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誰かの歌

作者: 西川 新

何者にもなれなかったな


月が昇って沈んで 太陽が沈んで昇って

それを何度も繰り返したのに

何者にもなれなかったな


朝の光を浴びて

顔を洗って鏡を見て

何もない日々 何者でもない私


平均をなぞって

普通を生きてきた私


中途半端

器用貧乏


突発した才能がなくて

どこでも人の背中を見続けた


誇れるものがなくて

なのに苦手は人並みにあって


何かがほしいと常に願っていて

苦しくとも辛くとも

何かがほしかった


「すごい」じゃないの

「さすが」でもないの


欲しかったのは嫉妬

妬まれるほどの才能


「なんでもできるね」じゃなくて

「バランスいいね」でもなくて


聞きたかったのはひとつ

これすごいできるじゃん! って


何にもなれないまま

自分のことわからないまま


月日だけが

無情にすぎて

焦りだけが

心に広がる


何もかも

手放して

これが私なのだと

言える日はくるのだろうか


月が昇って沈んで 太陽が沈んで昇って

何度も何度もそれを繰り返して

いつか私は私を見つけられるのだろうか


家に帰ってきて

お夕飯を食べて

お風呂に入って


洗面器に映る顔を見て

朝と同じ顔を見て

独り嘆いた


何者にもなれなかったな

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