第23話 悪夢の身体測定と心の性別が判明 心の性別 ??%
<ラルゴ>
「これから健康診断をはじめる」
担任の先生の言葉に僕の体は固まった。頭が真っ白になる。女子が下着姿になる中に混ざることになるからだ。
言うまでもなく僕は男だ。女子寮にいるときも、みんな入り終わった遅い時間帯に入るし、着替えるときもララの方を見ないようにしている。女の子の気持ちに立ってみれば、心が男の人間に下着姿を見られることがどれだけ、自尊心を傷つけることだろうか。僕は想像を巡らせた。
かといって、自分が男だと名乗り出るのも少し勇気がいることだった。腫れ物のような扱いを受けて学生生活を送ることになるかもしれない。この保守的な地域で、女体化男子がどんな目に遭うか。恐怖心が勝ち、僕は黙っておくことにした。自分の意気地なさに心底嫌になった。
僕の心配とはよそに、制服の着衣のまま、身体検査は進んだ。胸部のサイズをはかるのも着衣のまま。胸に変な吸盤をつけるプリンセス検査というものをするときは、ブラジャーのみの上半身裸になったものの、女医と個室でマンツーマンで実施され、他の女子生徒の半裸姿を見ることはなかった。
同じクラスになったシャープは舌打ちをしてがっかりしたような顔をしていた。裸見たかったんだなあ。そりゃ、普通の女体化男子はそうか。僕が変なのかな。
検査が終わると、教室に戻り、担任の先生が神妙な顔をしていた。
「このクラスに、男の心を持った女がいる」
その言葉に心臓が止まりそうになった。ぼ、僕のことじゃないか。
「プリンセス検査というものを実施したが、その結果が出た。0に近いほど心が男で、100に近いほど心が女の持ち主ということになる。男であれば普通は10から35、女であれば65から90になる。それを外れた者は異常値ということになり、再検査になる」
「先生! それをこの場で発表しようということですか?」
教室はざわつく。
「そうだ。まずは男子生徒から。アレックス、20」
その後も、30、28、12、19と発表されていく。自分の心の性別が発表されるのだから、男子生徒は羞恥心にまみれながらもそれを次々と受け入れていく。
「ラルゴ、55! 異常値だ。お前、心が少し女寄りなのか? 異常値。再検査だ」
「はーい」
フォルテの心は思いのほか、中性寄りだったんだ。確かに、僕の心と交換する前からたくましかったけどさ。それでも、こうして、心の性別が女子寄りの数字が出るってことは、僕の数値も男子の数値が出るに違いなかった。
「女子生徒! アリス、68!」
73、90、81、66と次々と女子生徒の心の性別があらわにされていく。
「シャープ、30!」
あからさまな外れ値に教室がざわつきはじめ、視線がシャープに集まる。
「ちっ! ばれたか。突っ込まれる前に自白するが、俺は女体化男子だ。文句あっか?」
開き直っている。ど、どうしよう。このままだと僕の正体が男だと100%バレる展開じゃないか。逃げられないよ。
「後で話があるから職員室に来い」
何事もなかったかのようにシャープに続いて88、71、73と次々と女子生徒の心の性別が発表されていく。
そして、僕の順番が来た。うわあああ。女体化男子なのに女子寮に入っていることがばれちゃうよおお。
「フォルテ、78!」
78! 男だってバレちゃったあああ。ん? めちゃくちゃ高くない? 普通に女子の正常値じゃないか。
何事もなかったかのように先生は、69、75、81と他の生徒の心の性別を発表していく。
つ、つまり、ぼ、僕の心が女子だってこと? 確かに、子どもの頃、おままごとや編み物、一輪車が大好きだったけどさ。まさか、そんなこと。嘘だっ!




