表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

93/124

第93話 プレイヤーの試練

「ロージナ。お疲れ様、これで後はJだけね。」

Jは憑依を解除し、自身の体に操作を戻した。

『ああ、行ってくる。』

「J,気を付けてね。」

ウィレナはJを気遣う。

「Jならこんな試練なんてちょちょいのちょいだよ!」

「J殿、自身に負けぬように心を強く持つのです。」

ロージナは左のスイッチの上に立ち、Jは左斜め前のスイッチから離れる。すると、ガチャンガチャンとJの向かって前方にあるドアの鉄格子が開き、扉があく。

「J,待ってるよ。」

『ああ。』

Jは皆の視線を背中に感じながら扉に入っていく。扉の横の石板にはこう書かれている。『此の先、一人のみ進入を許す。其の者、己が身一つで戦える者也。其の力試さしてもらわん。』

Jが中に入ると、天井から声が聞こえてきた。

「すべての装具をその箱に入れよ。創意工夫を用いて突破せよ。」

Jが言われた通りにハンマーやパイルバンカー、バックパックを右手前にある箱に入れると、その箱は天井へレールを伝って登っていき、奥へと移動していった。

――装備取られちゃったけど大丈夫なの?

――ここは自前の装備品、アイテム一切なしで奥の扉まで行かなきゃいけない。行けば装備返してもらえるギミックさ。

Jはそうヌルに返事をすると、部屋を見渡す。

縦15メートル、幅40メートル、奥行き80メートルほどの大部屋で、高さ3メートル、幅2メートルほどの壁が乱雑に地面から生えており、壁の隙間からはスケルトンやゴブリンナイトがあたりをウロウロしている。また、奥の方には3階建ての建物がいくつか並んでおり、小さな集落のようにもなっていた。壁の周囲には高さ1メートルほどの木箱が並んでおり、敵の視線を遮るのにちょうどよさそうだ。

Jは木箱を壁に押し出し、壁によじ登った。そして壁の天辺に土踏まずを乗せ、ぴょんぴょんと飛んで移動する。股下にはゴブリンナイトやスケルトンが周囲を警戒して哨戒しているが、上方向の警戒は一切していなかった。

――この攻略法ズルくない?

――壁が天井までない時点で、この方法も想定されているはずさ。

Jは壁を飛び越えるように進んでいくが、前方の建造物の屋上部分にガーゴイルを見つけると、壁から降りた。降りた先はゴブリンナイトの背後で、Jはゴブリンナイトの兜の隙間に右腕を突っ込み、首の前を経由し左手の肘裏をその右手で掴みゴブリンナイトを締めあげ、「ゴキッ」っと鈍い音を響かせ首の骨をへし折った。

――モンスターは殺していいんだったわね。

Jはゴブリンナイトの剣と鞘をはぎ取りながらヌルに返事をする。

――モンスターは殺しても邪ゲージが増加しないし、ルート分岐の場所は通り過ぎたから、もう人間も殺しても問題ない。

――リアルで聞いたら通報もののセリフね。

――ゲームだから平気。

長さ1メートルほどのゴブリンナイトの剣を装備し、手前の小さなビルの中に入っていく。

――ここの敵はランダム沸きだから、完璧にスルーするのは難しい。

ビルの内部は外と同じように壁や木箱が散乱しており、中には、スケルトン、奥の扉の両脇にはガーゴイルと思われる石像が2体今にも動き出そうかと佇んでいる。天井にはスライムが這っており、下に来たプレイヤーを飲み込もうかと体液を滴らせている。

Jは一旦しゃがみ木箱に身を隠してスケルトンがJとは反対側を向くのを待ち、スケルトンが向こうに移動するのと同時にスケルトンの背後に忍び寄り首を切り落とした。首を切り落とされたスケルトンはばらばらと崩れ、骨の残骸となる。Jはすぐにスケルトンの残骸を飛び越えるように前方ローリングを行う。すると、ローリングを行った直後に、立っていた場所にスライムがべちょりと落下してきた。

――気づかなかったわ。

――少しだけ体液が滴ってたから上にあるなって分かったんだ。

――なにそれ気持ち悪っ。

――……体液についてですよね?

 Jはローリングから立ち上がり、壁面に背中を付け向こう側を覗き見る。そこには、ゴブリンナイトが2体、壁の内側をぐるぐると徘徊している。Jはローリングの際に取得していたスケルトンの骨をゴブリンたちの向こう側に投げる。ゴブリンたちはその投げられた骨に目が行き、Jとの反対側を向いた。Jはすかさず、剣を振りかぶり、手前にいるゴブリンの首を切り落とした。切り落とされたゴブリンの頭部が地面に落ちる前に剣と兜の接触音を聞いたゴブリンが振り返る。そのゴブリンが最後に見た光景は、自分に対しててんで興味のなさそうなパンイチスキンヘッドの男が、自分の心臓にめがけて剣を突き立てる光景だった。

