち解けているわけではない。


「私が45%でグルーヴが55%。思ってたより接戦みたいね」


正直、魔族の女という属性の私がここまで健闘できているのは驚きだ。


「まあ、これは予想通りだ。ここは保守的な地域とはいえ、ハイスクールに入るとなると、いくらかリベラル寄りの金持ちの子女も多い。多様性入学をした生徒も多い。それがほぼ45%ってことで、リベラル支持率そのままってとこだな」


軍人の子と聞いていたから、もっと辛辣な評価を下すと思っていたが思ったより、中立的だ。


「思ったよりは伸びてる。でも、このままじゃ勝てない」


思いをぶつけてみる。


「まあ、リベラルの欺瞞に対して、不平を持っている家庭は多い。グルーヴが自己中心的なクソ野郎ってことは、噂でも十分出回っている。書記になってもろくなことはしないだろう。保守の中でもやつに投票するのは恥だという認識だ。だが、そうだとわかっていてもやつが支持されるのは根が深い。長年にわたるリベラルに対する失望があるのさ」


「なるほど」


リベラルに対する失望。それは、リベラルルームで自分も薄々感じていたことだ。


「中間結果は、匿名であるとはいえ、アンケート内容を深読みすれば、誰が回答したか、突き止められなくもない塩梅にできている。民主主義の危機ってやつだな。そんなばればれの投票ですら、グルーヴのやつが優勢ならば、完全匿名の本番選挙は、もっと大差をつけてやつが勝つ」


「ずいぶんと、親身になってアドバイスしてくれるのね」


疑問をぶつける。


「いくら俺が保守でもグルーヴのクソ野郎を支持できないのが一つだな。シャープを裏で操ってるあいつを許せるわけがない。そもそもやつは保守陣営のバックアップを受けているだけで、それほど思想が昔ながらの保守ってわけでもない。自信満々であるがために、社会の閉塞感を打破してくれそうな雰囲気だけだ。あくまでそれも雰囲気だ。もう一つは、あんたも自分で思ってるほど、リベラルでもないぜ?」


「どういうこと?」


「あんたは、既存の保守とリベラルの対立軸から、アウフヘーベン、つまり意見のぶつかり合いの副産物で世の中が良くなるという昔ながらのフレームワークに限界を感じている。今やリベラルと保守がぶつかっても公害しか生み出さない。違うか?」


「確かに。近年は、保守もリベラルも明後日の方向に走っているとは感じていて、地に足がついた何かを生み出せないでいるとは思うけど」


「自分の言葉で喋らないか? この中間結果はリベラルルームの連中が作ったマニュフェストを読んだだけのものだ。あんたへ対する評価じゃなく、リベラルへの評価だ。このままじゃ勝てないぜ?」


「無党派として出ろっていうの? 過去の選挙結果を見たら保守が7割、リベラルが3割勝っていて、無党派なんて出ても勝ったことがない」


「時代の変わり目は今まで起きなかったことが起きる。そこに賭けてもいいんじゃないか?」


リベラルの私ではない、生身の人間の私。


そんな私の声を聞いてくれる人は果たしてどれくらいるのだろうか。閉塞感で満ち満ちた現代。突破口を望んでいる人はたくさんいる。


でも、怖い。自分を曝け出すのが。私は……私は……。

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