第一話・異世界に来てしまった!?
広がる青い空に浮かぶ白い雲。
前には平原、後ろは小高い丘から見下ろした先に広がる森。
空気も上手い素晴らしい自然に俺は
「・・・どこだ、ここぉぉぉ!!!!」
叫んでいた。
俺は天城竜星。
24歳。大学新卒の普通のサラリーマン。
だったというべきか。
小さいころから運が無かった俺は、高校受験や大学受験ではでテスト中お腹を下し途中でテストを受けられず第一志望は落ち大学は一浪。
ビンゴ大会では最初にリーチになるも景品が無くなるまでビンゴにならず。
鳥の糞が頭や身体に落ちてくること数知れず。
そんな運のない俺が玄関を開けたら見知らぬところ。
そりゃあ、叫ぶってものでしょ。
「うん、これは現実じゃない。部屋に戻って頭を冷やそう、、、んっ?玄関どこいった?」
辺りを見渡してもドアらしきものがない。
腕を組み手を顎に当てる。
「うーん、これって俗にいう異世界転移ってやつか?」
普通なら慌てるんだろうがアニメや漫画が好きな俺は最近流行の異世界物を知っていたのでそこまで慌てることはなかった。
だが、まさか俺の身に起こるとは思いもしなかったけど。
ってことはこういう異世界に転移した俺にはチート能力があるはずだ。
「ステータスオープン」
あれっ?何も起こらないぞ。
言い方が違うのか?
「オープン、スキルオープン、ステータス確認」
うん、何も起こらないな。
この世界はステータスとかスキルとか魔法みたいなものがないのか?
さて、どうしたものか。
それにこういう異世界物の最初って
「きゃあああ」
そうそうこういう風に女の子の悲鳴がして、、、って
「えっ!?どこから」
声のする方は後ろの森の方からだ。
下に誰がいるかを確認するためこっそりと顔を出す。
「あぁ、典型的な場面だなこれ」
盗賊のような輩たちに襲われている少女。
俺は、その盗賊たちより約5mの高さのところから見ている。
金髪ツインテールの少女は見た感じ小学生っぽく見えるがこっちの世界で地球と同じ感覚でいいんだろうか?
それにしても高そうなドレスを着ている。
どこぞの貴族の娘なんだろうな、、、、お姫様じゃないよな?
まぁ、そんなことはどうでもいいか。
えっと、盗賊は2人。
ナイフや剣をそれぞれ持っている。
助けようにも俺には武器が無い。
助ける手段が無い。
「うん、見なかったことにしよう」
俺は、この場から去ろうとした、、、だが、
「いやぁ、誰かぁ助けてぇ」
少女の悲鳴がまた響き渡る。
「・・・マジかぁ」
そんなん聞いてしまったら男が廃るってもんじゃんかよ。
でも、どうやって助ければいいんだ。
と、思いながら辺りを見ると野球ボールより一回り小さい石ころが散らばっている。
「気休め程度だけど、こいつ投げるか」
俺が唯一やっていたスポーツが野球なわけでボールを投げるぐらいはできる。
しかし、石を投げたところであの盗賊倒せるわけないしな、、、まぁ、俺の方に気をそらすようにするだけでいいか。
「よし、こんなもんでいいか」
素早く石を集める。
まずは、盗賊に当てないで牽制も兼ねてあいつらの前だな。
振りかぶって思いっきり石を投げた。
「えっ?」
ドスッ!!
