第十二話・名物料理誕生のために
前回のあらすじ
とんこつラーメンの完成が見えてきた
四人掛けのテーブルにセーロンと何故か領主、ギルドマスター、ジルバンが座っている。
「・・・セーロンさん、なんで領主様たちがいるんですか?」
俺の言葉に苦笑いをするセーロン。
「店閉める準備してたらジルバンさんがやってきてこのことを話したら俺も行くと言ってきたので」
俺はジルバンさんを見る。
「一度館に戻り急いで支度をしていたら旦那様に会ってこのことを話したら私も行こうと」
領主を見る。
「料理の話はリュウセイ殿に聞いていたしそれを食べられるというなら私も行くしかないだろう」
最後に所長を見る。
「領主様から連絡をもらってきた」
「はぁ、遅かれ早かれ領主様には食べてもらうつもりだったので別にいいんですけど」
「ちょっと待て、リュウセイ。領主様は食べてもらうつもりだったって俺は」
「それでは今から用意しますのでお待ちください」
「おい、俺は無視かい」
所長のことは無視して厨房へ向かうとギーヴが呆然として立っていた。
「どうしたんですか?」
「なぜ領主様がいるんだ!!」
「えっと、ホントはセーロンさんだけだったんですけどね、、、成り行きで、、、」
「・・・はぁ、わかったよ。お前が来てから驚くことばっかりだよ。さて、領主様なんか気にしてられないな」
「そうですよ。頑張りましょう」
ギーヴがとんこつラーメン、正確にはオークラーメンを4人前作り始める。
ラーメンどんぶりに似た大きめの器にタレを入れスープを入れる。
麺の材料である小麦はあったがかん水がないので卵で代用して作成。
具にオーク肉でチャーシューを作りネギやもやしのような野菜を乗っけてオークラーメンが完成した。
4人の前に器を置いていく。
「ほう、リュウセイ殿。これがとんこつラーメンというものですかな」
「はい、これが私の国でとんこつラーメンと言われている料理です。オークの骨からスープを作ったオークラーメンです。スープの味と麺の歯ごたえをお召し上がりください」
「それではいただこう」
4人が同時に麺を口に運び叫ぶ。
「「うまいっ!」」
「なんだこれ食べたことない味だぞ」
「オークでここまでうまい料理が作れるなんて」
「世界を旅した私でもこの味は食べたことありません」
「リュウセイ殿、こんなおいしいものを考えていただけるとは」
よしよし、この世界でもとんこつラーメンは受け入れられて良かった良かった。
腕を組みながらうんうんと頷いているとセーロンが
「ちなみにリュウセイさん、これはおいくらで提供するつもりで?」
と全くもって考えていなかった話をしてきた。
「・・・ギーヴさん、どれくらいだったら利益出ます?」
「ふむ、銀貨1枚では出せそうだが。ただ、」
「ただ?」
「オークの骨付き肉は今回大量に市場に出てきていつもより安く手に入れられた。それにサーユの値段が分からなかったので入れていない。そうなるともう少し値段上がるぞ」
「・・・ってことみたいです」
「みたいですじゃなく考えておきなさいよ」
とセーロンはため息をつく。
「ごもっともです」
確かにラーメン作ることに集中しすぎて考えてなかった。
「オークについては問題はないでしょう。ですよね、ギルドマスター」
「そうですね」
領主と所長以外は何のことかわからずポカンとしている。
「まだギルド内でしか情報を共有していないがこのフランフォート領内に迷宮が発見された。その迷宮はリュウセイが退治してくれたオークの棲家だ。迷宮にオークが生息している可能性は高く今後冒険者が増え迷宮に潜ってもらえれば定期的にオークが市場に出回るだろう」
「それで価格が安定すればオーク肉の問題はないな」
「次はサーユについてですね。サーユは現地サジル村だと銀貨1枚ですが1本銀貨10枚で販売しています」
「銀貨10枚か、、、うーん、それなら白豚麺の値段は銀貨4か5枚ぐらいにしないと割に合わないぞ」
「セーロンさん、さっきもその値段は聞きましたがが運送費がかかるってのは分かりますがなんで10倍の値段になるんですか?」
「サジル村はアルガスト王国から西方の海を越えた妖精の国アルフェイルの首都からもッと西へ行った所にあるんですよ。フランフォートからだったら時間がかかっても2週間程度ってところかな」
「そんなにかかるんですか」
さて、どうしたものか。
スープもチャーシューもサーユが大事だしな。
どうにかサーユの簡単な運送ルートを見つけないと。
「リュウセイ、何を考えている」
「えっ?どうすれば簡単にサーユ運べるかなって」
あれっ?みんな目が点になってるんだが。
「私、なんか変なこと言いました?」
「さっき言ったよね?2週間かかるって」
「はい。でも、早く行けばもっと早くなりますよね?」
「それはそうだけど、どう考えても手段がない」
手段がないって言われてもなぁどうしたもんかなぁ。
「・・・空を飛んだらどうですか?」
「「えぇぇ!?」」
えっと、そんなに驚くことなのか?
