第十話・フランフォート探索
前回のあらすじ
フランフォートのガイドマップ作製の依頼を受けた
フランフォートのガイドマップを作るためすぐさま取り掛かろうとフランフォートの入口までやってきたのだが
「あのぉ、リリアンさん、なんであなたがいるんですか?」
俺の目の前にはリリアンがいる。
ついでにその脇にはメリッサも。
「リュウセイさんが街でお仕事されるということでお手伝いをさせて頂きたいと思っています」
「はぁ」
別についてこなくていいんだよ。
一人の方がやりやすいんだがな。
「それで何をされるんですか?」
仕事の内容分からずついてきたのかよ。
「申し訳ございません、リュウセイ様。お邪魔でしたらお屋敷に戻りますので」
メリッサが謝ってきたが俺呆れた顔でもしたのかな?
すごい勢いよく頭を下げたが。
「いやですわ、メリッサ」
「わがまま、言ってはいけませんよ。お嬢様」
「まぁまぁ、メリッサさん。大丈夫ですから、、、さてと」
俺は紙とペンを取り出す。
二人は無視して仕事を始めないとな。
さっさと始めないと三日じゃ終わんないよ。
この街に来てしばらくいるがよく考えればこの街のことをよくわかっていなかった。
リリアンたちにフランフォートのことを聞きながら歩いていく。
領都フランフォートは四方を石壁に囲まれ北には川幅約1キロの川が流れ南西にはロンターンの森がある。
入口は一つで街の中央に大きな噴水がありそこを中心に十字に大きな道が石壁まで続き十字の道がフランフォートを4つの区画に区切っていた。
フランフォートの人口は約10000人。
フランフォートは自給自足ができるほどの野菜や果物を生産し職業訓練所で使った木剣の材料だった世界一硬い木というのがロンターンの森に生えていてそれを加工して農産物と共に輸出をしていた。
この街では一般的に一軒家やマンションみたいな集合住宅に住んでいて貴族や儲けてる商人は立派な屋敷に住んだり店をやっている者は店舗と住居部分が一体化になっている建物に住んでいた。
お店の種類は宿や酒場、武器屋に道具屋とファンタジーゲームではよくあるお店。
入口から続くメイン通りの脇にある屋台はこの街の農産物を基本に食品を販売し賑わっていた。
他にはギルドに職業訓練所と冒険者に関係がある建物がある。
まずは一通り辺りを見て回っていると魔道具屋と書かれた看板が目に入った。
「魔道具?」
「リュウセイ様、あなたのお持ちのその腕輪も魔道具ですよ」
メリッサが俺の右腕に着けている腕輪を指さす。
「これも?」
「はい。魔道具は魔石という魔力を帯びた石、魔源石を加工した物を使用した道具です。その腕輪に付いている石が魔石ですよ」
「なるほど、ちょっと入ってみましょう」
魔道具屋に入ると魔道具が展示されているのだがどこかで見たことあるような置き方だな
と思いながら魔道具を見て回っているとある魔道具の前で立ち止まった。
「えっ!?これって」
どう見たって扇風機だよな。
そうか、これを見て思ったが置き方が家電量販店みたいだ。
「そちら、お気に召しましたか?」
俺が扇風機らしきものを見ていると話しかけてきたのは若い女性。
この店の制服なのだろうか着ている服はどう見ても駅前によくある家電量販店の制服。
「えっと、、、この商品って扇風機ですよね?」
「こちらは冷風機と言いましてこの羽が回ると冷たい風が出てくる魔道具となります」
「冷たい風ですか、、、」
うーん、このお店の制服といい扇風機といいこの世界の人がこんなものを作るとは思えないんだよなぁ。
しかし、周りに置いてある魔道具を見てみても前の世界の家電によく似ている。
あそこに置いてあるのはどう見たってアイロンだし、あれは洋式トイレだよな。
まさか、俺みたいな転移者がいるのか?