俺が投げた石は狙った通りに盗賊たちの前に落ちた。
そう、狙った通りに落ちたんだけど石のスピードが速い。
いや、速いってもんじゃない。
投げた瞬間、鈍い音と共に地面に当たってたんだけど。
それにその衝撃で小っちゃいクレーターが出来ている。
「うっそーん」
俺は、その光景に驚いているが盗賊たちは急に出来たクレーターを見てうろたえている。
「だ、誰だ?」
盗賊の一人が俺の方を向く。
それに釣られてもう一人も俺を見る。
「なんだ、お前は?」
「えーっと、通りすがりの一般人です」
と俺はまた石を盗賊の周りを狙ってドンドン投げた。
盗賊の周りにはドンドン小さいクレーターが出来ていく。
「どっ、どこが一般人だ」
「貴様、どんな魔法使ってるんだ」
おっ、なるほど、魔法はこの世界にあるのか。
良い情報だ。
「魔法じゃないよ、ただ石投げてるだけさ」
「そんなわけないだろ、見えない速さで投げれるわけないだろ」
驚き慌てる盗賊たちを見て石を投げるのをやめる。
「あんたらそのお嬢さんからさっさと離れないと次は当てるからな」
「なんだとこの・・・」
「やめろ」
若そうな盗賊を制止する無精ひげの盗賊。
「何でですか」
「考えてみろ、あの見えない魔法が当たればただじゃすまないことになる」
「しかし、」
「ここは退散だ」
盗賊たちは後ずさりしながらここから逃げて行った。
「ふぅ」
ドンと勢いよく俺は腰を下ろした。
「なんとかなったな」
しかし、あの音速というか光速というか目に見えないあの速さ。
これっていったい、、、どういうこと?
「あ、あの~」
盗賊たちは魔法だと思っていたな。
俺ってなんか無意識のうちに魔法使えるようになったのか?
「すみませ~ん、上におられる方~」
んっ?あっ、あのお嬢さん忘れてた。
俺は、下を覗くと高そうなドレスを着た少女がこちらを見上げていた。
「あっ、やっと顔出してもらえましたか」
「すみません、ほったらかしにして」
「いえ」
「えっと、そちら行きますね」
行くとは言ったもののここから飛び降りるのは、、、怖いな。
かっこ悪いけど足場に足を引っかけながら行くか。
「とお」
大体半分ぐらいの高さから俺は飛び少女の前に着地する。
「お待たせしました」
「いえ、こちらこそ助けていただきありがとうございました」
少女は深々とお辞儀を俺に向かってしてくれた。
「私は、フランローズ領領主が三女リリアン・フランローズと申します」
りょ、領主の娘、、、やっぱりお偉いさんのお嬢さんだったか。
しかし、なんかこういうお偉いさんの娘って高飛車なイメージがあったが柔らかい感じだな。
「助けていただいたお礼をどうすればよいか」
「いえいえ、ところで何故あんな野蛮な奴らに襲われていたのですか?」
「はい、学園の夏休暇で屋敷に馬車で帰っている途中に盗賊に襲撃を受けてしまいまして」
屋敷に帰る途中ですか、、、異世界物でありそうな話じゃないか。
「それは災難でしたね。護衛の方はいらっしゃらなかったのですか?」
「いたのですが逃げている途中ではぐれてしまいました」
「なるほど」
遭難とかってあまりうろうろしないでその場にいた方がいいんだっけ?
でも、この場にとどまってもその護衛の人が探しているかもしれないしな。
「リリアンさん、馬車の場所覚えてますか?」
「いえ、無我夢中で逃げてきましたので」
「ですよね」
「でも、この道を真っすぐ走ってきたと思います」
とリリアンは人差し指を向ける。
無我夢中で走ったって言うしここ真っすぐ行って馬車に着くかわからないけど
「ここ真っすぐ進んでみますか?」
「えっ?一緒に付いてきていただけるのですか?」
「ここで会ったのも何かの縁ということで」
「ありがとうございます」
「それで先ほどお礼をと言っていましたが、、、」
「はい、どうお礼させていただければよろしいでしょうか?」
「私はここからものすごく遠い国からやってきましてこの国のこととかよくわかっていないので色々教えていただけるとありがたいのですが」
「えっ、本当にそれでよろしいのですか?」
「はい、今一番私が欲しいものなので」
「私が知っていることであればお教えいたします」
「ホントですか、ありがとうございます。それでは、行きましょうか」
「はい、お願いします」
さて魔物とかいるのかな?
出てきたら、、、石投げるか。
何でこの世界に来てしまったかわからないけど第二の人生だと思っていきますか。
こうして俺の異世界生活がスタートした。