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第94話 会敵

「これで全員が試練を突破したみたいですな。」

「うん、J、ほら、階段が全員分用意されたみたいだよ。」

シェロは回廊中央部、スイッチの先にある透明なガラスの階段のようなものを指さす。それは大回廊の奥上部に繋がっており、薄い油膜が這っているように虹色に輝いていた。

「いよいよ……レーヴェリオンとの最後の戦いね……!」

「うん、ここまで来たら、行けるとこまで行くだけだよ!」

「我が魂はウィレナ様とともに。」

「J,最後までついていくよ。よろしく。」

「J君、この戦いで終わらせようね!」

『ああ、行こう、戦争を止めるんだ。』

J達は階段を登っていく。階段を登りながらウィレナがJに話しかける。

「ねぇ……J、私たちが最初に会ったの覚えてる……?」

『ああ』

「最初はお互いに警戒し合ってて、そんな時に二人でがけ下に落っこちてすべてが始まったのよね。」

「へー。J君とウィレナちゃんそんな馴れ初めだったんだぁ。」

「な……馴れ初めじゃありません!と、ともかく、それからいろいろなことがあったわね。」

――私知ってるわ。死亡フラグと言うやつね。

――最終決戦前に思いで語るのはあるあるだから。フラグは立ってないと思うよ?

――というか作中で一番主人公と一緒にいた時間が長いのタラサよね?

――ファンの間でもタラサがメインヒロインっていう声も少なくない。

「でも、そうして私のかつての父親、レーヴェリオンと戦うことになるなんて、今でも信じられない。でも、Jとなら、みんなとなら今度こそ勝てる気がするわ。

『ああ、今の俺たちなら勝てる。』

「うん、がんばろー!」

「ふふっ緊張感のないパーティだこと。お姉さん好きよ。こういう雰囲気。」

「ああ、僕たちらしい。」

「そうですな。」

パーティーメンバーはにこやかな雰囲気のまま最後の階段を登り切り、Jとウィレナは扉に手をかける。そしてズズズッという重苦しい音とともに扉を開いた。

 王の間は下層世界のレーヴェリオンの城と同じくらいの広さ、現実世界で言うと体育館程の広さの奥に玉座が一つ、そしてその玉座には人間の姿をしたレーヴェリオンが佇んでじっとJ達を見ていた。だが、その姿は老人ではなく、長く伸びたひげがなくなり初老の男性くらいの見た目になっていた。その手には水晶が先端に着いた杖を持っている。

――この杖、キャラメイクの時の杖と同じ。

「おお、見るがいい兄上。我が試練を突破したものはまさかの半身だ。」

レーヴェリオンは右手に持ったヴォルクルプスの首に向かって話しかける。ヴォルクルプスの首は首の高さで髪の毛も切られており、レーヴェリオンはその髪を掴んで吊り下げるように持っていた。

「Jよ、ウィレナよ、その同胞よ。なぜここまで来た。」

「戦争を止めるためですわ。お父様。」

「そうか。レーヴェリオンよ。貴様、我が国への宣戦布告の為に我の首を持ち帰ったのだな。」

「おお、そう怒るな兄上よ。怒りは兄上の信条からもっとも遠いところにあるものだろう?」

「レーヴェリオン王。私はあなたの娘ではないかもしれない。それでも一度は父としてお慕いした身。なれば、仮初の娘としてあなたを討ち、本当の父の首を取り返します……!」

「ウィレナよ……ずいぶんと立派になりおって。余は嬉しいぞ。貴様と争える日がこようとはな!そしてJよ!我が半身よ!見事、一度の敗北にめげずに再び余の前に立った!」

「半身……?どういうこと?」

「なんだ、兄上、教えておらんのか。」

「……言う必要などない。」

「はっはっはっ!そうかそうか!では余が教えてしんぜよう!J!貴様は我が生み出した我の転生先の数ある中の1体だ!」

「なんですって……⁉」

「余は転生を繰り返してきた。だが、転生先は常に最良とは限らなかった。ある時は、魔力を持たぬ若造に。ある時は女子に転生した時もあった。ならば余は考えた。」

――おなごレーヴェリオン……ショタレーヴェリオン……

――ヌルさん?

「余の死後、転生先を創造しておけばよいとな。」

「でもJはお父様が下層世界に送ったって。」

「それは偶然だったのだ。魔人族として生み出したJを偶然この兄上が拉致し己が尖兵として育てたのだからな。これが運命と言わず何と言おうか!なぁ兄上。だが、もはや転生などせずともよくなった。余は手に入れたのだ。兄上と同じ不死の魔法を!」

不死の魔法と聞いてシスネが反応する。

「馬鹿な……!不死の魔法はヴォルクルプスお父様だけの秘技のはず……!まさかお父様を……!」

「この声は兄上の娘か。そうだ。この首を解析させてもらった。おかげで不死の魔法の術式と魔力属性が分かったぞ!」

「……お姉さま」

「ええ、シスネ。分かってるわ。J、あれを使うのよ」

Jは不死殺しの刃にそっと手をかけた。

「さぁ、争おうではないか。我が半身、兄上の娘どもよ。」

「その前に一つ聞かせてほしいな。レーヴェリオン王。貴殿は何故争いを好む?」

「至極単純な理由である。必要であるからだ。」

「争いが必要なことだと……?」

「そうである。有史以来、世の理である弱肉強食。世の中は食うか食われるか。弱者が強者にあらがう方法は唯一、武器を持って争うことである。」

レーヴェリオンの持論にウィレナが反論する。

「詭弁だわ。争いの行きつく先は世の理の減衰を表す。争いを繰り返していてはいずれ世界は滅んでしまう!」

「世界は滅びぬ。行きつく先は強者のみの世界。すべて者が強者であるならば、世界の均衡は保たれる。古今東西、生物の進化は争いとともにあった。弱者は強者に勝るべく体を変化させ武器を取り武術を学んだ。それが進化である。争い無くして進化は生まれぬ。」

「強者のみの世界などあり得ない。強者の中に新たな弱者が生まれるのみです。行きつく先は孤独よ。互いに武器を手放し、和平を望み合うことこそ真の進化のはずだわ。」

「それは理想論だ。……やはり、言い争いをしても埒があかんな。余は争いは好むが論争は好まぬ。やはり暴力。決着をつけるには暴力が最適だ。」

――理想論ってことは一応認めてるのね。

――気づいたね、それ伏線。

――むふーっ。

ヌルは得意げである。

レーヴェリオンは指をパチンと鳴らす。すると、天井から二つの魔人族の影がJ達の前に落下してきた。

「陛下、ティグリスとシンミャはここに。」

落下してきたのはヴォルクルプスの首を取った少年魔人族のティグリスと、そこで一度戦った背の高い女魔人族のシンミャだった。レーヴェリオンは二人に命令する。

「そのものらの首を取れ。ティグリス。シンミャよ。」

「はっ。レーヴェリオン王の仰せのままに。」

ティグリスとシンミャはそれぞれ短剣の小刀2本と、巨大剣を構えて臨戦態勢に入る。

レーヴェリオンはJ達に向かって挑発を行う。

「さぁ、争え。貴様らの真価を見せて見よ。」

「皆!来るよ!」

Jはロージナとシェロをカルトゥムのドールハウスに入れ、タラサ、マウガン、ウィレナの3人と武器を構える。

『皆!各個撃破を狙え!』

「了解!」


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