「すみません、見た感じこのお店に置いてある魔道具は生活に役立つ魔道具だと思うのですが」
「はい、その通りです。こちらでは皆様の生活が快適になる魔道具を販売しております」
「冒険者に役立つような魔道具というのは販売してますか?」
「そちらでしたらあちらに置いてありますマジックバッグか暗い洞窟でも明るく照らすライトなどはいかがでしょうか?」
ライトと呼ばれた物はどう見たって懐中電灯だな。
「ありがとうございます。ちなみに戦闘用の魔道具ってないんですか?」
ライトだけじゃ冒険者に役立つ情報ってわけじゃないし戦闘用の魔道具が無いと冒険者に役立つ情報ではないな。
「申し訳ございませんが戦闘で使用されるようなものはございません」
「そうですか、、、」
「ちなみにですがこちらに置いてある魔道具はヴァナヘイト帝国の魔道具研究所にて開発されています」
「・・・魔道具ってこの国で作ってるんじゃないんですか?」
「はい、魔道具は4年前ヴァナヘイト帝国で初めて開発されて帝国の魔道具研究所でしか作成されていません」
「なるほど」
この魔道具が帝国でしか製作されずこの国で売られているということはこの魔道具は帝国の収入源なんだろうか。
しかし、この魔道具を誰が考えたのか知りたい、、、知るためには帝国に行くしかないかぁ。
「すみません、これってどうやって動いてるんですか?」
俺はトイレを指さす。
「どういう構造になっているかはわかりませんが魔石と呼ばれる魔力を帯びた石が魔道具に取り入れられていてその魔石を原動力として魔力が無い人でも使えるようになっています」
それが電気の代わりというわけだな。
「他に御用はございますか?」
「いえ、大丈夫です。あと見て回りたいと思います」
「はい、何かございましたらお声がけください」
店員が離れていくのを見ながら思い返すと領主の館のトイレが洋式しかもウォシュレットだったことに最初はウォシュレットがあったことに驚いたがこの世界もこういう技術はあるんだなと思ってしまっていた。
よく考えたら電気なんてないのにどうやって動いているんだって話だ。
一先ず魔道具屋はこれくらいにしてと、、、魔道具屋を後にし一日目の調査を終了した。
次の日は一人で朝から街の調査と共にガイドを作成していく。
日が暮れる頃には80%ほど出来てきた。
結構雑な絵だが三日でやれと言われたんだこれぐらいは大目に見て欲しい。
さて、ガイドマップを作成して思ったんだがフランフォートには色々な酒場や食堂などがあるんだがこれといって名物料理が無い。
不味いというわけではないんだがすごく美味いって訳でもないんだよなぁ。
やっぱり冒険者といったら食だと思うんですよ。
なので冒険者を引き付ける名物料理を発掘したい。
と思ってるとなんか懐かしい匂いがする。
くんくんと匂いを嗅ぐ。
うん、あっちからだな。
匂いがする方へ足を運ぶと裏路地にある食堂へ着いた。
看板には【白豚亭】と書かれている。
この食堂は昨日来たけど可もなく不可もなくってところだったんだよな。
その名の通り豚料理がメインの食堂だった。
食堂の扉を開ける。
「いらっしゃいませ、空いてる席どうぞ」
カウンター6席と4人掛けテーブル席が4隻と酒場ならともかくフランフォートの食堂では珍しいカウンターがある食堂だ。
俺は、カウンター席に座る。
「お客さん、昨日も来られましたよね?」
水を持ってきた若い店員。
ウェイターの服を着ているのでまだ調理場に建つことが許されていない見習いなのだろうか。
「覚えてくれてるんですか?」
「そりゃ、ご覧の通り人いないんでね」
と笑う。
「ご注文は?」
「この匂いの物を出してほしいんですけど」
「えっ!?ホントですか?」
なぜ驚く?
「なんかまずかったですか?」
「だって、この匂いですよ」
ふむ、この世界の人にはやっぱりなれない匂いなのかもな。
「大丈夫です。お願いします」
「かしこまりました。すこしお待ちください」
さて、この匂いが俺の思った通りならあれが出てくるはず。
「お待たせしました」
5分ほど待ち俺の前に置かれたのは
「オークスープでございます」
器に入った白濁のスープ。
そうこれは見た目も匂いもとんこつラーメン(のスープ)だ。
「いただきます」
さて味はどうかな。
スプーンでスープをすくい口元へ。
スープを口に含み飲み込む。
こいつは完全にとんこつだ
俺は勢いよくスープを飲み干す。
「店員さん」
「はっ、はい」
俺が勢いよく言ったからか戸惑う店員。
「このスープを作った方は」
「俺だが」
奥から出てきたのはコックコートを着た無愛想な中年が厨房から出てきた。
「いきなりですがこのスープをフランフォートの名物料理にしませんか?」
「はぁ?何を言ってんだ、あんた。ところであんた何者だ」
そうですよねぇ、急にこんなこと言われたら怪訝な顔するよねぇ。
「申し遅れました。私は冒険者のリュウセイと申します。領主様から新しくフランフォートへ来る者たちのため地図を作成しています。その中にお店の紹介を追加しているのですがこの街の食堂や酒場で出されている料理に名物と言えるような物が無いように思えました」
「それが何でこのオークスープを名物にしようなんて」
「よくぞ聞いてくれました。このスープは私の国ではとんこつと言って人気のスープなのです。これがこの世界で食べれるとは思えなかった」
「この世界?」
あっ、勢いで言っちゃった。
「コホン、それは置いといて。ちなみにご主人このスープをどうやって作り始めたのですか?」
「最近オーク肉が市場に多く売り出され特に骨付き肉が売り出されているんだよ」
あぁ、俺がこないだギルドに出したオークだろうな。
「いつもなら骨は薬師などに売るんだが今回は量が多くてなんかもったいなくてなこれでスープでも作れんのかと思ってやってみた結果がこれだ」
偶然の産物ってことですか。
「あんたも嗅いだだろうがこのスープの匂いはちょっときつくて人気など出ないと思うのだが」
「そうですね。でも、作り方によってはこの匂いは抑えることができると思いますよ」
「ホントか!?」
「はい、そして具も改良して私の国の料理に似せましょう」
「はぁ、それてその料理というのは?」
「その料理の名前はとんこつラーメンです!」