表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/7

百合関せず


 「あなたの助けなんかいりませんでした。せっかく百合鴎先輩にカッコイイところを見せれるチャンスだったのに、なんでジャマをしたんですか?お節介ですか?」

 「いや……」

 「私がちっちゃいからってなめてるんですか?背が高いからって調子にのらないでください」


 ほぼ初対面だというのに。

 こちらが声を挟む暇をあたえずグイグイとまくしたててくる。


 「チャンスを奪ったことはこの際いいです。私と百合鴎先輩を助けたのはどういう腹づもりなんでしょうか?もしかして、百合鴎先輩に気があるんですか?先輩のことが好きなんですか?」

 「はい?」


 急になにを言い出すんだこの子は?

 

 「百合鴎先輩のことが好きかって聞いているんです。好きなんでしょう、少しでも先輩の好感度を上げたくて助けたんですよね?先輩は家柄も人柄もよく、少しでもお近づきになりたいものですしね。あなたのような人じゃ会話を一切できず一生を終えるのが普通です。でも、違った。あの不良たちはあなたの知り合いで、先輩を私に絡むように指示したんじゃないですか!?」


 ほんと何を言ってるんだろうねこの子は?


 「で!どうなんです?百合鴎先輩のことを好きなのか、好きじゃないのか、とっとと白状してください」

 「待て待て待て、いきなり質問して答えを求めるな。勘違いだ。俺と百合鴎の接点は土曜だけ。べつに俺は百合鴎にそういう気持ちは抱いてないよ。困ってるクラスメイトを見かけたら助けるのが当然じゃないか?」

 「クラスメイトだからって見て見ぬする人が大半の世の中ですよ、だいたい、好きか好きじゃないかを問うてるのに答えをはぐらかすなんて、やはりあなたは先輩のことが」

 「まあいい、ハッキリ言ってやろう。好きじゃない。俺は百合鴎のことなんて好きじゃない」

 「ありえない!百合鴎先輩のことを好きにならないなんて!?あなたはホモなんですか!女性である先輩には眼中にはないと、なら納得しますが、そうでないのに先輩を好きにならないなんて、人としてどうかしてます」

 「めんどくさいね君」


 あー、もうどうしてこうなった。


 「今度はこっちが質問するぞ、好きと答えてたらどうなんだ?」

 「許しません、あなたみたいな人が先輩を好きになるなんて。寝言は寝てから言ってください」

 「やっぱりめんどくさいね君」


 「好き」と答えたらこれだし。

 「好きじゃない」と答えたら人でなし扱いだし。

 はぐらかしても追求されるし。

 理不尽極まりない。


 「あなたが先輩のことを好きじゃないのはわかりました」

 「理解が早くて助かるよ」


 こういう輩は適当に都合のいい解答を提示して流しておけばいいものだ。


 「でも百合鴎先輩のほうはどうですか、あなたに好意があるんじゃないですか!?ないと言い切れますか!?」

 「本人に聞いてよそんなこと」

 「聞けるわけないじゃないですか、人の恋路にアレコレ追求するなんて」

 「君さ、俺になにしてるか理解できてる?そもそもなんで好きかなんて聞いてくる。答えを聞いてどうするつもりだ」

 「あなたが私の敵かどうかを見定めるためです」


 敵かー。

 大きくでたな。

 というか本人に聞いている時点で見定めてないじゃん。

 ん?そもそも敵?なぜ、敵?


 「きっと先輩はあなたに気があります。今朝も先輩はあなたに親しげに話しかけたし。あんな嬉しそうな顔をした百合鴎先輩を見たことなかったのに、私じゃなくてあなたに向けた。本来は私が向けられるべき好意をあなたが奪った」


 引っかかることがあっても思考をする暇を与えてくれないようだ。

 明確な敵意を向けられた。

 身長差の関係で上目遣いに言われてるから恐怖心を抱くことはないが。


 「とりあえずアレか。俺が百合鴎のことを、百合鴎が俺に対して好意を向けるのは君としては喜ばしくないと」

 「ええ、そうです、そうですとも」

 「で、百合鴎が俺に好意をもってそうだと。安心しろ、もし俺に好意があるとしても一過性のものだ。百合鴎は、危ないところを助けてもらって、簡単に惚れるちょろいやつってだけだろう」

 「ちょ!?ちょろい!?先輩をバカにしないでください。だっ、大体……助けた本人はどうとも思って無くても、危ないところを救ってもらってもらったんだから……ちょろくなんかありません!絶対に!ちょ・ろ・く・あ・り・ま・せ・ん!!!」

 

 そしてなぜちょろくないと力説してるのだろう?語彙があれだから力説とは言えんが。


 「ああ悪い。言い方がまずかったと謝ろう。簡単になびく女だが」

 「それ言い方変わっただけで意味変わってないんですが?」


 ちゃんとツッコミをいれるていどに冷静さはあるのか。むしろあってこれかよ。


 「いいですか、忠告します。これ以上先輩に近づかないでください」


 ビシッ!と俺に指さしてくる。


 「近づいたら?」

 「あの日に発揮できなかった私の実力をお見せします。あなたなんてワンパンです。シュッ!シュッ!シュ」


 と、その場で、空気を切る音を発声しながらシャドーボクシングしてみせるツインテ少女。

 残念ながら虫も殺せぬパンチにしか俺には見えなかった。

 こちらとしても2人の仲の邪魔をするつもりはないので了承するのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