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安息の地は地獄に

 土曜日。

 砕氷学園さいひょうがくえんに一番近い喫茶店のテラス席で、ゆっくりまったりと百合ウォッチングをしていた。

 輩共に絡まれていた百合鴎たちを助けて1週間が経ったわけか。

 なんと疲れた1週間であったことだろうか。毎日のように百合鴎に話しかけられ、そのたびに遠くからプレッシャーを感じる。そんな気苦労の多い人生でもっとも残念な1週間であった。

 だがそんな疲れも、今日の百合ウォッチングで癒やそうではないか。

 そして百合ウォッチングを開始して約1時間後。

 去年同じクラスであった水泳部のコンビがイチャイチャしながらウィンドウショッピングしている姿が見えた。

 とくに目的や買うものがあって買い物にきたわけではないようだが、その2人は楽しそうに談笑しながら買い物をしている。

 そう、これだよ。これが俺が求めている生き方なんだ。こうやって女子が仲良くしている姿を眺める。これ以上を求めるなんて傲慢であろう。

 癒される。こうして遠くから眺めるだけでも、百合を見るのは、セラピー効果がある。

 これで今週の疲れは癒されるだろう。


 「あら、野間くんじゃない。土曜日にも会うなんて私たちは奇遇な存在ね」

 「……」


 百合ウォッチングで気が緩んでるなか、不意打ち気味にに、百合鴎に話しかけられる。


 

 「お、おお、奇遇……だな……」

 「……」

 「私たちテニス部の土曜練習の帰りなの。野間くんは?」

 「……」

 「週間というか習慣で、俺は毎週土曜はここでお茶をしているんだ」

 「……」

 「そう。だから先週私たちはあなたに助けてもらえたのね」

 「……」

 「お前たちを助けたのは偶然じゃなかったってことだな」

 「……」


 ただ百合鴎と話してるだけなのにプレッシャーが半端ない。まだ涼しい時期とはいえ嫌な汗がにじみ出る。


 「気分が悪そうだけど、具合でも悪いのかしら」

 「……」

 「気にしなくていい、ここ最近よくある発作てきなものだ」

 「……」

 「もしよければ、野間くんが都合悪くなければいいお医者さんを紹介するけれど、どうかしら?」

 「……」

 「ありがたいことだが、遠慮しておく。気持ちだけ受け取るよ。すぐ治る発作だから気にしなくて構わない」


 そう。百合鴎が俺の近くから去ってくれれば、すべては丸く収まるのだから。


 「……」


 原因はすぐ近くにあるのだから、距離がとれれば問題ない。


 「……」

 

 言っておくがさっきから「……(無言)」をしているのは俺や百合鴎じゃない。

 百合鴎の隣で無言の圧を放つツインテ少女だ。

 おそらく百合鴎と一緒に練習をしていて、一緒に帰っている最中だったのであろう。

 俺と百合鴎が仲良くしているのがイヤなら、この場でどうにかしてくれよ。

 このあと1時間ていど俺はプレッシャーに押しつぶされそうになりながら、はやく会話が終われと神に祈りながら、百合鴎と会話を続けていったのであった。

 これは今日のぶんもまとめて明日で疲労回復せねば身体がもたんぞ。

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