第十一話・ラーメンを求めて・・・
前回のあらすじ
ガイドマップを作るために街を調べていたらとんこつスープを売ってる店を見つけた。
「この短期間でこんな素晴らしいのを作成していただけるとは」
ガイドマップを作製して三日目。
執務室にて領主と所長に二日でざっくり作成したガイドマップを見せている。
紙一枚にフランフォートの地図を描きその両端に店の説明、店に番号を付け地図上にも場所がわかるように番号を書いていた。
「注目していただきたいのはこれです」
俺は白豚亭を指さす。
指の先にはとんこつラーメンの文字。
「とんこつラーメン?」
「はい、私の国で大人気の料理でしてこの白豚亭で似たような料理を出していたのでそれを改良してこの街の名物にしたいと思っています」
「名物とは大きくでたな」
「申し訳ありませんがこの街を探索して名物料理になるようなものが無いと思いました。これから冒険者が多くやってくるならこってりしてがっつり食べれるものが必要だと思うんですよ」
「なるほど、それはいいかもな」
「まだ開発中なので今後をお楽しみに」
「それは楽しみですね」
「えっと、話は戻しましてこの地図をこの後のことはお任せしてもいいのですか?」
「はい、後はこちらにお任せください」
「ありがとうございます」
「いえこちらこそありがとうございました」
執務室を出て領主の館を歩く。
スープ作りのアドバイスは昨日しておいたけど問題は味付けに使用したい醤油なんだよな。
どこかに醤油はないのだろうか。
「リュウセイ様、どうかなさいましたか?」
「ジョッシュさん」
この館の執事とメイドを束ねる執事長のジョッシュ。
表の顔は執事長だが裏の顔は領主の諜報部隊の隊長という一面もある。
俺がここへ来たとき領主がジョッシュにリリアンの盗賊襲撃事件を調べるように指示した結果たった3日で解決してきた。
領主の娘が帰ってくる情報を手に入れた盗賊たちが身代金目当てでやったようで黒幕がいるなんて考えた俺が深く考えすぎていたようだ。
しかし、ジョッシュってものすごく優秀すぎる人なんだが。
「この国にある調味料って何があるんですか?」
「調味料ですか、、、それなら調理場へ行きますか」
あぁ、確かに最初からそうすればよかった。
「よろしくお願いします」
ジョッシュに連れられ調理場へやってくる。
「ジルバンさん、ちょっとよろしいですか?」
「どうしましたか?執事長」
料理長のジルバン。
料理長というからずんぐりむっくりのおっさんかと思いきや30代のイケメンだ。
「こちらにある調味料を全て見せて欲しいのですが」
「調味料ですか、分かりました。ちょっとお待ちください」
ジルバンは奥の棚に向かう。
「ジルバンさんは前料理長の息子さんなんですが世界の料理を見たいと言って前料理長の反対を押し切って旅に出たんですよ」
「へぇ、すごい人ですね」
「世界の調味料を見てきてますのでリュウセイ様のお望みの物があるかもしれません」
「それは期待したいですね」
「お待たせしました」
テーブルに置かれた調味料の数がすごい。
塩と砂糖は分かるがあと何?
「ジルバンさん、説明お願いできますか?」
「まずこれがですね、、、」
最初に説明されたのは塩、うんそれは分かる。
次々と説明されながらその調味料が日本にいた時と名前が違ったりするのもあるが日本にある調味料と同じものばかりだった。
「それでは次にこちらですが」
そう言ってジルバンが取ったビンの中に黒い液体。
「それってまさか」
「リュウセイ様、どうなされましたか」
「それ味見していいですか?」
「いいですよ」
ジルバンが小皿に黒い液体を注ぎその液体を指につけ舐める。
・・・醤油だ。
「これは西方の妖精の国アルフェイルのサジル村に住むエルフ族が作る調味料で【サーユ】と言います」
うん、名前も似てるな。
っていうかエルフが作ってんのかよ。
「輸入品ということですか、、、あれっ?街に輸入雑貨のお店ありましたけどこれ売ってなかったんですが」
ガイドマップ作りで発見した輸入雑貨の店。
中に入って品物も見たがサーユは見なかったよな。
「あぁ、それはこの国でサーユを使う料理が無いから仕入れが少ないのでしょう」
需要が無いってことか。
「でも、まったく売ってないということは無いはずですね。私はいつもあのお店で仕入れているので」
・・・それってあんたが全部買っているのでは?
