表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/78

第27話 お風呂にて女同士の会話 友情度 85%

<ラルゴ>


夜なのに、先輩から外に待ち合わせだと呼ばれて行ってみたけど、誰もいないじゃないか。いったいなんなんだ。ううう。今日はなんか色々あってストレスがたまる日だ。女の子の生活も楽じゃないなあ。


「ただいまー」


女子寮に戻り、ドアを開けると、隣のクラスの女の子が歩いていた。下着姿で。


「わーっ!」と僕が叫ぶと「おかえりー」と、真顔で返事。


「だ、だめだよ。こんなところ下着でうろついちゃ!」


「なんで?男子が見てるわけじゃなし。女の子同士じゃんねー」と、同意を求めてくる。


「だ、ダメだよ。女の子同士でも、お行儀悪いからダメなものはダメ!」


目を逸らしながらしばらく問答をしてたら、2年生の先輩がやってくる。


「こら! 真面目な子からからかうんじゃないの。服着ろ」


「はーい」


僕はからかわれていたのか。通りすがりの女の子がちらちらと僕を見る。ぼ、僕、何かした?


あたふたしていると、どこのクラスかわからない女の子がふたり僕の両脇に現れる。


「ねー。お風呂一緒に入りましょ? あなた、いつも、誰もいない深夜に入ってるでしょ」


「うう。裸が見られたくないんです。ごめんなさい」


「いいじゃないの。女の子同士、誰も気にしないよ」


やけに、お誘いが多い日だ。


「ごめんなさい。やっぱり一人で入らせてください。一人がいいんです」


2人は驚いたような表情で顔を見合わせると去っていった。


別の同級生がさらに現れて「人狼で遊びましょ」とのお誘いが。


「ルールあまりわかんないです」


「いいからいいから、手取り足取り教えてあげるから」


ルールを教えられるがままにゲームをこなしていく。


「この子、嘘つくの下手だ」


「ごめんなさい……」


嘘をうまくつかなきゃいけないゲームなのに、僕のゲームスキルのなさが露わにされる。


「いいんだよ。それはいいことなんだよ。君の長所」


「そ、そうかな」


褒められているようなそうでもないような。


「あ、そうだ。ララって子が君の悪口を言ってたよ。ブスだし気持ち悪いってさ」


「ララはそんなこと言う子じゃないよ!」


1人の女の子が口に出すから、反射神経で思ったことを返してしまった。


「ご、ごめんなさい。生意気言って」


部屋にいる女の子たちは考え込むような表情をする。何か変なこと言ったかな。


「いい子だよ」


「うん。いい子だよ」


僕のことを言ってるのだろうか。


「うん。もういい。部屋に帰って」


誘ったかと思ったら追い出されてしまった。何が起きているのやらさっぱりだ。


部屋に戻ると、ララが手招きをする。


「夜風に当たろっか。夜景見たくない?」


誘われるままに、外に出て、少しだけ山登りをする。ハイスクールと女子寮は、標高が高いところにあり、少し上ると街を眺め下せる。美しい夜景だ。


「きれいな街ね。魔界とは大違い」


感激したようにララは言う。


「魔界って、どんな風景なの?」


「薄暗くって気味が悪いかな。だから、魔族は人間界に侵略戦争をしかけたの。気持ちはわかるけど、人間たちもそりゃ怒るわよね。誰だってこんな美しい風景を守りたいって思うもの」


ララの瞳がキラキラと宝石色に光る。深呼吸をした後、ゆっくりと僕の瞳を見つめる。


「私、何があってもあなたの味方だから。私、あなたに何かがあったら……」


言葉の途中で言いよどむ。何を言おうとしているのだろうか。


そのとき、ララのバイブの音が鳴りポケットの中が光る。


「あ、魔法メールだわ。うんうん」


ララは何かの文章を息を止めて読み、泣いているような笑っているような不思議な表情になった。


「来週、3人が寮を引っ越すってさ」


「3人も!? いったいなんで? 何があったの?」


本当に寮で何が起きているのだろうか。寮長を巡った仲間割れ?


「たった3人だよ! 日頃の行いの良さと人徳としか言いようがないよ! 認められてるよ!」


ララは涙を拭うような仕草をした。


どういう話だ。寮長が人望を取り戻したとでもいうのか。


「私たち、これからも一緒だからね」


両肩に手を伸ばしぎゅっと握りしめられる。


「う、うん。ちょっと夜景を見ただけで大げさじゃないかな」


変なララ。


深夜になり、いつものように、誰も居なくなったお風呂に入っていると、ドアの音が鳴る。


だ、誰? どうしよう! 女の子の裸を見てしまう。


「よっ!」


「せ、先輩!」


3年生の先輩が入ってきた。タオルで隠すべきところを隠しているとはいえ居心地悪い。


「で、出ます」


「出なくていいから、女の子同士の話をしようじゃない」


「は、はい」


圧に気おされて風呂に押し戻される。


「どう? 女子寮生活慣れた?」


無言でうなづく。


「んじゃあ、自分語りさせもらうよ。あたしさー。ミドっていうんだけど、子どもの頃から男の子と喧嘩ばっかしててさ。ここの学校に来ても、裏ボスだとか王子様だとかゴリラとか言われててさ、女らしさの欠片もないんだ」


男のように豪快に笑う。


「は、はあ」


「男だとか女だとかどうでもいいと思わない? まあ、あんたはあたしから見たらお姫様かっ! ってほど女の子らしいけどさ」


「そ、そんなことは」


「まあ、褒め言葉は素直に受け取っとくもんだよ。女の子らしく振舞いたくても振舞えない子が多い中で、あんたは恵まれている。天性の乙女の才能があると思うんだ」


「う、うう。あ、ありがとうございます」


「奥ゆかしい反応がかわいい。好きな子いるの? 男でも女でもいいけど」


「ええっ」


「なんかさ。誰かに恋してそうな顔してるんだよね。ま、言わなくてもいいけどね」


がっはっはと豪快に再び笑う。


「誰かにいじめられそうになったら言ってよ。私がガツーンとやってあげるから」


それだけ言うと、ミド先輩はお風呂を上がっていった。怒涛の一日が過ぎ、僕は、眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界サックス!元男子の美少女ジャズ奏者の揺れる乙女心 魔法と音楽の男女入れ替わりファンタジー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