「リュウセイ、お前空飛ぶ魔法覚えたのか?」
「いえ、覚えてませんが」
「だよな」
「でも、考えたらできるんじゃないですかね」
「何をそんな簡単に」
「いえ、セーロン。リュウセイ殿ならやってしまうかもしれません」
「はははっ、領主様何の冗談ですか・・・」
笑っていたセーロンであったが領主が真面目な顔をしてるものだからすぐ笑うのをやめる。
「真面目に言ってます?」
「あぁ、さっきオークの棲家の話をしたがそれを見つけたのがリュウセイでオークの棲家を潰してきたのもリュウセイなんだ」
「えーっと、、、信じられないのですが」
「普通の人ならそうだろうな。だけど、こいつは規格外なんだ」
所長よ、それは誉め言葉として受け取っていいんだよな?
「リュウセイ殿、もしですが空を飛べるようになってたとしてもあなたがずっとサーユの運送をするおつもりですか?」
「確かにそうですね。私がずっとできるわけではありませんし、、、それならやっぱりフランフォートでサーユを作れるようにしましょう」
「何がやっぱりだ」
「リュウセイさん、さっきも言ってましたがどうやって作り方を知るつもりですか」
「それはサジル村で覚えてきます」
「だから、、、」
「ちょっといいか」
俺たちがすったもんだやっているとギーヴが口を開きギーヴの方を向く。
「領主様、話の途中に申し訳ありません」
「いえいえ、ギーヴさん。どうしましたか?」
「はい、リュウセイは何の関わりもないこの店のために何でここまでやってくれるんだ?」
と真剣な眼差しを俺に向け言うギーヴ。
「それはギーヴさんがオークスープを作ったからですよ」
「そんなことでか?」
「ギーヴさんに言いましたがオークスープは私の国で人気の料理なんです。私はもう食べることは無いと思っていたのに食べることができてホントにうれしかったんです。フランフォートの名物料理を考えていたのでどうしてもこのオークスープを名物料理にしたいんです。ただその思いだけです」
「そうか、、、急に名物料理にしないかと言ってきたときは何を言っているんだと思っていたがそこまで本気で考えていてくれているとは、、、ありがとう」
ギーヴが頭を下げるとパンと手を叩き領主が立つ。
「わかりました、リュウセイ殿。サジル村へ行ってサーユの作成方法を覚えてきてくれますか」
「えっ!?」
「領主様」
「セーロン殿、サジル村へ行くのが大変だというあなたの言いたいことも分かります。ですがフランフォートが発展するというのであれば領主としてその選択を否定することは出来ない。リュウセイ殿、アルフェイルへは海を渡ることになる。渡航のチケットとサジル村で身軽に動けるようサジル村の村長へ書状も渡しましょう」
「そこまでやってくれるんですか?」
「もちろん、最後までお手伝いしましょう」
よしよし領主の助けを受けられるのはデカいぞ。
さて早く行きたいな。
サーユの作り方より妖精の国へ行けることの方がもう楽しみで仕方がない!