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第11話 炎のドラムソロ 陰謀度 60%

<ラルゴ>


白の下着とワンピース型のパジャマが置かれていたので着ることにした。なんか、これの方がフォルテの体にはにあっているように思った。ブラジャーを悪戦苦闘してつけてみる。ゴワゴワして着心地が悪い感じだとまちがった付け方だなということが直感的にわかり、試行錯誤を繰り返す中、なんとか収まりのいい付け方を見つける。合ってるように思うけど、上下逆とかないか不安が残る。


部屋に戻るとテヌートが目を覚ましていた。優しい目で微笑みかける。それがトリガーで再び、僕の体が光りだす。ま、まさか! 3回目でようやくわかった。男性に胸がときめくと体が光りだすんだ! ぼ、僕は男だぞ。男にときめくなんてそんなこと認めたく、認めたくないけど。やだやだやだ。心が見透かされるようでやばい。やばすぎて語彙力もやばい。


「爺やから聞いたよ。懸命の看病をしてくれたんだね。ありがとう」


声が出ないのでパジャマスカートをつまんで深くお辞儀する。


「ところで、色が思ったように見えないんだ。色覚異常っていうのかな。一応、誰がどこに居て何があるかはわかるんだ。赤とか青とか大雑把にわかるけど、光の強弱がわからないんだ。君を庇った時、魔女に呪いをかけられたのかもしれない」


心配になる一方、体が光っていることが、バレずに済んで安堵する。


その刹那、ガラス窓が激しくガンガンと鳴り響き、外からの大音声が屋敷を揺るがす。


「貴様たちを生かしてこのまま逃すと思ったか! この屋敷ごと焼き尽くしてやる!」


狂気に満ちた叫びが轟くと同時に、炎のような赤黒い何かが窓を目がけて噴射され、鋭いひびが窓ガラスに走った。瞬く間に部屋の温度が上昇し、皮膚を焦がすような熱が襲いかかってくる。


「魔女だ! 復讐にきたんだ、やっぱり……君は甘すぎたんだ。あの女に情けをかけるべきではなかった、滅するべきだったんだ!」


背筋に冷たい恐怖が走る。しかしその緊張を打ち破るように、不敵な笑みと共に声が響く。


「いいこと言うねぇ。俺もお前とは仲良くなれないと思ってたけど、少しは気が合うかもな?」


部屋の扉が乱暴に開かれ、そこに現れたのは……僕と全く同じ姿をしたフォルテだった。彼の気迫に部屋の空気さえ変わるような錯覚を覚える。


「ラルゴ! 貴様、なぜここに?」


「魔女の魔力の残滓を感じ取ってな。ケンカ別れしたふりをして、やつの痕跡を追っていたんだ。そしたら、森の奥で傷を癒しているところを見つけた。こっそり尾行したら、この屋敷の前にたどり着いたってわけさ」


彼の声に、テヌートが軽く息を呑む。


「再び、三重奏というわけか……」


「ふん。病人と女はここで待ってろ! 俺一人でケリをつけてやる!」


フォルテが堂々とした態度で言い放つと、彼の手元に鮮やかなホログラムのドラムが現れる。その姿は僕の体なのに、僕よりも遥かに男らしく見えるのが不思議でならない。胸にわずかな悔しさがこみ上げてくるが、同時にその頼もしさが心を支配していた。


「おかしい。窓が割れてもおかしくないはずだ」と、テヌートが不審げに眉をひそめる。


「気づいたか、色男? ただ尾行してたわけじゃないさ。やつの回復を妨げるために、密かにバスドラムの重低音で邪魔をしてやったんだ。あいつは完全に回復したと思い込んでるが、大きな計算違いだったってわけだ」


「おのれええええええ! この狡猾者め!」


魔女の怨念が染み付いたような声が再び響き渡る。それに応じるように、フォルテの瞳が冷たく光る。


「フォルテの温情に感謝しろよ、だが俺は甘くない。貴様には、今ここで終わりを迎えさせてやる!」


フォルテはドラムスティックを回し、リズムが響き渡ると、屋敷全体が震えだす。彼の男声魔法が次々と唱えられ、ホログラムに複雑なリズムが刻まれるたびに、風が屋敷の外を巻き込み、炎の方向を逆転させた。


「ぎゃああああああ!」


炎が突風に煽られ、魔女の方へ向かう。その瞬間、彼女の体が炎に包まれ、断末魔の叫びが夜空にこだました。


<???>


魔女アリアがやられたか。まあ、想定外の事態はあるが、むしろ、我々にとっては、願った以上の成果だ。人件費が浮く。そうすれば、新しい殺し屋を雇うことだってできるし、研究にも投資できる。どちらも組織の維持拡大には必要なことだ。


アリアを殺した3人、中でもコバルトプリンセスは、危険な存在だ。一刻も早く葬らねばならない。エッジホープ社とエッジガード社、両方に刺客を差し出すよう命じるとしよう。


それはそうと、どうやら、エッジホープ社から女体化薬盗んだやつがいるらしいが、そっちは、とりあえずは、泳がせておくことにしようか。


ガーネットプリンスに覚醒すれば、兵器としていずれ使えることだろう。女体化男子が戦争の形を変えるのだ。

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