「ジルバンさん、サーユの在庫あったら1本いただけませんか?」
「構いませんよ。どうぞ持って行ってください」
「ありがとうございます」
このサーユでまずは試作品を作ってもらってあとは仕入れ先をどうにか考えないとな。
領主の館を急いで出て白豚亭にサーユを届けタレとチャーシューの作り方を説明し輸入雑貨屋へ向かった。
「こんにちわー」
「いらっしゃいませ、、、ってリュウセイさんかい」
輸入雑貨屋の店主セーロンは俺を見てガックリしている。
もじゃもじゃ髪のセーロンは俺より少し年上のお兄さん。
セーロンとはガイドマップ作りでこの店により他国の話を聞いていたら楽しくなり仲良くなっていた。
「ちょっとセーロンさん」
「えっえっ、ちょっと何?どうしたの」
俺が勢いよく店主に詰め寄ったからか大分戸惑っている。
「サーユってありますか?」
「サーユ???あぁ、アルフェイルのエルフ族が作る調味料だね。あれは在庫切れだよ」
「なんでないんですか」
「えっと、、、毎月5本仕入れては入るんだけどね。領主様んとこのジルバンさんが全部買ってくんだよ」
やっぱりあのイケメンの所為かい。
「なんでもっと仕入れないんですか?」
「そりゃ買ってくれるのジルバンんさんしかないからだよ」
そりゃそうだよねぇ、、、。
「そうだとしてもですよ、街の人に買ってもらって広めないと」
「リュウセイさんの言いたいことは分かるけど売るとしたら銀貨10枚だよ」
この街の食堂の平均の金額が銀貨1枚。
一番安い宿だって銀貨5枚。
銀貨10枚、円に換算したら1万円。
日本だったら高級醤油すぎるわ。
「一般人じゃ手が出せんってことですね」
「そうなんだよ。私もねサーユを使った料理のおいしさは分かるからホントは一般の人たちにも買って欲しいんだよ」
さて、どうすればいいものやら。
「うん、こっちで作るしかないか」
「はぁ?何を言ってんだい、リュウセイさん。あんた作り方分かってるのかい?」
「そりゃ、だい、、、」
大豆ってあるのか?
「材料がちょっとわからないですね」
「ほら言わんこっちゃない。しかし、セーユで何を作ろうとしてんのさ」
「それはですね」
セーロンに白豚亭で作っているとんこつラーメンをこの街の名物にしたいという話をすると座って話を聞いていたセーロンは勢いよく立ち上がる。
「リュウセイさん、そのラーメンというもの私に食べさせてくれないかい?」
「えっと、まだ試作品なんですけど、、、」
「それでいいんだよ。これから街の名物料理になる味を知ってそれで仕入れを考えるよ。値段もね」
「ホントですか!!ありがとうございます。それじゃお店終わってから、、、」
「そんなもの待ってられない。今から閉めて行くから」
お店そんな簡単に閉めていいの?
まぁ、人の店のことそんな気にしなくていいか。
「それじゃ、先に戻ってますんで白豚亭でお待ちしてます」
「あぁ、すぐ行く」
セーロンを置いて輸入雑貨屋をを出て白豚亭に戻る。
「リュウセイさん、おかえりなさい」
「ただいま帰りました。ラズリム君。ギーヴさんは?」
若い店員ラズリムはモップで床を磨いていた。
ラーメン開発中のためお店はお休みにしてもらっている。
「スープ製作中です」
「わかりました」
白豚亭の店主ギーヴはスープを作っている寸胴鍋の前で腕を組み立っていた。
「・・・どっ、どうしました?」
「んっ、あぁ。お前が言った通りに骨の下処理、香味野菜を入れて煮たらあんなに匂っていたの嫌な臭いがしなくなるとはこんな調理方法があるなんてなと思ってな。お前の国の料理をもっと知ってみたくなったよ」
それは嬉しいことですがそんなこと言われても料理人じゃないんで他は知らないんですけどね。
「それでタレの方は?」
「一先ずこんなものでどうだろうか?」
サーユを渡し料理酒がこの世界には無いので白ワインと砂糖や塩で作ってもらった。
「そうですね。これにスープを混ぜてみましょう」
タレを入れた器にスープをこしながら入れる。
白濁のスープに茶色が合わさる。
スープをすくい飲む。
親しんだ味が口の中に広がる。
「これです。ギーヴさん」
「本当か?・・・うまい。あのスープがここまでうまくなるとは」
「でも、ラーメンはこれで終わりじゃありません。次は麺を入れて食べてみましょう」
「わかった」
「あっ、そうだギーヴさん。今から輸入雑貨屋のセーロンさんが来てこのラーメン食べてもらいますので」
「なんでだ?」
「このサーユの取引相手ですので味の確認みたいな?」
「そうなのかわかった」
麺をゆでる準備を始めるギーヴ。
この味ならセーロンも納得してくれるんじゃないだろうか。
・・・そういえばオークの骨は定期的に手に入れられるのか?