 Jは奥にあるガーゴイル2体の間を通り抜けようとすると、ガーゴイルは手に持っていた槍と盾を使い道を通せんぼする。が、Jはその通行禁止のジャスチャーを無視して隙間を抜けて先へ進む。先は左手に登り階段となっており、Jはガーゴイルに追われるようにその階段を登っていった。階段を登った先は崩落しており、再び反対側まで行かないといけないようだ。Jは背後から迫るガーゴイルから逃れるように急いで先へ進む。Jは前方にいるゴブリンナイトの脇をすり抜ける。すり抜けると同時にゴブリンナイトはJに気づき、剣で攻撃してくるが、Jはそれを背中に当たる直前に前方にローリングを行い、回避する。ゴブリンナイトとガーゴイルに追われながら、先へすすむ。そしてJは天井を這っているスライムの下で一旦立ち止まり、後ろから追ってくる敵の足音を頼りにスライムの落下するタイミングに合わせて前転ローリングでスライムを回避する。後方では、ゴブリンとガーゴイルがスライムにまみれ身動きが取れなくなっている。Jはそのまま同様の手段を用いてゴブリンとスケルトンをスライムまみれにしつつ階段前まで到着した。

 階段前にある木箱を持ち、上へと登っていく。屋上は手すりもなく、モンスターも居ない。Jは運んでいる木箱を隣のビルの近くに持っていき、一旦後方へ下がり木箱に向かって走り出した。そして木箱の縁に足を掛け、隣のビルめがけて大ジャンプを行う。Jの右手はギリギリで向こう側のビルの縁際にかかり、落下を免れる。Jはそのまま身をビルの屋上に乗り上げ、続いてさらに向こう側のビルめがけて走り出す。そして再びの大ジャンプを行うが、ビルの屋上から落下してしまう。その勢いのまま、ビル3階の窓に手がかかり、すぐに手を放した。Jの体が落下していき、2階の窓の手すり部分に手をかけさらなる落下を防ぐ、そしてさらに手を放し1階に着地した。

――パルクールってやつね。

1回に着地した建物の影から敵の配置を確認し、Jは持っている剣を正面にいたゴブリンめがけて投げつける。ゴブリンの頭部に剣がグサッと刺さり、Jは速やかに近づいて剣を引き抜く。そして物陰に隠れたJは出口の場所を確認して、それと離れた個所に剣を投げる。金属音が部屋に響き、物陰に隠れていたゴブリンやオルトロスが何事かと木箱の影から出てきた。Jはそれらのモンスターの後ろを通り、出口に向かう。出口の横には最初に荷物を預けた箱があり、Jはその中から装備品やバックパックを取り出し装備した。Jはそのままマネキン部屋に入っていく。

Jが中に入ると、Jに対してスポットライトがピカっとあたり、Jの背後に人型の影が出来上がる。

――Jの頭頂部も眩しいわ。

――好きでこの頭にしてるから!反射してるだけだからね⁉

Jの背後に出来た人型の影は蠢いてJの足の下を通過し、部屋中央のマネキンに影が移動する。Jはパイルバンカーを装填するとJの分身となったシャドウプレイヤーに向かってダッシュで間合いを詰める。

シャドウプレイヤーはJと同じ装備、見た目の黒い影の物体で、ハンマーを背中から外し上段に振り上げる、が、その振り上げた瞬間、Jはパイルバンカーを胸部にめがけて射出し、シャドウプレイヤーの胴体に風穴が開けられた。空いた穴は影が集まって塞がるが、シャドウプレイヤーの体力ゲージは20パーセントほど大きく減少していた。

――巨大ハンマータイプの武器は振りかぶりと振り下ろしに大きな隙が生まれる。素早く動いて、パイルバンカーのような体勢崩し値の高い武器を使えば一方的に倒せる。

シャドウプレイヤーはダメージを感じさせる足取りでよろめきながらハンマーを下段に構え、Jに向かって振り上げる。振り上げの最中に、Jは再び前方ステップでシャドウプレイヤーに一足飛びで近づき、またしても胸部にパイルバンカーを当てがい手首を捻り射出した。シャドウプレイヤーは後方に大きく吹き飛ばされる。Jは地面にパイルバンカーの杭をあてがい、しゃがみ込む要領で体重をかけ再びパイルバンカーを装填する。そして前方ステップでシャドウプレイヤーに近づいて、シャドウプレイヤーが武器を構えて振りかぶると同時にパイルバンカーを再び射出した。

――一方的ね。

――このためのハンマー装備。

 後はもう一方的な蹂躙であった。シャドウプレイヤーは一度も攻撃を振ることもなく、パイルバンカーに体に風穴を開け続けられ、やがて動かなくなった。Jは影の剥がれたマネキンをまたいで扉へ向かう。シャドウプレイヤーを倒した位置は扉の近くになっていた。

――これも計算?

――ああ、今までのどの敵も、撃破時は進行方向で撃破するようにしている。その方が早いからな。

Jはマネキンの部屋から出ると、大回廊に向け歩を進める。自分を追ってきた敵はいなくなっており、来た道と逆ルートを通って大回廊へと向かう。3階建てのビルを登り、屋上からジャンプして向かいのビルに飛び移り、階段を下りて壁の迷路を進んでいく。

――そういえばどうしてビルに登ったの?

――この部屋の中央部分には堀と壁が構築されていて向こうには行けないようになってるんだ。遠目に見ても分かりづらいのがトラップだな。

――いやらしいことね。

そして行きの道中よりやや早いくらいのタイムでダンジョンを走破したJは、パーティーメンバーの待つ大回廊へとたどり着いた。

「Jお帰りー!」

「お帰りなさい。J」

パーティーメンバーがJを出迎える。全員がスイッチから離れてJに駆け寄る。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